プロボクシングWBA世界ミドル級(72・5キロ以下)世界王座決定戦が東京・有明コロシアムで行われ、2012年ロンドン五輪ボクシング男子ミドル級(75キロ以下)金メダリストでWBA同級2位の村田諒太(当時31)=帝拳=が同級暫定王者(1位)アッサン・エンダム(同33)=フランス=に判定負け。1995年12月の竹原慎二以来、2人目となる日本人同級世界王者と日本人初五輪メダリストの世界王者の夢は持ち越された。

 初回、ガードを固め相手の出方を見る村田に対し、エンダムはリングを回りながらジャブ、右ストレートなどを繰り出す。4回、村田の右カウンターが相手の顔面を捉えると、先制ダウンを奪った。その後も村田は強烈な右を何度か打ち込み、エンダムがロープに吹っ飛ぶ場面も。11、12回は村田が圧倒するも、勝負は判定へ。ダウンも含め、有効打は村田の方が多い。「効いたパンチは1回もなかった」。相手のパンチはガードでほとんど阻んだ。会場の誰もが村田勝利を疑わなかった。

 ところが、採点は村田の1-2(117-110、111-116、112-115)。2人のジャッジは、手数に勝るエンダムが優勢と判断したようだ。本紙調べでパンチ数は村田339に対し、エンダムは611と倍近かった。

 「五輪が終わってから注目されるようになって、自分なりに努力してきたつもり。その努力の集大成として見せたかったのが今日だった」と村田。「試合は第三者が判断すること。僕が勝った、負けたとかは言いたくない」と淡々と語った。その後「自分の勝ち負けなんてどうでもいい。試合後の控室で(帝拳ジムの)本田(明彦)会長や関係者の方々の顔を見たら涙が出てきた」と明かしている。

 翌21日、WBAのヒルベルト・ヘスス・メンドサ会長が、自身のツイッターで「私の採点では117-110で村田が勝っていた」と言及。原則禁止されている、異例のダイレクトリマッチ(直接の再戦)指令を出した。スーパーバイザーを務めたWBAのフリオ・タイム氏(パナマ)も判定を「不服」としたうえで「116-111で村田の勝ち。我々は既にタイトルマッチ委員会にダイレクトリマッチを要請した」と語った。言葉どおり、この年の10月22日、ダイレクトリマッチが実現し、村田が7回終了TKO勝ちし、世界王座を獲得している。

 村田は王座決定戦から一夜明けた21日、同じ都内ホテルに宿泊していたエンダムに「あいさつをしたい」と部屋に電話して呼び出した。「素晴らしい経験をありがとう。昨日は敵だったけど今日は友だね」と声をかけると、エンダムも「また会えるのを楽しみにしている」と笑顔で応じ、健闘をたたえ合うとともに、連絡先を交換した。