力士のしこ名。本来は「醜名」と書き、大地を踏みつけ、地の中の邪気=醜(しこ)を追い払う神事を行う者の名称を指したという。山、川、海や出身地にちなんだ文字が使われる伝統もある。出羽海部屋の関脇・御嶽海は、地元・長野の御嶽山にちなみ、そこに部屋名の「海」を加えた。

 ユニークなしこ名に目が留まることもしばしば。「スポーツ報知大相撲ジャーナル」編集長の長山聡氏の著書によれば、江戸から明治にかけては「ヒーロー市松」や「馬鹿の勇介」と名乗る力士もいたという。今では式秀部屋の序二段・大当利(おおあたり)大吉。何とも縁起の良さそうなしこ名だ。本名は櫛引(くしびき)大樹。2016年秋場所に改名した際、師匠の式秀親方は「しっかり当たれる力士になってほしい。本名が櫛引だから『くじを引いて大吉を引けるように』」と説明した。

 09年名古屋場所では当時、三段目の吉野(大嶽)が「右肩上り(みぎかたあがり)」に改名して注目を浴びた。その後は「右肩上」として幕下29枚目(12年秋場所)まで昇進。現在は電山として、三段目の土俵に立っている。

 幕内・琴ノ若(佐渡ケ嶽)のように、出世した力士が師匠(佐渡ケ嶽親方、元関脇・琴ノ若)のしこ名を継承したり、朝潮(高砂)など部屋伝統の名を継ぐこともある。また、幕内・高安(田子ノ浦)や遠藤(追手風)のように、本名のまま土俵に上がり続ける力士もいる。しこ名には、その部屋の伝統や師匠、力士の思いが込められている。