■競泳 同学年のライバル

 幼少期から競い合ってきた、競泳男子400メートル個人メドレー世界選手権覇者と五輪金メダリスト。同学年の2人にとって、延期でできた1年の意味合いは対照的になりそうだ。

 「今年五輪があれば、間違いなく金メダルだった」

 瀬戸大也(25)=ANA=について、日本水泳連盟の幹部は言う。昨年の世界選手権で2大会ぶりに王座へ返り咲き、この大会で日本勢唯一の金メダリストに。東京五輪出場を内定させ、各種イベントに参加するなど、五輪を象徴する存在の1人だった。

 2016年のリオデジャネイロ五輪では銅メダル。悔しさをバネに、負荷の高いトレーニングでも積極的に取り組むようになった。今年に入っても、200メートルバタフライの日本記録を12年ぶりに塗り替えるなど好調を維持。自身も「五輪のスタート台に乗ったときには、すでに勝負は決まっている」と自信を見せていた。

 そんな矢先に決まった延期。今月10日、ツイッターで「喪失感で抜け殻になりました。いつやっても絶対に金メダルをとってやると強い気持ちを少しずつ作っていき、再スタートします」などとつづった。延期の決定を受け、小学生のころから指導を受けてきた梅原孝之コーチ(49)との関係を解消。劇薬とも言える方法で自らを刺激し、一度途切れた気持ちを再び奮い立たせようとしている。

 一方、リオデジャネイロ五輪金メダリストの萩野公介(25)=ブリヂストン=はここ数年、ひじの手術の影響やプレッシャーなどから極度の不振が続く。昨年3月から約2カ月の休養をとったが、復帰後も調子は上がらない。

 萩野の泳ぎについて、ある五輪経験者は「いいときに比べて波が立っている。思うように進まず力んでいる証拠。首回りも細く、練習を十分に積めていない感じ」と印象を語る。関係者からは代表入りを危ぶむ声もあがっていたが、選考会も1年延期となり、焦る必要はなくなった。萩野が今年2月に話していた、「できないことを一つずつクリアして、着実に力をつけること」を、そのまま実行できる時間ができた。

 萩野のリオの金メダルは、米国勢の五輪6大会連続制覇を阻んだ歴史的勝利でもあった。東京でも日本勢のライバルは、リオ五輪銀メダルのケイリシュ、19年世界選手権銀メダルのリザーランドらの米国勢。日米対決の構図は、1年延期となっても変わらない。(清水寿之)