ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 無観客競馬が続いていますが、今週と来週は3歳クラシックの二冠目、GIオークス(5月24日/東京・芝2400m)と、GI日本ダービー(5月31日/東京・芝2400m)が行なわれます。

 競走馬にとっては、一生に一度となる世代の頂点を決める舞台。大変な状況のなか、競馬はここまで中止や延期になることなく、最高峰となるレースも無事に開催されることを、まずは喜びたいと思います。

 さて、今年の牝馬戦線は、GI桜花賞(4月12日/阪神・芝1600m)の前までは「大混戦」と言われていましたが、非常にタフなレースをデアリングタクト(牝3歳)が完勝したことで、一気に同馬の「1強」ムードへと変わりました。

 2着レシステンシアとの着差はコンマ2秒差でしたが、たしかにその数字以上の差を感じさせる勝ち方でした。個人的にも、1頭だけ「他馬より一枚も、二枚も上」と思いました。

 レースとしては、逃げたスマイルカナ(牝3歳)と2番手レシステンシアが、道悪を利してそのまま押し切ろうか、という展開。それを、デアリングタクトがただ1頭、大外から差し切ったのですから、明らかに次元が違いましたね。

 そして迎えるオークス。レシステンシアは距離適性を優先して、GI NHKマイルC(東京・芝1600m)に矛先を変えました。逃げ粘った3着スマイルカナは、脚質的に東京コースや距離延長が合うとは思えません。4着以下はさらに差がありましたから、馬場状態やコースが変わって、多少の巻き返しは図れても、デアリングタクトを逆転するまでには至らないでしょう。

 つまり、桜花賞組とは勝負づけが済んだ、と考えています。

 デアリングタクト自身、オークスに向けて不安要素はありません。折り合いを苦にする様子はありませんし、どのレースにおいても、ゴール前では一番よく伸びてきます。2400mに対応できるか? というより、2400mならば、もっと強い姿を見せてくれるのではないかと思っています。

 父エピファネイアも、ダービーではキズナの2着と奮闘。GI菊花賞では5馬身差の大勝で戴冠を果たしました。古馬となってからも、好メンバーがそろったGIジャパンCで4馬身差の圧勝劇を披露。距離が延びて、ますます強い競馬を見せてきました。

 その血をしっかりと受け継いでいれば、府中の芝2400mはデアリングタクトにとって、最高の舞台になるでしょう。

 先にも触れたとおり、桜花賞組がデアリングタクトを逆転することは難しいでしょうが、極端に上がりのかかる消耗戦となった桜花賞から、速い時計が出る馬場状態の府中へと舞台が替わって、浮上してくる存在はいるはず。その結果、3着以下の馬たちの着順は、それなりに入れ替わるのではないかと思っています。

 なかでも、上昇が期待できるのは、マルターズディオサ(牝3歳)。桜花賞では8着に敗れてしまいましたが、府中の良馬場でなら、大きく巻き返してきそうな雰囲気を感じます。

 桜花賞の前までは、GI阪神ジュベナイルフィリーズ(12月8日/阪神・芝1600m)2着、前哨戦のGIIチューリップ賞(3月7日/阪神・芝1600m)1着と、遠征競馬でほぼパーフェクトな成績を残してきました。桜花賞では、先行する2頭を追いかける立場の競馬となって、直線で脚が止まってしまいましたが、道悪馬場が影響したことは間違いないでしょう。

 阪神JF、チューリップ賞はともに好時計で走っていますし、新潟の未勝利戦(8月31日/新潟・芝1600m)と、1勝クラス・サフラン賞(9月29日/中山・芝1600m)を勝った時は、いずれも33秒台の上がりをマークして快勝。東京のいい馬場でこそ、マルターズディオサの真価が発揮されるのではないでしょうか。

 翻(ひるがえ)って、デアリングタクトと今回、初めて対戦する馬たちはどうか。魅力を感じている馬が1頭います。

 世間的にも大きな注目を浴びているデゼル(牝3歳)です。

 年明けの未勝利戦(3月15日/阪神・芝1800m)でデビュー。同レースを楽々と勝ち上がると、トライアルのスイートピーS(5月3日/東京・芝1800m)でも、上がり32秒5という強烈な末脚を繰り出して、大外から突き抜けていきました。いかにも大物感を感じさせる勝ちっぷりでした。

 毎年クラシックを賑わせる友道康夫厩舎の管理馬であること、加えてダミアン・レーン騎手が騎乗することも、多大な期待を寄せられる理由でしょう。実際、ハマった時は、デアリングタクトを逆転するだけの素質は秘めていると思います。

 ただ、現状では不安要素が見え隠れしている、というのが私の見方です。

 過去2戦は、ともにスタート後に馬群の後ろまで下げて、楽なポジションで走らせながら、最後の直線を脚力の違いで差し切り勝ち。オークスでも同じ結果を出せれば、間違いなく「大物」と言えますが、各馬が距離を意識してスローペースになった場合、この舞台では立ち回りのうまさや折り合いも問われます。

 最後方からの大外一気という大味な競馬では、なかなか勝ち切れません。デゼルが結果を出すには、これまでの2戦とは違った姿を求められることになるでしょう。

 要するに、デゼルにある不安は経験の浅さ。そこをどう穴埋めするのか。友道厩舎の育成力と、レーン騎手の手腕に注目です。



目標としてきたオークスでの激走が期待されるウインマリリン

 ところで、今年のオークスの「ヒモ穴馬」は、別路線組から取り上げたいと思います。GIIフローラS(4月26日/東京・芝2000m)を勝ったウインマリリン(牝3歳)です。

 マルターズディオサと同じ手塚貴久厩舎の管理馬ですが、王道を進んできたマルターズディオサとは対照的に、同馬は「オークス向き」という判断で、初めから長めの距離にこだわったローテーションを組んで、ここまで駒を進めてきました。

 フローラSでは、直線で最内から抜け出して勝利。凄まじい向かい風が吹き荒れていましたが、脚色は最後まで衰えることがありませんでした。この精神力と、枠順やペースに応じて器用に立ち回れるレース巧者ぶりは、オークスというレースでは大きな武器になるはずです。

 鞍上は、横山武史騎手から父の横山典弘騎手に替わります。昨年はダービーにおいて、横山典弘騎手が騎乗停止になったことにより、リオンリオンの鞍上が息子の横山武史騎手に替わりました。そんな父子の立場が、今年は逆の形となりました。

 横山武史騎手にとっては、自らの手で権利をつかんだGI挑戦だっただけに、当然悔しさはあるでしょう。ともあれ、自在に立ち回れるこの馬を横山典弘騎手が操るとなれば、何か起こしてくれそうな気がしてなりません。まだまだ色あせない大ベテランの手綱さばきに期待したいと思います。