そろそろ、決断のタイミングではないだろうか。

 Jリーグをいつから再開するのか、についてである。

 前進はしている。先週末にはJ1、J2、J3のいずれも「昇格ありの降格なし」とのアナウンスがあった。これは正しい判断である。

 集団感染は、「換気の悪い密閉空間」、「人の密度が高い」、「近距離での会話」という3つの条件が重なることで発生しやすくなる。たとえば、室内での筋トレや練習前後のメディカル的なケアでは、3つの条件が成立しやすくなってしまう。

 マッサージなどの身体のケアは、専門家会議の見解に照らせば濃厚な接触である。クラブと個人が細心の注意を重ねても、リスクをゼロにすることはできない。

 Jリーグがいつ再開されることになっても、感染のリスクを抱えることになる。Jリーガーが生活を営む日常にも、目に見えないリスクが漂っていく。

順位の不公平感を緩和するために。

 チームにひとりでも感染者が出たら、濃厚接触者も含めて14日間の隔離になる。再開後のリーグ戦はタイトな日程が確実で、14日間は4試合から5試合分に相当する。

 感染者が出てしまったチームは、勝点12(4試合)から勝点15(5試合)の増減分を、ベストメンバーで戦えないわけだ。2種登録の選手や大学生を中心とする特別指定選手を大量に起用して、どうにか試合を成立させることはできるかもしれない。しかし、本来の実力に基づいた結果は担保できず、順位に不公平感が入り込んでいく。

 そうかと言って、感染者の出たチームの試合を、個別に延期することはできないだろう。感染のリスクを覚悟しながらリーグ戦を消化していくには、勝点の意味を問い直す必要が出てくる。下部リーグへの降格をなしとするのは、「予防」だけでは抑えきれない「不安」をクラブと選手から取り除く処置と言うことができる。

クラブの財政基盤も揺らいでいる。

 同時に、クラブの財政基盤への配慮でもある。

 どのタイミングでリーグ戦が再開されても、スタジアムが熱狂に包まれるかどうかは分からない。平日のナイトゲームでは、「仕事や部活が終わらないから」といった理由で、観戦をあきらめざるを得ない人がいる。

 さらに加えて、Jリーグは大規模イベントである。時間のやり繰りはできても、自粛をする人はいるだろう。連戦だけに試合を選ぶ人も出てくる。観客動員増へのハードルは多い。

 入場者が減れば、入場料収入も減る。試合当日の物販収入やスタジアムグルメなどの収入も、同じように減ると考えるのが妥当だ。

 Jリーグ各クラブの収入源で、入場料収入はスポンサー収入に次ぐ。大きな財源が揺らぐうえでJ2降格となれば、次年度以降の経営に悪影響が及びかねない。企業活動がこれだけ縮小していれば、スポンサーから撤退する企業も出てくると想定しておくべきだ。自助努力だけではカバーしきれない事態を含むなかで、降格クラブを作らないのはJリーグが示すべき救済措置だった。

2チームのみの昇格は現実的な対応。

 下部リーグへの降格がなくなったことで、昇格の基準も見直された。J2からJ1の昇格は2チームとなり、3位から6位が出場するプレーオフは実施されない。

 J2各チームからすれば、昇格枠が1つ減ってしまったことになる。ただ、J1のクラブもまじえてプレーオフが実施された2018年と2019年は、いずれもJ1の16位チームが残留を果たしている。

 これから組み直されるスケジュールにおいて、プレーオフの日程を確保するのは難しかったとも考えられる。新型コロナウイルスの感染拡大というリスクと向き合いながら、J2各チームのモチベーションを奪わないためにも、上位2チームの昇格は現実的な対応と言っていい。

現状の最速は4月3日再開だが……。

 昇格をターゲットとするチームにとっては、プレーオフがなくなっただけではない難しさがある。クラブ内に感染者が出てベストメンバーで戦えず、不本意に勝点を失っても昇格レースは続いていく。

 選手の体調管理は、J1クラブよりも大変になるだろう。とりわけ、首都圏のチームは地方クラブより感染リスクが高く、移動の多いチームは不特定多数の人との接触機会が増える。ピッチ外で不利益を被るチームが生まれかねないが、こればかりはそれぞれの当事者に消化してもらうしかない。

 23日にはJリーグと日本野球機構(NPB)による4度目の新型コロナウイルス対策連絡会議が開かれた。会議後の記者会見では、専門家チームから「早期に開催するのは非常に難しい。できる限り開催を遅らせていただきたい。4月のはじめではなく後半に」との意見が聞かれた。

 Jリーグは4月3日からの再開を目ざしており、3月25日に最終的な決定を下すとしている。そのとおりに動き出すならば、感染リスクを抑えるためにも無観客試合がほぼ唯一の選択肢となる。

無観客試合は支払いすら生じる。

 リーグ戦が行われていない現状で、各クラブの収入は基本的にレプリカユニフォームなどの物販だけである。延期前の2月にリーグ戦とルヴァンカップを開催したクラブはひとまず収入を得ているが、2試合ともアウェイゲームだったクラブもある。2月、3月の収入が激減しているクラブは、確実に存在する。

 無観客試合となれば、年間シートの購入者にその一部を払い戻さなければならない。広告掲出企業への一部払い戻しといった事態も想定される。お金が入ってこないばかりか新たな支払いが生じるところに、無観客試合の難しさがある。通常よりコストは抑えられるとしても、警備上のコストもかかる。

2週間単位でのシミュレーション。

 無観客試合をするにせよ、観客を入れる前提で再延期するにせよ、各クラブの損失はJリーグが補填することが前提になるだろう。

 J1の成績上位クラブに支給される分配金などを各クラブへ行き渡らせるといった対応が、すでに検討材料に上がっていると聞く。

 専門家会議後の会見に出席した村井満チェアマンは、「日々刻々と状況が変わっていくなかで、4月3日から5日までの再開が難しいときには4月18日、その次は5月2日と、2週間単位でシミュレーションをしながら日程の検討を進めている」と明かした。

 5月1日から3日までの第12節から再開されるとなると、10節分を先送りにすることになる。それでも、現在の12月5日終了を12月いっぱいまで延ばせば、全34試合の消化は可能との見方がある。東京五輪の開催に伴う中断を前提としても、どうにか組み込めるという。

代表戦にJ選手を派遣しない?

 ただし、各国の代表チームが活動するインターナショナルウインドー期間中のJリーグ開催を、FIFA(国際サッカー連盟)に要請することになるかもしれない。具体的には9月、10月、11月のウインドーである。そこでは、Jリーグでプレーする選手を日本代表に招集せず、海外クラブ所属選手のみで国際試合に臨んでもらうといった例外措置が俎上にのせられる。

 それでもなお、課題はある。Jリーグと日本代表の試合が同時期に開催されることになっても、スタジアムを確保できるのか。海外から帰国した日本代表選手たちが、14日間の隔離などの対象にならないのか。ヨーロッパ各国リーグが通常の動きを取り戻しており、選手たちがコンディションを整えることができているのか、などだ。

選手のためにも再開時期の固定を。

 不確定要素が列を成す現時点で、はっきりしていることがある。

 選手の気持ちに思いを巡らせたい。

 2週間ごとのシミュレーションが悪いとは言わないが、慎重な議論が結果的に選手を戸惑わせることになるのは避けたい。4月中の収束が見通せないのであれば、思い切って5月上旬からの再開としてもいいのではないだろうか。フィジカルとメンタルのピークをどこへ持っていけばいいのかを、選手たちに早く示してあげたいのだ。

 リーグ戦が再開されたときに、選手が最高のパフォーマンスを披露できるために。

 Jリーグが人の心を明るく照らし、社会に活力を生み出すために。

(「JリーグPRESS」戸塚啓 = 文)