ずーっと家のなかにいて運動しないと体がなまってしまいますよね。

 人との接触を避けるために自宅、または自宅前で簡単にかつ効果的にやれる運動はないか? という企画が編集部から舞い込み、テーマは「縄跳びなんてどうでしょう」と提案を受けました。

 筆者も偶然、あるサッカー日本代表OBをリモート取材した際に縄跳びを勧められたこともあって久々にやってみたんです。

 小学生のころのように軽やかにとはいきません、まったく。運動不足のオジさんには、ちょっときつくて……。

 縄跳びのプロと言えばやっぱりボクサーでしょ。

 ということで元WBC世界バンタム級王者として12度の防衛に成功し、“神の左”の異名を誇る山中慎介さんにコツを教えてもらうことにしました。

「脇を締め気味にして、肩に力を入れないで」

--きょうはリモートでのインタビュー、よろしくお願いいたします。山中さんは現役を引退してからもロープ(縄跳び)をやっていますか?

「きょうもさっき自宅前でやったところです(笑)」

--ちょうどいいタイミング。

「いや、この取材があるので、どこを意識すればいいか整理しておこうと思いまして」

--運動不足もあって最近やり始めたんですけど、すぐ疲れてしまうんですよね。どんなところを意識すればよいのでしょうか?

「跳び続けるってことを考えると、力まず、楽に跳ぶことが大切かなとは思います。脇を締め気味にして、肩に力を入れないでロープを握る手首だけを楽に回していくっていう感じで。

 ひざのクッションを使って、あごを引いて、体をピンと張らないというか。慣れてない人は足を大きく上げると回数が持たなくなるんで、小さく上げてコンパクトに跳ぶことを意識すればいいと思います」

「バランス感覚や体幹の強化にもなる」

--縄跳びにはどんな効果がありますか?

「有酸素運動なので心肺機能の向上は当然のこと、上半身、下半身と全体のトレーニングになっているのもいいですよね。バランス感覚や体幹の強化にもなるし、いろんな効果があると思いますよ」

--現役時代はトレーニングに入る前のウォーミングアップでロープをやっていたと思いますが。

「そうですね。ストレッチをじっくりやってから次、ロープに入ります。3ラウンド分、インターバルの時間も休まないので10分、11分跳んでから次のシャドーボクシングに移るようにしていました。練習最後のクールダウンでもロープをやるようにしていました」

「リズミカルに戦える人って、大体ロープもうまい」

--ボクサーのロープは片足でリズムを取る「ボクサー跳び」のイメージもあります。片足で跳ぶ回数を増やしたり、ひざを上げたりとバリエーションも多い。

「やっぱりボクサーはリズム感が重要。ロープを跳ぶ足のステップがボクシングのフットワークやパンチのコンビネーション、スムーズな体重移動にもつながります。

 僕のボクシングの生命線は足だったので、ロープは凄く大切なトレーニングでした。

 バリエーションが多いのは、どんな跳び方をしようかって頭も使っていかなきゃいけないから。体も頭も使うことでそれがボクシングに活きているなっていう感覚はありました」

--なるほどロープのリズムが、ボクシングのリズムにつながるわけですね。

「ボクシングでリズミカルに戦える人って、大体ロープもうまいなっていうのが僕の印象です。たとえば辰吉(丈一郎)さんや(フロイド・)メイウェザーとか。動画でロープを見たことありますけど、凄くリズムがいいので勉強になりました」

「追い込みたいときには最後にダッシュを入れたり」

--山中さんが特にこだわった跳び方ってあったんですか?

「プロデビューする前から、ひざを高く上げて跳ぶっていうのはずっとやっていました。左のひざ、右のひざって交互に、それも結構高く上げて。

 体幹トレーニングとかまだあんまり言われていなかったころでしたけど、あれをしっかりやることで体の芯が鍛えられたし、下半身が強くなったっていう実感がありましたね。

 追い込みたいときには最後にダッシュを入れたりして、いろんな使い方があります。ボクサーが使うロープは(一般の人が使っているものよりも)重くて太い。ロープを回すことで腕も鍛えられました」

交差跳びや二重跳びなど遊び心を入れたい。

--体全体が鍛えられることはよく分かりました。「縄跳びを日課にしたい」と思ったら、どんなことを心掛ければいいでしょうか?

「まずは5分とか無理なくやれる時間を決めて、慣れてきたら段々と時間を延ばしてもいいんじゃないですかね。

 ただ前跳びばかりじゃ飽きると思うので、交差跳び入れてみようとか、二重跳びも入れてみようとか遊び心を入れたい。やっぱり楽しくやることで続けられるっていうところはあるじゃないですか。

 小学生のころ、縄跳びの課題をクリアするたびに先生に丸をつけてもらってうれしかったっていう思い出が僕にもあります。

 もしお子さんと一緒にやるんだったら、交差跳び何回、二重跳び何回とか、課題の項目をつくって一緒に頑張ってみるっていうのもいいと思いますよ」

自宅前でやるとき、クリアすべき問題。

--外出自粛が求められている今、縄跳びをやろうとする人が増えてくるかもしれませんね。

「スペースを取らないし、簡単にできますからね。体の力を抜いて運動することで体も気持ちもスッキリします。

 ただ自宅前でやると他の人に見られるので、ちょっと恥ずかしさもありますけど(笑)」

--確かに恥ずかしい(笑)。

「日課にしていくには、まずそこをクリアする必要があるかもしれませんね(笑)。自宅や自宅前でやれる運動として、縄跳びはおススメです。

 繰り返しになりますけど肩の力を抜いて、力まないことが一番。あくまで自分のペースで、無理せずやっていけばいいんじゃないかとは思います」

(「ボクシングPRESS」二宮寿朗 = 文)