ブンデスリーガは、本当に再開できるのか。

 新型コロナウィルスの影響で、ドイツでは3月半ばからブンデスリーガを含むあらゆるスポーツ、そしてその他のイベントが中止されている。アンゲラ・メルケル首相は8月31日まで国内における大きなイベント開催禁止を公表しており、当然ブンデスリーガも含まれる。シーズンを再開しても、残り試合で観客を入れての開催することは不可能だ。そのため、今は無観客試合での再開に向け、様々な準備が進められている。

 無観客試合であっても、リーグを最後まで続けることがクラブ存続にはどうしても必要だ。3月から試合が中断して以降、テレビ中継はない。放送がない状況での放映権料は支払われるべきか、というのは大きな話題となった。

 というのも、もしこれが支払われない場合、1部リーグでも6つのクラブが経済的な大打撃を負い、最悪の場合、破産となる危険性もあると報じられていたからだ。当該クラブには、フライブルクやマインツといった小・中規模クラブだけではなく、シャルケやボルシアMGなどの強豪も含まれており、その深刻さがさらに際立って感じられたものだ。

 4月下旬、テレビ放映権料の一部が支払われたことで最初の危機は乗り越えることができたが、まだまだ楽観視はできない。

 何より、無観客試合で開催するとしても、超えるべきハードルはある。関係者がどれだけ安全性を主張しても、納得させるだけの準備と対策が練られてなければ、当局からゴーサインは出ないからだ。徹底した衛生管理と準備で、関係者の安全面を考慮するプランを打ち立てるため、「タスクフォース」チームが設立。ドイツ代表チームドクター、ティム・マイアーをチーフとする総勢8人による、綿密な打ち合わせが続いている。

 ドイツサッカーリーグ協会(DFL)のタスクフォースチームが作り上げたコンセプトによると、まず選手ら関係者は、最低でも週1回の新型コロナウィルス検査を受けることを義務付けられる。今季終了までに全クラブ全関係者のテスト総数は、約2万件となる見込みだ。

 これは繰り返し検査を受けることで医療現場の負担を高め、一般社会における検査の機会を奪うことになるのでは、という批判の声もある。だが、DFLは全体的な検査のうち0.4%以下に収まると主張。そして、全国的な検査が必要となる状況になれば、すぐにまたリーグを中断する方針も固めた。DFLの代表取締役クリスティアン・ザイフェルトは、「リーガ再開の場合、日々新しい状況に対応するために取り組んでいく」と話してている。

 試合に向けた流れや過ごし方も、厳密に指定されている。

 ホテル側はチームとコンタクトを取る人員を極力減らす。それぞれのスタッフは衛生面における研修を受けることを義務付ける。滞在が可能なホテルは、ほかの宿泊客とのコンタクトを避けるため、チームスタッフだけが使用できる出入り口、階、エレベーターを持つことが条件だ。ホテルの部屋は気温21℃、湿度50~60%に保つ。滞在中に清掃スタッフは部屋の清掃を行なわず、チェックイン前に滞在日数分の十分なタオルや衛星要因をチームの用具係に手渡す手配をしておく。

 また、クラブは試合前日ではなく、数日前からホテル入りする。選手たちやスタッフは、エレベーターのボタンは指では押さず、ひじなど別のやり方で押す。階段の手すりや扉も手で触らないように気を付ける。一般客が使用するウェルネスゾーン(サウナやプール、トレーニングルームなど)やバーやレストランなどの使用は禁止される。

 食事時の守るべき項目も多い。ビュッフェ形式では行わない。スタッフは最小限に抑える。メニューは一つのテーブルに置かれ、選手、スタッフは自分で運ぶ。片づけは、全選手・スタッフが食事部屋から退散した後に行なわれる、などだ。

 試合当日も守るべきルールは山積みだ。スタジアムを3つのゾーンに分けて考え、それぞれのゾーンにはマックス100人までというルールになる。控え室などのスタジアム内部の人員は98人。テレビ放送チーム以外の報道陣の数も、最大10人までと制限されるようだ。

 ちなみに、試合中の選手については、「マスク着用で選手が試合をすることは可能か?」という議論もあった。提案書には「試合中にマスクがずれた場合は、一時中断して付け直す」、「マスクが濡れてくるので15分ごとにマスクを交換するために中断」という条項も書かれていた。

 一般紙『BILD』では元ドイツ代表DFデニス・アオーゴの協力を得、マスク着用でサッカーをしたらどうなるのか?という実験を行なっていた。アオーゴは「一般的なマスクだとマーカードリブルを数分間やっただけで、汗でびっしょりで、息もすごくしづらい。よりフィルター性能の高いマスクだとすぐ濡れはしないけれど、今度は視界を遮られてプレーがしづらい」とコメントしていた。

 RBライプツィヒのスポーツディレクターのマルクス・クレッシェは、同紙の取材に「多くの人がどうすれば将来的にうまくいくかを考えていることはいいことだと思う。でも実際には難しいと思う」と応じた。「サッカーはフィジカル的にすごく要求されるものがあるスポーツで、マスクをつけてのダッシュは、1回はできるかもしれないが、繰り返しては無理だ。面白い提案だと思うが、実現可能とは思えない」。

 結局その後、選手のマスク着用の条項は消されたようだ。一見すると滑稽な提案かもしれないが、それでも真剣に実施の可能性を検討しようとした点からは、改めて今回の新型コロナウィルス騒動の深刻さを実感せずにはいられない。

 それでも、ドイツ全土で規制緩和が可能な状況になってきたことを受け、ブンデスリーガ再開の見通しは少しずつ明るくなってきた。労働省はDFLから提出されたコンセプトに対して「選手の安全を守るという観点から受け入れられるもの」と評しており、再開の可能性は高いとみられている。

 クラブの動きも本格化してきた。ブンデスリーガ、2部クラブは4月30日に最初の新型コロナウィルスチェックがスタートした。DFLは、チームトレーニングを再開する前に2~5日の間隔をあけて、2度のチェックをすることを要求しているようだ。

 検査は、各クラブに一つずつラボが振り当てられ、チェックに必要なキットが運ばれる。テスト後にラボが回収し、次のチェック用に新しい資材を搬入される流れとなるようだ。実施の時期は各クラブが自分たちで決める。いくつかのクラブはすでに30日に最初のチェックを行い、複数のクラブは5月1日以降に行なう模様だ。例えば、レバークーゼンは30日にチェックを実施し、選手やスタッフら約70~80人が検査を受けている。

 4月30日に行われたドイツ政府内の協議では、ブンデスリーガ再開にゴーサインは出ず。5月6日に再び協議されることになっている。16日からの再開する可能性もあるが、現実的なところでは5月22日が濃厚だろうか。

 本当にシーズン再開となれば、世界で初めての例となるだけに、世界中のリーグがその行方に注目している。
筆者プロフィール/中野吉之伴(なかのきちのすけ)

ドイツサッカー協会公認A級ライセンスを保持する現役育成指導者。執筆では現場での経験を生かした論理的分析が得意で、特に育成・グラスルーツサッカーのスペシャリスト。著書に「サッカー年代別トレーニングの教科書」「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」。WEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」(https://www.targma.jp/kichi-maga/)を運営中