<輝きを待つ 東北魂>

高校女子サッカー界の名門が、ピンチをチャンスに変える。全日本高校女子サッカー選手権に第1回から28年連続で出場し、3度の優勝を誇る聖和学園(宮城)は、ICT(情報通信技術)を積極的に取り入れ、緊急事態に対応している。新型コロナウイルス感染拡大防止のため休校中とあって、全国から集まる選手たちも全員帰省中。全体練習再開の日を待ちながら、黙々と個のレベルアップに励んでいる。

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「疾風に勁草(けいそう)を知る」。後漢書の言葉で、猛烈な風が吹いた時に本当に強い草がわかる。転じて「困難や試練に直面した時こそ、その人の意志の強さ、価値がわかる」とされる。国井精一総監督(68)が選手たちに贈ったメッセージだ。全体練習中断から1カ月、チームに焦りはない。この日はストレッチや体幹を軸に運動機能を向上させる「PNFC」をオンライン会議システム「Zoom」で共有した。石井妙子コンディショニングトレーナーの熱心な指導に、石巻の実家から参加したMF長谷川来夢主将(3年)は「総体は中止になったけど、へこまずに取り組めています」と声を弾ませた。

4月10日の休校以来、各自メニューを考えながら、孤独な練習を続けている。U-16日本代表MF櫨川結菜(2年)は、川崎の自宅近くの公園で1日3時間。「毎日充実していて全然つらくない」と明るい。佐々木好人顧問(39)は「1度身につけた技術は簡単に衰えないし、いつ、どこでも磨ける。やらされるのではなく、主体的な取り組みが真の課題解決力となる」と今の過ごし方を重要視する。

3月からコンディション管理アプリ「Atleta(アトレータ)」も導入。体調、食事、ケガや病気といった個人データを共有し、メッセージの交換も行う。曽山加奈子監督(32)は「こういう状況になったからこそICTを活用して選手とつながれるようになった」とプラスに捉えた。

「美しくしなやかに」を代名詞に個人技とパス、アイデアで女子サッカー界をリードしてきた。勝敗を超えたプレーの質、人間力の部分にこだわってきたからこそ譲れない信念がある。佐々木顧問は「とかく大会がどうなるかに目が行きがちだが、隙間を突いてまで競技を継続したくない。今は日常を取り戻すことが最優先」とエゴを捨て、緊急事態とつきあう。

6月1日の学校再開を目指すが、緊急事態宣言継続中の地域にいる選手もいるため、先行きは不透明だ。曽山監督は「ちゃんとやっていたかは、戻ってきた時に見ればわかる。楽しみです」と信頼を寄せる。佐々木顧問は「今までは信頼でパスをつないできた。今回は思いもつなげないといけない。最後は見えないところの信頼力がものをいう。聖和の真価が問われると思います」。名門は柔軟にアップデートを繰り返しながら前進する。【野上伸悟】