かつて高校のフェンシング部に所属しながら、家庭の事情で部活を断念した和歌山市の男性が、五輪を目指す後輩にエールを送っている。きっかけは新聞記事。夢を目指す後輩の姿が、ふたをしていた苦い思い出からの脱却を手助けした。

 久しぶりに手に取ったフェンシングの剣は、さび付いていた。巻き付けたテーピングは、茶色に変わっていた。見かねた母親がさびを落とそうとしたが、断った。「さびはこの30年の象徴みたいなものだから」

 剣の持ち主は和歌山市に住む山下良之さん(49)。和歌山北高校でフェンシング部に所属した。入学後、体育館の舞台の上で練習する先輩の姿がかっこよく見えたのが、入部の理由の一つだった。顧問は市川真知子先生。幻のモスクワ五輪代表選手だった。