5月10日、東京競馬場で行われたNHKマイルC(GI、3歳、芝1600メートル)を優勝したのはラウダシオン(牡3歳、栗東・斉藤崇史厩舎)だった。

 単勝は29.6倍の9番人気。ダークホースでの優勝という事で、手綱を取ったミルコ・デムーロ騎手の好騎乗ばかりを取り上げる記事が目立つ。実際、その通りなのだが、管理する斉藤崇史調教師に話を伺うと、また別の面も顔をのぞかせる。

 いや、斉藤調教師もやはり「ミルコの騎乗によるところが大きい」とは言っているのだが、そのあたりをもう少し詳らかにしていこう。

 話は3月14日まで遡る。

 この日、中京競馬場で行われたファルコンS(GIII、芝1400メートル)で1番人気に推されたのが誰あろうラウダシオンだった。武豊騎手を背に好スタートを決め、好位を進んだ同馬だが、最後にシャインガーネットに差され、2着に敗れてしまった。斉藤調教師は述懐する。

「重い馬場はこなせると思ったけど、展開的に前の馬には厳しくなってしまいました。勝ち馬とは斤量差もあったので仕方ないと思いました」

人気上位は軒並み重賞勝ち馬だった。

 掲示板に乗った5頭のうちラウダシオンを除く4頭は皆、3コーナーではまだ中団かさらに後方にいた。ラウダシオンだけが4番手。前半の3ハロンが33秒台だったのに対し上がりの3ハロンは35秒8も要しており、間違いなく先行勢には厳しい流れだった。

 それを思えばラウダシオンの2着というのは価値があったわけで、今回のNHKマイルCでここまで人気を落としたのは不思議とも言えた。しかし、これには斉藤調教師も「仕方なかったのでは……」と言う。

「1番人気のレシステンシアはGI馬(阪神ジュベナイルフィリーズ1着)だし、他の人気上位馬たちも軒並み重賞勝ち馬でした。それに対してラウダシオンは重賞で好走こそしているものの勝てていませんでした。実績に劣るのは事実なので、果たして自分の競馬をしてどこまで出来るかな? という思いでした」

「ユタカさんの前2走のお陰で」

 レース前は2週にわたってM・デムーロ騎手が調教に騎乗した。とくに最終追い切りに関しては自らの希望で騎乗したそうだ。

「そこで1週前より状態が良くなっているという感触を得ていました」と斉藤調教師。更にレース当日は「良い感じ」という印象を受けたと続ける。

「装鞍所とパドックで馬を見ました。いつも普通に歩けないでダクになってしまうような面がある馬なのですが、この日は普通に歩けていたので『良いな』と思いました」

 デムーロ騎手に対しては何の指示も出さずに送り出した。ゲートの駐立はあまり良くないタイプなので、スタートはとくに注目して見ていた。すると……。

「案の定、一歩目は遅くなってしまいました。でも、ミルコがうながすと、すぐに反応して前につける事が出来ました」

 これにはここ2走で手綱をとった武豊騎手のお陰だと思うと続ける。

「ユタカさんがここ2走連続でうまくスタートを決めてくれていたので、馬が分かっていた感じでした」

考えていた以上にバテていない。

 気付くとハナにでも行けそうな位置からレシステンシアを行かせて2番手で折り合った。

「最初の3ハロンは少し速く感じたので『前過ぎるかな?』と思ったけど、中盤は緩んだので『なら、ここで大丈夫かな……』と、そんな気持ちで見ていました」

 3~4コーナーをカーブして直線に向く。この時の心境を次のように振り返る。

「向かい風が強く、追い込むには厳しい条件だと思ったし、ミルコの手応えも良かったので『これはひょっとしたら勝てるかも……』と思いました」

 実際、レシステンシアをゆうゆうとかわして先頭に立つと、追いつきそうな後続馬は皆無。客観的には早々に勝負あったと思える態勢だったが、果たして当事者の目にはどう映ったのか……。

「力強くかわして先頭に立って、あとは後ろから何が来るかと思って見たけど、考えていた以上にラウダシオン自身が全くバテていない感じだったので『これなら(勝てる)』と思いました」

「ミルコ、さすがですよね」

 そして、ゴールの瞬間には「ミルコのお陰だ」と感じたそうだ。

「レース後、ミルコは『最初から前で競馬をするつもりだった』『自信があった』と言っていました。“さすが”ですよね」

 ここで改めてラウダシオン自身について聞いてみると、次のような答えが返ってきた。

「デビュー当初からコロコロ体つきが変わっていて、現在もまだ緩さが残っている感じです。それでいて強い競馬でGIを勝ったのですからまだまだ今後が楽しみな馬です」

 ミルコ・デムーロ騎手という強い味方を得てGIホースとなったラウダシオンはこれからさらに成長していくのか。改めて注目していきたい。

(「競馬PRESS」平松さとし = 文)