韓国社会全体の新型コロナの状況はざっくりと言って、“ピークは過ぎた感もあるが、緩めない”というところ。

 新規感染者より完治者が増えている状況ではあるが、4月7日にはソウルで初の死者が出た。感染の第2波、第3波はいつ訪れるかも分からず、だ。世では両国政府の新型コロナ対策の良し悪しを巡って紛糾しているが、ここではその話はさておき。

 Kリーグはコロナ禍の今をどう過ごしているのか。

 Jリーグの開幕時期が白紙となった今、ライバルのリーグの実情はどうなのか。少しでもあれこれと考察する材料となれば。

 ちなみに韓国ではK1からK7リーグまでが活動するが、2部までがKリーグ連盟の管轄だ。

 1部リーグ「Kリーグ1(ワン)」は12チームが3回戦総当りで対戦した後、4度めの対戦は上位リーグ(ファイナルラウンド・グループA)と下位リーグ(同B)に分かれ、最終順位を決める。これは「スプリット」と呼ばれ、スコットランドやベルギーも導入しているシステムだ。グループBの最下位が自動降格、5位が2部との入れ替えプレーオフに参加する。

 2部リーグは10チームが4回戦総当り後、1位は自動昇格、2位から4位が1部との入れ替えプレーオフに参加する。2部と3部の入れ替えはない。

Kリーグは開幕の無期限延期だったが……。

 当然のごとく現在、リーグ戦は行われていない。のみならず、2020年シーズンが開幕もしていない。

 本来はJリーグが開幕した2月21日~23日の翌週、2月29日から3月1日に開幕予定だったがすべての日程が行われていない。

 危機的状況をメディアはこう伝えている。

「開幕はいつ? (3月)30日の代表者会議は”激しい討論”」(聯合ニュース)
「韓国サッカー界、コロナの危機は助け合いで凌ぐほかなし」(スポーツ京郷)

では、何がJリーグと最も違うのかというと、この点だ。

「2月24日の時点で開幕時期の無期限延期を決定」

 というより、国際的に見ても「無期限の延期」の決定を下すリーグは多くあり、韓国はその流れに沿ったものだ。いっぽうJリーグは3月25日に「4月末からの段階的再開」を発表したが、その後、4月8日に「5月中の再開を諦める」旨も発表となった。

Kリーグでは4月8日現在1人も感染者無し。

「韓国では、Jリーグの再開スケジュールを『書いては、消す』といった表現で揶揄しながら書く媒体もあります。さらに東京オリンピックの延期決定とコロナの感染者数発表はどうしても関連性があるのでは、と見てしまいますが。それでも試合はやりたい、というスタンスからより具体的に準備を進めることは決して悪いことだとは思いません」(一般紙サッカー担当記者)

 結果、現場の動きも大きな違いが出た。結論としては、Kリーグでは4月8日現在、選手からの感染者が1人も出ていない。

「選手団を、隔離したんですよ」

 テレビのスポーツ担当記者はそうまで言い切る。確かにJリーグよりも厳格な処置を取れた面はある。

 3月17日にKリーグ連盟側が各クラブへ以下の通達を出した。

「他クラブとの練習試合禁止」
「選手団の外部接触禁止」
「トレーニング時の選手の”出勤””帰宅”時のルート最短化」

 ちなみに日本ではこの4日後の21日に鹿島アントラーズとコンサドーレ札幌の無観客での練習試合がネット配信された。再開目標があったからコンディションを上げていくのは当然のことだ。

 「韓国の場合は集団感染に関する警戒心が日本よりも強い面があるでしょう。2月19日に発覚した宗教団体の集団感染から一気に事態が悪化しましたから。試合開催に関しても、選手に関しても強い姿勢に出ました」  (サッカー専門誌記者)

世界プロサッカー選手会が発表した方針。

 また韓国では、選手たちもコロナ対策に強い姿勢を見せた。元ガンバ大阪、ジュビロ磐田のイ・グノ(ウルサン)が会長を務める「Kリーグ選手協会」が22日に声明を発表。

「FIFPro(世界プロサッカー選手会)が発表した9つの基本方針」について「選手を守るためにもクラブ側が協力してほしい」とした。じつは日本ではあまり紹介されていないのではないか。

Jクラブで9つの方針は徹底されているか。

 以下、この「9つの基本方針」全文の翻訳を記す。

1) クラブはすべてのロッカールームとトイレに消毒剤や洗浄溶液が入ったディスペンサーを設置すること。

2) クラブはテーブル、ベンチ、椅子、ハンガー、床、水道の蛇口、取っ手、シャワー室ならびにトイレを漂白剤、塩素、有機溶剤、75%濃度のエタノール、アセット酸などが主材料の消毒液で定期的に消毒すること。

3) クラブは脱衣室への出入りを許可する人数を最低限に制限すること。

4) リーグとクラブはトレーニングや試合の際、スタジアムに出入りする人数を必要な人数に制限すること。

5) クラブの医療陣はトレーニングや試合の前、選手とテクニカルスタッフなどすべてのチーム員に対して病歴と診療記録、体温に格別に注意をすること。各種疾病を持つ人が試合やトレーニングに参加したり、接近しないよう確認を文書化すること。

6) クラブは選手、審判、ボールボーイの脱衣室、ドーピングテスト用の脱衣室などすべての脱衣室の衛生状態を予め確認すること。

7) クラブの医療陣は試合やトレーニングのための移動時に必ず同行し、感染予防に必要な物資ならびに保護装置の確認に万全を期すること。
 
8) クラブは選手と持続して接触する医療スタッフ並びに理学療法士が伝染可能性のある業務環境や外部活動に関与しないよう確認すること。

9) 試合やトレーニング中にメディア関係者の脱衣室への出入りを制限すること。

リーグ日程短縮は両国共に合意。

 いっぽう、「日程短縮やむなし」の発表を行った点は両国ともに同じだ。

 発表は日本のほうが早かった。
 
 Jリーグは3月19日の時点で今季限りの「昇格あり・降格なし」を発表した。見方を変えれば「リーグ戦全日程消化」を目指しつつも、プレーオフは早くに妥協したこととなる。

 韓国側が「日程短縮」に関する発表を行ったのは、3月30日のクラブ代表者会議だった。Kリーグ1の代表者が集まり、合意した。

「平等性」で分かれる日韓の考え。

 韓国の現状では、シーズン終盤の「スプリット」については中止もやむなし、といったところか。なぜなら、30日にはこの点の合意も発表になったからだ。

「チームごとにホーム・アウェーの試合数不均衡が起きても、受け入れる」

 スプリットなしの場合、3回戦総当たりのリーグとなり、どう日程を組んでもホーム試合数の不平等は起きる。

 この点は、日本のチェアマンが「各クラブの不平等」を無くすことにも腐心している点とは大きく違う点だ。今季に限り降格を無くした大きな理由のひとつは、「チームやホームタウン地域の感染者の違いなどで、戦力や試合機会に偏りが生じうる」からだった。

 背景にはリーグ連盟側がケアすべきチーム数の差にもよるところがあるだろう。日本は56、韓国は22だ。またリーグ戦の放映権料の比重が韓国のほうがはるかに低いため、試合開催形式には柔軟な対応が可能だ。

 「無観客試合」の開催に関しては、日本と同じく韓国もまた「現在は議論していない」(4月7日のKリーグ定例ブリーフィング)とできる限り避けたい姿勢を見せる。

 両国の判断の違い、事情の違いがどんな結果をもたらすだろうか。

韓国のスポーツメディアは文字ではなく動画に。

 そして、各種スポーツメディアも苦境に陥っている。韓国の大手ポータルサイトの関係者が言う。

「そりゃ、試合がないですからね。各メディア、ネタに枯渇しています。いっぽうで、昔の動画のアクセス数がいいです。例えば『パク・チソン名場面集』などです」

 韓国では、日本のポータルサイトよりもはるかに、「記事もさることながら動画で見せる」傾向が強い。ちなみに筆者自身も「韓国語で原稿を書きたい」と現地メディア側に売り込みを続けてきたが、「もう動画にしたほうがいいよ」と言われ、実際にそうしている。

韓国はより「カネの話」が多い!

 メディアの記事で日本と更に違う点は、「カネの話」をより一層ストレートに描いていることだ。コロナ禍にあり、「契約ごと」の内容が日本よりも細かく報じられている印象だ。

「選手ごとに契約が違う中、基本給よりもインセンティブ(出場給、勝利給)の比率が高い選手は打撃」(4月1日「ニューシス」)

「試合数が減った場合、シーズンチケットのうち数%を払い戻ししなければならないだろう。そこが経営としては頭の痛いところ」(同上)

 また、7日付けの中央日報はこんな書き出しで大々的に危機を煽った。

「一度も経験したことがないことだ。これからどうなるかも予想できない。史上初めての新型コロナウィルスの事態が巻き起こす波紋だ」

 試合なしだと、世界の各クラブですら選手の年俸削減を行わざるを得ない状況については、「米メジャーリーグには、国家の非常事態や不可抗力により試合が行えない場合の年俸支払い事項が明記されており、MLB側と選手組合側で減った試合分の年俸削減をする方向にある」という事例を紹介した。

 Kリーグではまだ「年俸削減」の動きはなないものの、こんな弁護士のコメントを紹介している。

「試合数の不足により選手とクラブ側での合意は可能ではあるだろうが、契約書にはない内容なので強制的には行えない」

「こういった事態は初めてのため、項目が設けられていないのだ。今回の出来事を契機に以降は契約書に関連事項が追加されていくだろう」

 こういった話、日本の現場でも議論されているところだろうか――。

(「JリーグPRESS」吉崎エイジーニョ = 文)