5月16日、新型コロナウイルスの流行により中断されていたドイツ・ブンデスリーガがついに再開されました。

 イングランド、イタリア、フランス、スペインと並ぶヨーロッパ5大リーグのなかで、このたびブンデスリーガが他リーグに先駆けて最も早く再開に舵を切ったことになります。

 再開にあたって、ブンデスリーガは入念に準備を積み重ねてきました。それは、ドイツサッカーリーグ機構(DFL)が作成した『オペレーション・タスクフォース』という試合運営要綱からも分かります。

 そのページ数は、なんと50ページ!

 日本人メディアの僕には英語表記のものが配布されたのですが、すべて読むのに2時間以上かかりました……。その詳細は他の記事でも各種伝えられていますので割愛しますが、そうした厳格な運営方針を打ち出した姿勢からも、ブンデスリーガ側の「安全適切に試合を開催する」という気概がうかがえます。

取材者10人、海外メディアは……。

 今回、僕は試合を取材することができませんでした。ブンデスリーガは試合再開に際し、メディアの数は1試合につき総計10人に絞ることを決めました。

 通常は1試合につき100人を越える記者の申請が通るケースもあるので、これは非常に限られた人数です。

 一応アイントラハト・フランクフルトvs.ボルシア・メンヘングラッドバッハの取材申請を行いましたが、アイントラハトの広報担当者から迅速に、そして非常に丁寧なメールが返ってきました。

 そこには「取材者10人の選定をしているんだけども、今回に関してはインターナショナルメディアの取材は難しいかもしれない」と書かれていました。

 結局、取材ができたのはドイツメディアのみ。国内2大通信社、全国紙2紙、『Kicker』、『Bild』といった長くブンデスリーガの取材実績があるメディア、そして、ホームチーム、アウェーチームの地元紙が各2紙で合計10枠ということになりました。

 この選定には十分納得できますので、特に意見はありません。取材ができなかったのは大変残念でしたが。

テレビ向けインタビューが面白い構図。

 今回、ブンデスリーガは動線(セクション毎に行動できる範囲)をピッチ、スタンド、スタジアム外の3ゾーンに分け、メディアはスタンドでの活動のみに制限されたため、ピッチゾーンで行動する選手とは接触できませんでした。

 そのためスタジアム内にあるメディアルームや記者会見場は閉鎖されたまま。試合後にミックスゾーンが設けられることもなく、選手個別の取材対応はありませんでした。

 一方、テレビ向けの監督、選手インタビューは行われたのですが、これがなかなか面白い構図でした。

 スタンド最前列付近に立ったインタビュアーが対象者を見下ろすような形で質問をし、それに対してピッチに立つ選手、もしくは監督が遠くから答えたのです。5mほどの距離はソーシャルディスタンスを保つための配慮で、このスタイルならば飛沫感染の心配もないといった具合でした。

ゴール後の“濃厚接触”はお咎めなし。

 無観客で行われたゲームは、やはり淋しげな雰囲気を醸していました。

 ただ、ボールがゴールネットに突き刺さったときの「ズサッ!」という音は新鮮でしたし、白熱した攻防の際には互いの選手以外にコーチングスタッフやピッチ脇でウォーミングアップしている控え選手などの大声も聞こえて、それなりの臨場感が伝わってきました。

 とはいえゴールの後は、抱き合ったり握手したりするセレブレーションは控えるようにとのお達しが出ていたため、選手たちは肘を合わせるなどして祝福の意を示していました。

 ホッフェンハイムvs.ヘルタ・ベルリンではヘルタのDFデドリク・ボヤタがMFマルコ・グルイッチの頬にキスするなど濃厚接触してしまいましたが、その後DFLは「報告書では、セレブレーション問題について助言と説明がなされた」としながら、法的拘束力がないことから「お咎めなし」との見解を示しました。

ドルトvs.シャルケの会場周辺も閑散。

 試合前に懸念されていた、サポーターがスタジアム近辺まで来てしまうのではないかという問題ですが、こちらは幸いにも各試合で問題は起きませんでした。

 アイントラハトのサポーターは熱狂的で、たびたび抗議の意味合いでバナーを掲示したり、自主的な観戦拒否をしたりといった意思表示をすることで有名ですが、試合当日のホームスタジアム、コンメルツバンク・アレナには運営担当者以外の人影はありませんでした。

 ドルトムントvs.シャルケの『レビアダービー』は警戒度が高く、多くの警官を動員して警備に当たったようですが、スタジアム周辺は閑散としたもの。試合前に有料放送『Sky』のレポーターがスタジアム周辺の様子を報告した際は、ジョギングやサイクリングをする市民が後方に映り込んだりなんかして、なんだかほのぼのとしていました。

改めてドイツのサポーターは秩序がある。

 ドイツのサポーターの方々は改めて秩序立っているなと感じました。

 そもそも普段のブンデスリーガでは、試合に向かうサポーターが電車やトラム内でビール瓶をラッパ飲みしているシーンに度々出くわします。公共交通機関での飲酒の是非はさておき、凶器になり得るビール瓶を持ち込んでも、暴力行為や乱闘行為がほとんど起こらないところに、この国のサポーターの絶妙なバランス感覚を感じます(褒めています)。

 個人主義の下、ある程度の自由を享受しようとする反面、明確に規則として明示されたことにはしっかりと従う。それがドイツ人特有の振る舞い方なのでしょうね。

 僕の住むフランクフルトは5月15日の金曜日から、レストラン、カフェ、バーなどの飲食店の営業再開が認められました。

 こちらのお店ではテレビを設置しているところも多く、週末はブンデスリーガの試合を流すお店もあります。

 そのようなお店は当然、無観客試合によってスタジアムへ行けないサポーターたちのために試合の模様を流していましたが、あるバーのお客さんの様子を観察すると、彼らはちゃんと各自1.5m以上のソーシャルディスタンスを保って整然と試合を観戦していました。

レストランなどでは名前・住所を記入。

  通常は肩を組みながら応援歌を歌ったり、ゴールシーンで大歓声が湧き上がったりするところ、今回はさすがに慎ましく、穏やかにテレビ画面を凝視していたのが印象的でした。

 現在、レストラン、カフェ、バーなどを利用する際は、ウイルス感染が明らかになった場合に経路を追跡する名目で名前と住所の記入が義務付けられているため、お客さんは少々窮屈な思いをしているかもしれません。

鎌田&長谷部のフランクフルトは……。

 それにしても、アイントラハトは本当に不甲斐なかった。

 試合開始から35秒でFWアラサン・プレアに先制点を決められ、6分後にFWマルクス・テュラムに追加点を挙げられて早々に2失点という体たらく。先発した鎌田大地は攻撃にアクセントをつけていましたが、アドルフ・ヒュッター監督が採用した4-1-2-3システムが機能しないのか、センターフォワードのバス・ドストは最前線で孤立するばかり。

 左サイドのフィリップ・コスティッチはいつものように孤軍奮闘していましたが、相手守備網に包囲されてしまい、ジブリル・ソウとセバスティアン・ローデの両MFは攻撃をオーガナイズできず。アンカーのシュテファン・イルザンカーは、最後まで攻守の連結役をこなせませんでした。

 4バックもぎこちない動きが目立って、センターのダビド・アブラアムとマルティン・ヒンターエッガーは守備対応に追われ、両サイドのアルマミ・トゥーレとエバン・エンディッカは攻撃参加のタイミングを計れずGKケビン・トラップが終始矢面に立つなど、チーム全体が機能不全に陥っていたのが気がかりです。

 結局、ヒュッター監督はリーグ再開からの特別ルールとして採用された「交代枠5人」を使い切り、ベンチスタートの長谷部誠も74分にアブラアムと代わって出場しましたが事態は好転せず、1点を返すに留まりホームで1-3と惨敗を喫してしまいました。

サッカーで一喜一憂できるという幸せ。

 この結果、アイントラハトは25試合を終えて勝ち点28の13位。2部との入れ替え戦に回る16位デュッセルドルフとは消化が1試合少ないとはいえ勝ち点5差で、正真正銘、今後は残留争いを強いられることになるでしょう。

 アイントラハトは6月10日にDFBポカール準決勝のバイエルン戦も控えていて、週によっては2試合消化が予定されるリーグと並行してカップ戦を戦う必要があるため、その行く末がだんだん心配になってきました。

 ……と、こんなふうにサッカーに関して一喜一憂できるのも、平和で穏やかな日常が前提にあるからなのだと、新型コロナウイルスの脅威に直面した現在は心から痛感しています。

 今後もブンデスリーガが滞りなく、平穏無事に開催されることを願っています。

(「ブンデス・フットボール紀行」島崎英純 = 文)