パラリンピックには、選手の障害の種類や程度によって有利不利が生じないよう、「クラス分け」が存在する。スポーツをすることで障害が軽くなり、クラス変更によりライバルが増える選手がいれば、症状が進行したことでメダル獲得に近づく選手もいる。競技者としての幸せと、人としての幸せが一致しないこともある。そんな矛盾もはらむパラリンピックは、どこに向かおうとしているのか。

 「体をチェックします」

 2018年10月、インドネシア・ジャカルタに到着したパラ自転車の杉浦佳子(けいこ)(49)は、競技会場内の部屋に呼び出された。外国人の判定員に調べられたのは自身の障害の程度や運動能力。直後に開幕する障害者スポーツの総合大会「アジアパラ」の出場クラスを判定するためだ。

 杉浦は16年に自転車で転倒し、言語や記憶といった脳の分野に障害が残る高次脳機能障害を負った。右半身の一部には今もまひが残る。医師は太ももやふくらはぎの左右の太さを比べながら、判定結果を伝えた。「C3で行きましょう」

■クラス判定、体が良くなったお墨付き

 それまでは四肢障害のCクラスで2番目に重いC2だったが、一つ軽いC3への変更が告げられた。実際のタイムに障害に応じた係数をかけ算して順位を決めるため、競技上は不利となる。

 それでも、杉浦に落胆はなかった。「だって体が良くなったというお墨付きを与えられたんですから。体が動くのに、障害の重いクラスで勝とうとは思わない。それはずるいことでしょう」

 パラスポーツの注目が高まるほど、選手にとって成績を左右するクラス分けは重要だ。クラスが細かく分かれ、例えば陸上100メートルは男女29種目もある。陸上のある選手は「障害の重いクラスで戦いたいと思うのは自然な考え。メダルがある選手とない選手では価値が違ってくる」と話す。

 そんな中、杉浦は練習を積むことで体の機能をさらに呼び戻したいと願う。「最終的には健常者と戦いたい」

 一方で、重い障害クラスへの変更が契機となってメダルに近づいた選手もいる。パラ水泳の富田宇宙(うちゅう)(31)は17年、進行性の病気による視力の悪化のため、最も軽いS13クラスから最も重いS11クラスに変更となった。クラス別のタイム差は、富田の得意種目の400メートル自由形で比べると、世界トップではS13の方が約30秒速い。パラリンピックに出場できるかどうかの選手だった富田が、クラスが変わったことで同種目で世界ランク2位に躍り出た。それでも、富田は「周囲は僕がキラキラしているように見えているかもしれないが、実際の生活はそれとは反比例。できないことが増えていくのはつらい」と話す。