サッカーIQラボ
〜勝負を決めるワンプレー~

Question
パスを出してから、デ・ブライネは何をしたか?

 プレミアリーグでも屈指のタレント集団であるマンチェスター・シティにあって、とりわけ異彩を放つ選手がいる。ベルギー代表のケビン・デ・ブライネだ。テクニック、パワー、スピード、どれを取っても超一流のスペックを有し、ゲームメイクからアシスト、フィニッシュまで、攻撃のあらゆる局面を司る。今もっとも完成度の高いMFのひとりである。

 そんな完璧なデ・ブライネにも弱点はあった。幼い頃から神童と謳われた彼は、ヘンク(ベルギー)やブレーメン(ドイツ)を経て、2013年にジョゼ・モウリーニョ率いるチェルシー(イングランド)へ。しかし、気性の荒さもあり、指揮官からは評価されなかった。シーズン途中にドイツのヴォルフスブルクに移籍すると、才能を遺憾なく発揮。クラブをリーグ2位まで引き上げ、年間最優秀選手賞を受賞するほどの輝きを放った。

 そして2015-16シーズンにマンチェスター・シティに加入。以来、成熟したチームのキーマンとして攻撃を加速させ、多くのチャンスを創造してきた。今季もリーグ8得点16アシストと手がつけられない活躍をしている。第26節ウェストハム戦でもその攻撃センスを見せつけた。



ベルナルド・シウバにパスを入れたデ・ブライネは、このあとどうプレーしたか

 後半17分、ペナルティーエリア手前で3人に囲まれたデ・ブライネは、相手の間を通して、ベルナルド・シウバにパスした。さて、このあとデ・ブライネはどうしただろうか?

Answer
ベルナルドの外側をオーバーラップしてシュート

 デ・ブライネの前方にはベルナルド・シウバとダビド・シルバが構え、そこにもともとシルバをマークしていた相手のアーロン・クレスウェルがベルナルド・シウバへマークをスライドし、アンジェロ・オグボンナがシルバを引き取った。そしてデ・ブライネへ寄せてきた3人は足を止め、この盤面には前方のスペースへ駆け抜ける自分をケアできる人間がいない。



デ・ブライネはベルナルド・シウバの外側をオーバーラップ。ドリブルのこぼれ球をシュートした

 デ・ブライネは、パスを出す前からこの状況を把握していたはずである。

 パスを出した瞬間、デ・ブライネは一切の躊躇なく、ベルナルドの外側へそのまま駆け抜けた。この時点で数的優位が生まれ、ウェストハムは詰みの状態だ。パスを受けたベルナルド・シウバはデ・ブライネが上がるタメをつくるように中央へタッチ。しかし、そのタッチはやや大きくなった。

 ベルナルド・シウバは慌てて縦へ切り返すと、クレスウェルは多少釣られながらも体を反転させてついていった。ところが次の瞬間、ベルナルド・シウバがボールに追いつく前に、背後からフリーで現れたデ・ブライネが右足を振り抜いた。クレスウェルはスライディングの間も与えてもらえず、ボールはゴールに突き刺さっていた。

 イメージは、オーバーラップしたところへきれいにパスをもらう予定だったはず。だが、ベルナルド・シウバが慌てて切り返したことで、ボールは大きく転がった。それでも、まるでこぼれ球に反応するストライカーの如く、ボールへ加速したデ・ブライネ。相手の急所を突いたランニングがあったからこそ、フリーでシュートを打つことができたのだ。

 ゲームメイクだけではない、フィニッシュワークにも非凡な才能を持つデ・ブライネの、冷静で鮮やかなゴールだった。