ヴォレアス北海道は2019-20シーズンを19勝1敗、V.LEAGUEディビジョン2の12チーム中、2位(得失セット差)という成績でシーズン終盤を迎えていた。しかし今年2月26日、Vリーグ機構は新型コロナウイルス感染症の流行から、1部リーグ男子の優勝決定戦を無観客で行うこと、そして29日、3月1日、7~8日に予定されていた2部リーグ男子の計12試合を中止することを発表。ヴォレアスも地元・北海道で行う予定だった残り2試合のホームゲームの中止を通達された。

 リーグは打ち切りが決まったものの、2位以内に与えられるV・チャレンジマッチ(入れ替え戦)出場の権利を得たヴォレアスは、レギュラーラウンドの中止を受け止めてチャレンジマッチに向けて気持ちを切り替えていた。

 そんな矢先、3月6日に今度はチャレンジマッチの中止が決定した。つまり、ヴォレアスは戦う前に昇格の夢が途絶えたのだ。

移動中に見た「中止」のリリース。

「機構の担当者からは『体育館の問題で』としか説明は受けていません」とヴォレアス北海道を運営する会社、株式会社VOREASの池田憲士郎社長は話す。6日、電話にてヴォレアス北海道・降旗雄平ゼネラルマネジャー(GM)に中止との連絡があり、降旗GMと池田社長は急きょ、事務局のある東京へ向かうことを決めた。

「6日の時点では電話で『待ってください』『リリースはまだ出さないでください』とお願いしました。土日を挟んで翌週の火曜日、10日なら会ってもらえるということを聞き、前日の9日、東京へ向かいました。しかし9日、東京へ向かっている最中に、中止決定のプレスリリースが流れてしまいました」(池田社長)

 9日の夜、沖隆夫事務局長と会うことができ、中止の理由を尋ねると「理事会での決定事項だと言われました」と池田社長は振り返る。

 これを受けたヴォレアスは9日のうちに「2019-20V・チャレンジマッチ男子大会の開催を求める緊急要望書」をVリーグ機構に提出。そして翌10日に北海道にて緊急記者会見を行った。

「プロセスをオープンにしてほしい」

 ヴォレアスの要望は「緊急時対策規程7条4項に基づいた大会打ち切りを撤回し、2019-20V・チャレンジマッチ男子大会を延期にすること」、「開催時期は3月~5月を予定し、3月は無観客試合も想定すること」、「新型コロナウイルスの収束等、大会の開催が可能となった場合には緊急時対策規程7条3項に基づき、V・チャレンジマッチを開催すること」、「上記の対応が困難な場合、ヴォレアス北海道をV1の11番目のチームとする特例措置を設けること」の4つである(株式会社VOREAS公式HPより)。

 池田社長は言う。

「わたしも人間ですから、その後、コロナウイルスの被害の大きさを見て、リスクがゼロでない中で『開催してほしい』とこのまま言い続けていいものかと考えるときもあります。でも選手たちを抱えているし、地元の自治体、スポンサー、サポーターの皆さんのことを考えると『言い続けるのをやめる』なんて簡単に言えません。まずはこの問題をきちんと考えてほしいし、これまでのプロセスをオープンにしてほしい。真摯に対応してほしいです」

 今でも再試合を信じて練習を続けている選手には、かける言葉がないと語った。

リーグ側は「説明はしている」

 一方、沖事務局長の証言は、少し違う。

「決断に至るまでに、チャレンジマッチに参加する2チーム(VC長野トライデンツ、ヴォレアス北海道)に、連絡はもちろんしました。話もしました。長野さんはやりたがっていたけれど『この状況であればしょうがないですね』という反応でした。北海道さんは『なんとかやれないんですか』とおっしゃっていました。そのあとも、その前も、もちろんずっと電話でやり取りはしていて、説明はしています」

 ただし、中止となった原因が明らかにされてこなかったのは事実である。そのためにSNS上では「VC長野側が裏で手を回したのでは?」、「ヴォレアスのファンが長野を誹謗する書き込みをしている」など憶測でのコメントが投稿され、中止の決定発表以降、不穏な空気が両チームのファンの間には流れている。

 では、何が起きたのか。沖事務局長は言う。

決め手を公表しなかった理由。

「中止の一番の理由は、体育館が使えなくなったためです。最初は体育館の持ち主である日本製鉄さんや運営スタッフとなる大阪府バレーボール協会の皆さんも『なんとか無観客でできないか』『やりましょう』という形で実現に向けて進んでいました。

 ところが3月6日の朝ですね。体育館の近隣の住人から『なぜこんなときにやるんだ』というクレームの電話が、何本も日本製鉄さんの事業所に入っているということがわかりました。日本製鉄社内も、新型コロナウイルスの流行を受けて出張禁止や会議禁止の措置を取り始めていました。そういった現状を見て『使用禁止にさせてください』と、間に入っていたブレイザーズスポーツクラブの担当者から電話がありました」

 会場となっていた日本製鉄堺体育館は1部リーグに属する堺ブレイザーズの運営会社・ブレイザーズスポーツクラブのメインスポンサー、日本製鉄所有である。沖事務局長は続ける。

「ただ、我々としては企業の名前を出して『体育館が使えないからできない』と大々的に発表するのは迷惑をかけると考え、避けたかった。もともと会場がなく、大阪府バレーボール協会も含めて、こちらが無理やり頼んでお願いした経緯があったので、そこを悪者にするわけにはいかないと考えたからです」

会場はあっても、人材確保が難しい。

 2月28日の理事会でチャレンジマッチを無観客で行うこと、ただし体育館の使用禁止や運営に携わる大阪府バレーボール協会のスタッフ確保ができない場合は中止とする旨を話し合い、すでに理事会で決定していた。そのため嶋岡(健治)会長判断で中止の決断を下したと沖事務局長は振り返る。

「あえて理由を伏せていたので『なぜ?』と言われるのは理解できます。ただ中止の決定をするときも各理事にはその旨を連絡していますし、異議はありませんでした」

 とはいえ延期の可能性も残されていたのではないか。

「延期については6日の朝の体育館使用禁止の第一報から、決定の発表に至る夕方まで、近畿地区……大阪、兵庫、滋賀、京都、奈良の体育館の、思いつく限りの会場を当たりました」(沖事務局長)

 体育館のスケジュールが空いていても運営スタッフが確保できないところもあり、中止に至ったと話す。Vリーグの会場運営やボールボーイ、モッパー(床清掃)のほとんどはバレーボール協会やボランティアスタッフに支えられているのが現状だからだ。

 とはいえ、延期を検討するために、もっと時間をかけてもよかったのではないかという疑問も残る。ヴォレアス北海道が納得できないのも、中止に至るまでの経緯があまりにも早く進んだ感があるせいだろう。

「そもそも2月28日の理事会で『体育館が使えなかったら中止』という決定をしている。その決定を覆すほどの理由がなかったということです」(沖事務局長)

解釈が食い違うリーグとチーム。

 Vリーグの緊急時対策規程の第7条「再試合の検討」にある「不可抗力により大会の中止を決定した場合、原則として大会開催要項に定める大会開催期間内にて、中止した試合の再試合の開催を検討する」との決まりから、「今年度のリーグは3月14日、15日のチャンレンジマッチが最後ですから、その開催時期を大幅に変えてチャレンジマッチを行うという選択はない」と沖事務局長は説明する。

「ただ、延期の検討をしている最中も、チャレンジマッチに出場する両チームには連絡を取り合って、いつならできるかと尋ねましたし、ここで説明した経緯についても、同じことを6日の朝、両チームに話しています」

 納得してくれたと思っていたと語る沖事務局長と、説明を受けていないというヴォレアス側で、言い分が食い違っている状況だ。

2016年発足、最速での1部昇格を。

 ヴォレアス北海道は2016年に北海道・旭川市を本拠地として発足したプロバレーボールチームである。2017年に3部リーグに参戦し、翌年には2部に昇格。今年も2部で圧倒的な強さを見せ、最速での1部昇格を狙える位置まで来ていた。
 
 同時にその運営手腕でも注目を集めており、2部リーグながら北海道・旭川に1000人以上の観客を集め、今年度は帯広市総合体育館(よつ葉アリーナ十勝)のこけら落としとなるホームゲームも予定されていた。いわばVリーグ機構が掲げるV.LEAGUEのビジョン「バレーボールを通じ、新たなスポーツ文化価値を広く社会にアピールし、地域社会の活性化や次世代を担う青少年の育成(以下略・『一般社団法人日本バレーボールリーグ機構定款』第3条より)」を追求してきたチームである。

 池田社長は言う。

「今後もリーグに参加する以上は、Vリーグ機構との対立構造にはしたくありません」

 現在、インターネット上では「チャレンジマッチ中止の撤回と説明を求める」との名目で、ヴォレアスのスポンサー企業やサポーターを中心に2500件近い署名が集まっている。

掲げるハイブリッドリーグとは?

 企業スポーツの良点を残し、「ビジネス化したハイブリッドリーグ」だと言いつつも、運営面では企業や各都道府県バレーボール協会に頼る部分が大きく、体育館使用の優先順位も他の競技に後れを取っている。チャレンジマッチの会場探しについては、近年では集客の少なさもあり、使わせてくれる会場がなく「お願いして何とか受けていただいた」(沖事務局長)と、チャレンジマッチ開催発表の直前に決まった背景がある。

 新型コロナウイルス感染症の流行による中止をきっかけに、今後の運営のためにV.LEAGUEには、まだ克服しなければならない課題が多いことが露呈した。

Jリーグと比較してしまう。

 救済措置として残されているのは、ヴォレアスが提出した要望書にある「1部リーグへの昇格」である。奇しくも時期を同じくしてJリーグでは、降格なしの自動昇格、チーム数を増やして来季を戦うという方針が発表された。

 一方、Vリーグは1部リーグの優勝決定戦の前に行われた記者会見の2月29日以降、入れ替え戦に関する嶋岡会長のコメントは一切聞こえてこない。「目標に向かって頑張る姿を奨励したいという狙いからJ2・J3リーグからの昇格は実施する」と、チーム、選手を守ろうとするリーダーがいるJリーグと、今回のVリーグの混乱を、どうしても比較してしまうのである。

 V・チャレンジマッチでは今後、どのような進展がみられるのか。注目していきたい。

(「バレーボールPRESS」市川忍 = 文)