昨年3月に発足した大学スポーツ協会UNIVAS(ユニバス)が、活動初年度を終えた。「日本版NCAA(全米大学体育協会)」ともいわれた大学スポーツを統括する取り組みは、いかなる成果と課題を残したのか。鎌田薫会長が、この1年を総括した。(聞き手・田中大貴)

--改めて、UNIVASの狙いを教えてください。

 一言で表すと、大学スポーツのさらなる振興です。運動部に所属する学生が自分の競技力を向上させることはもちろん、大学スポーツ自体がもっと普及し、そして運動部出身者が社会に出て活躍し尊敬される存在になれるよう、サポートしていく。「するスポーツ」「見るスポーツ」「支えるスポーツ」を組織化することが、UNIVASの目的です。

--3月27日には競技と学業で優秀な成績を収めた学生などを表彰する「UNIVAS AWARDS 2019-20」も行われました。新型コロナウイルス感染拡大防止のために、一部の関係者のみによるインターネットでの配信形式となりましたが、当初はとても華やかな表彰式が用意されていました。

 スポーツにも勉強にも、そして部の運営や社会貢献にも一生懸命、打ち込んでいる学生をバックアップ、激励するという役割がUNIVASにはありますから、「自分の努力を見てもらえている」ということを全国の運動部の学生には励みにしてもらいたいですね。

--1年目を終えて、課題と手応えはありますか。

 元々、設立時の準備委員会に関わっていた大学数が105大学ですから、今年3月時点で加盟大学が222校を数えたことは、1年目にしてはよくできたと思います。ただ、加盟を検討中の大学もありますので、それぞれの大学に応じたサポートができることをアピールして、もっと輪を広げなければなりません。

多様なニーズに対応できる組織に。

--「2025年までに400以上の大学の加盟を目指す」という目標は達成できそうですか。

 全国の大学数は近年780前後で推移していますが、運動部活動に力を入れている大学が400校ぐらいと言われています。その400校に加盟していただくことは不可能ではないと考えています。しかし、その目標を達成すると次の段階として、さらに多くの大学を包括し、幅広いスポーツの活性化を図っていく方向を目指すのか、それともNCAAのように一定の競技レベルにある部活動のサポートに重点を置いていくのかを議論していく必要があります。

--鎌田会長はどちらを目指すのが望ましいとお考えですか。

 どちらにもメリットはあります。今の日本の大学において、トップアスリートでなければ入れないという体育会の部活動は、実は少数派です。海外にはプロを目指すレベルの学生しか大学のチームに入れないことで成果を挙げている国もありますが、日本の場合は「今までやったことがないけれど大学からやってみよう」という学生も多い。彼らのサポートもしつつ、同時に競技レベルの高い大学にも十分なメリットを提供するというように、多様なニーズに対応できる組織を目指したいですね。

民間企業、スポーツ庁との協力。

--運動部へのサービスの充実を図る上で、KDDIやマイナビ、MS&AD、河合塾のグループ会社といった民間企業とのパートナーシップ契約も結んできました。

 今年2月に、マイナビとは「リーダーズキャンプ」と称して、体育各部の新主将を集め、元ラグビー日本代表主将の廣瀬俊朗さんを講師にお招きするなど、リーダー人材育成のプログラムを実施しました。全国23の大学から19競技の新主将が集まりました。KDDIとは運動部所属学生向けのサービスプラットフォームの開発を進めていますし、MS&ADとは安全安心な環境確保における取組み、河合塾のグループ会社とはスポーツ推薦で入学してきた学生向けのeラーニングプログラムの実証実験を行っています。これらの成果が表れるのは先のことになると思いますが、こうした先進的な取り組みを、スピード感を持って行えているのは、民間企業の協力が大きいです。

--スポーツ庁にはどのように協力を求めていきますか。

 そもそもUNIVASは、構想から3年間、スポーツ庁がセルモーターの役割を担いスタートしました。しかし、これからは各大学が前面に出て、必要なサポートをスポーツ庁に求めていくという関係が自然なのではないかと思います。

放映権ビジネスの展開は?

--NCAAのように大学スポーツの放映権ビジネスも展開する予定でしょうか。

 この1年間でも、非常に多くの大学スポーツの大会を映像化し、配信することができました。ただ、アメリカと日本では、そもそも放映権ビジネスの土台が違いますし、大学スポーツ自体の社会的な人気も異なります。日本においては一部の人気競技を除いて、大半の大学スポーツが映像化すらされていない実態があります。日本の大学スポーツは、公式試合を競技団体が中心となって主催してきた歴史があるので、競技映像の制作、配信やビジネス化においても競技団体との連携の下で進めていく必要があります。

--近年は大学スポーツの「体育会気質」が問題になることもありましたが、UNIVASは改善に貢献できますか。

 科学的な練習方法の採用など近代的な運営のできている競技や大学と、そうではない競技や大学が混在することで問題が起きていたので、UNIVASが先進的な取組みをしている競技や大学の情報を積極的に発信したり、ガイドラインを作成することなどで、大学スポーツ全体の改善を図ることができるのではないでしょうか。

--甲子園など高校スポーツに比べて、大学スポーツはメディア露出が難しい印象もあります。

 大学スポーツで最も多くの国民が見ているのは、箱根駅伝でしょう。それに合わせて「学生三大駅伝」として出雲駅伝、全日本大学駅伝のメディア露出も増えてきました。このように大きな大会が複数放映されることで、国民全体の大学駅伝、大学スポーツに対する関心が高まってきました。

 一方で、昔はテレビ中継されていた大学スポーツの試合が、今では注目されなくなってしまっている例もあります。UNIVASが主体的に映像化に取り組むことで、学生が自分の大学を応援しよう、みんなで参加して盛り上げようと思える雰囲気を醸成していきたいと思っています。

運動部以外の学生にも参加意識を。

--鎌田会長の学生時代は、運動部ではない学生にも大学スポーツへの参加意識がありましたか。

 昔は今よりもはるかに、大学スポーツが盛り上がっていたと感じます。当時はどの学部にもレギュラー選手がいて、「英語の授業を一緒に受けている彼が出る試合なら、見に行ってみるか」というように運動部に所属する学生と一般学生との接点が多くありました。だからこそUNIVASでは、競技と学業を頑張っている選手を表彰することで、運動部以外の学生から応援される選手を激励するとともに、彼らを目標にもっと数多くの学生に頑張ってもらいたいというメッセージを込めています。

 

(「All in the Next Chapter」田中大貴 = 文)