国内2大プロスポーツは、さらなる延期を余儀なくされそうだ。

 日本野球機構(NPB)とJリーグによる新型コロナウイルス対策連絡会議の第2回が、3月9日午前に行われた。会議後にはJリーグの村井満チェアマン、NPBの斉藤惇コミッショナー、さらに専門家チームが会見を開いた。

 Jリーグは今月18日からのリーグ戦再開を、NPBは同20日のセ・パ両リーグの開幕を前提として、それぞれに検討を進めてきた。ただ、専門家チームからは「ウイルスの増加を抑制できる見通しが立っていない。政府の対策を現段階で評価するのも難しい」との理由から、「危機管理の面からももう少し準備をする時間が必要で、延期が望ましい」との答申がなされた。

 これを受けて村井チェアマンと斉藤コミッショナーは、個人的な見解との前提を示したうえで、「(予定どおりの再開や開幕は)難しい」との認識を示した。

論点は再開時期と無観客。

 ここから先の検討事項は、「いつから開始するのか」と「無観客試合に踏み切るのか」になる。

 J1リーグについて言えば、すでに第2節から第4節までの3試合を延期している。たとえば3月いっぱいまで延期となれば、6節までの5試合分をスケジュールのどこかに埋め込んでいかなければならない。

 東京五輪の期間中に開催することはできない。カレンダーの上では実施できるとしても、セキュリティの問題がある。

 Jリーグの運営にあたっては、スタジアム内とその周辺に警備員と案内要員を配置しなければならない。同様に東京五輪でも、セキュリティの担保は求められる。しかも、東京五輪はチームや選手の練習と試合の会場が複数にまたがり、警備を必要とする時間も長いため、Jリーグより大がかりなセキュリティを構築することになる。

 スポーツイベントに関する安全確保のノウハウを持つ国内の事業者は、東京五輪にかかりきりになるだろう。同時期にJリーグを開催するとしても、警備体制を整えられないと考えるべきなのだ。

従来からスケジュールはかなりタイト。

 このため、延期分をミッドウィークのナイトゲームとして組み込んでいくのが現実的な対応になる。ルヴァンカップや天皇杯のスケジュール変更や縮小も視野に入る。

 ただ、それにも限度がある。

 ここ数年のリーグ戦では、集中豪雨や台風による延期を余儀なくされてきた。同様の事態を想定しておくと、現時点でもスケジュールの余白は決して多くない。

 J1リーグが4月いっぱいまでの延期になると、実に10試合分が先送りになる。国内のプロスポーツがそこまでストップしていたら、いよいよ東京五輪の実施も危うくなっている可能性はある。いずれにしても、10試合分の先送りを既存のスケジュール内に埋め切るのはハードルが高い。

無観客開催は経済的なダメージが甚大。

 リーグ戦の全日程消化を念頭に置くならば、4月中のどこかで再開へ踏み切りたい。そこで浮上してくるのが「無観客試合」だ。

 Jリーグのクラブの営業収益において、入場料収入はスポンサー収入に次いで多い。無観客試合となれば入場料収入が無くなるうえに、試合当日のグッズ販売や飲食販売も見込めない。シーズンチケットの一部払い戻しも発生してしまうだろう。

 村井チェアマンも無観客試合には否定的である。だが、いよいよ踏み切らざるを得ないとなれば、Jリーグが規約化しているリーグ戦安定開催融資規程や大規模災害時補填規程を当てはめて、財政難に直面するクラブを支えていくしかない。リーグ戦の成績によって分配される理念強化配分金を、今シーズンに限っては全クラブを対象にするといった見直しがあってもいいだろう。

 Jリーグのスケジュールを左右するもうひとつの要素に、インターナショナルウインドーがある。こちらも不透明感を増しており、今月末のカタールW杯アジア2次予選はもちろん、ウイルスの世界的な拡大に照らせば6月の同予選も延期となるかもしれない。

 そうなれば、インターナショナルウインドーに伴う空白期間を、リーグ戦に充てることは可能となる。

Jリーグの安全理念の第一項。

 スポーツは社会に活力を与え得るコンテンツである。スポーツが予定どおりに開催されることで、社会全体に広がる不安が取り除かれていく期待もある。

 いつまで延期するのか、いつから再開するのか、再開するとしたらどのようにするのかについて、最適解へ辿り着くのは簡単ではない。誰もが納得できる最適解など、そもそもないのかもしれない。

 意見が分かれる局面だからこそ、理念に立ち返るべきである。

 Jリーグは「試合実施時における安全理念」の第一項に、「観客の安全を何よりも優先する」とうたっている。

(「JリーグPRESS」戸塚啓 = 文)