元イタリア代表FWのフィリッポ・インザーギ(46歳)が、旧知の仲であるパオロ・フォルコリン記者の電話による独占インタビューに応じた。

 現役時代はユベントスやミランでストライカーとして活躍し、現在はセリエBで首位を独走するベネベントの監督を務めるピッポ(インザーギの愛称)は、パンデミックに世界が振り回される今、どんな思いを抱いているのか。

『ワールドサッカーダイジェスト2020年5月7日号』に掲載された独占インタビューを、3回に分けて公開する。第2回の中編は、ベネベントの今シーズン、弟シモーネが率いるラツィオ、そして古巣ミランに関する話だ。

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フォルコリン記者:それにしても、ベネベントはセリエBで圧倒的な強さを見せていたね(パンデミックによる中断前の28節終了現在でベネベントは、2位クロトーネに20ポイント差の首位)。どうやって奇跡を起こしたんだい?

インザーギ:自分の成功を語るのは、あまり好きじゃないんだけど、まずはとにかく、クラブがすごく良い仕事をしてくれたと思う。会長のオレステ・ヴィゴリートとスポーツディレクターのパスクアーレ・フォッジャ(元イタリア代表MF)は、私にハイレベルなチームを用意してくれた。

 セリエA昇格に十分に値するね。開幕からリーグが中断されるまで28試合を戦って、成績は21勝6引き分け、負けたのはたった一度だけだ(54得点・15失点)。この成績からだけでも、このチームのクオリティーが分かるだろ? もちろん私も、一生懸命に働いたよ。目標としたのは、集団意識とモチベーションが高く、自信に満ち溢れたチーム。その目論見が実際に上手くいったんだ。

フォルコリン記者:チームと個人、どちらに重きを置いて指導してきた?

インザーギ:もちろんチームさ。ただ、当然だけど試合に勝つには、個々のクオリティーも不可欠だ。ここぞという時にワンプレーで流れを変えられるようなプレーヤーがね。

フォルコリン記者:今のベネベントでいえば、ロベルト・インシーニェ(ナポリのロレンツォ・インシーニェの弟)がそんなタイプのタレントじゃない?

インザーギ:ロベルトは才能に恵まれながら、すごく気まぐれで、継続性のなさが大きな弱点だった。だから25歳になる今まで、セリエA行きの電車に乗れずにいた。しかし私の下で彼は、真面目な仕事人に変貌したんだ。集中力を切らさなくなったし、課題だったラフプレーも著しく減った。メンタル的に成長し、継続的に結果が出せるようになったね。

フォルコリン記者:選手としては大きな成功を勝ち取ってきたピッポだけど、監督してはまだセリエAで結果を残せずにいる。ミラン(1シーズンで解任)とボローニャ(半年で解任)での苦い経験は、君にどんな教訓を残してくれたのかな?

インザーギ:監督は全てを受け入れなければいけない。そんな教訓かな。勝利も敗戦も、招聘も解任も……。世界中のすべての監督は、たとえ自分に大きな落ち度がなくとも、失敗の責任を取ってチームから去るという苦い体験を飲み込まなければいけない。苦しんで、また新たなスタートを切ってを繰り返し、経験を積み重ねていく仕事だ。

 とにかく監督がチームで良い仕事をするには、機能的で財政面も安定しているクラブが必要だよね。そしてもちろん、モチベーションに溢れ、コーチの教えに真摯に耳を傾ける選手たちも絶対不可欠だ。ヴェネツィアやベネベントにはその両方が揃っていたし、だからこそ私も結果を残せてきた。

フォルコリン記者:その意味では、弟のシモーネ・インザーギは幸運かもね。今のラツィオはクラブとチームの双方に安定感がある。今シーズンは予想外のスクデット争いを繰り広げてきた(26節終了時点で首位ユベントスと勝点1差の2位)。

インザーギ:セリエAがいつか再開されたとしても、ラツィオがスクデットを獲れるかはもちろん分からない。でも、最後の最後まで優勝を争うに値するチームなのは間違いないよね。今シーズンの彼らは人々の記憶に残るような試合を繰り返してきた。たしか6節から21試合無敗(17勝4分け)だろ? シモーネと選手たちは素晴らしい仕事をしているよ。

フォルコリン記者:ピッポにとっての「心のチーム」は、今もミランのはずだ。2015年夏に解任されたあともミランの試合は観ている?

インザーギ:もちろん、当たり前じゃないか。でも、ミランは相変わらず苦しい時期を過ごしていて、監督も目まぐるしく変わり、その度に混乱が増している印象だね……。

 とにかくまずは、クラブ組織自体が安定を取り戻し、新たなスタートを切るべきだ。私はミランのことをいつも想っている。1日も早くロッソネーロの伝統に相応しい状況に戻ってくれることを願うよ。

インタビュー●パオロ・フォルコリン
翻訳●利根川晶子
(インタビューの後編は近日中に公開予定)

【インタビュアー】
Paolo FORCOLIN(パオロ・フォルコリン)/ヴェネツィア生まれ。いくつかの新聞や雑誌を経て、1979年から『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙の記者に。まずは北部エリアを担当し、その後はユベントスの番記者を約30年に渡って務める。デル・ピエロやブッフォン、インザーギなどと親交を深めた。現在はフリーランスとして活躍する。著書にデル・ピエロの伝記、ユーベの近代史を描いた『飛翔』など。