日本水球界のエースと呼ばれ、東京五輪代表が確実視される点取り屋がブルボンウォーターポロクラブ(新潟県柏崎市)にいる。新潟産業大1年の稲場悠介選手(19)=富山市出身=。中学生の頃から世界を見据え、人一倍練習に取り組んできた努力家だ。

 水球を始めたのは小学1年のころ。同じく東京五輪を目指す兄航平さん(24)の影響で、地元のクラブチームで練習し始めた。

 「最初に見た時から、周りとは明らかに違った」

 クラブでいまもコーチを務める舟崎紘史さん(37)が初めて稲場選手を見たのは小2のころ。ボールを持つと一気に加速し、周囲を置き去りにする。突如進む方向を大きく変えて相手のディフェンスを難なくかわす。同年代との差は明らかだった。

 小6になると、高校1年までが参加する全国大会に富山県選抜として出場し、チームの得点の半分以上を決めた。「どのチームに入ってもエースだった」と舟崎さんは振り返る。

 世界で戦える選手。そう信じた舟崎さんはトップレベルの選手を研究させようと国際大会の動画を見せたり、同年代と上の年代の両チーム練習を掛け持ちさせたりと指導に熱を入れた。「他の選手の2倍は取り組んでいた」という。

 稲場選手の目が世界に向いたのは2014年、中学2年の頃だった。04年アテネ五輪銀のセルビア・モンテネグロ代表選手が長岡市に指導に来て、チームで参加。体の大きさや技術の高さを同じプールで体感した。

 効果はすぐ現れた。練習に取り組む際の目の色が変わった。直後のメンタルトレーニングで将来の目標を聞かれ、「世界一の選手になる」と答えた。地元の高校に進学後、2年の冬にモンテネグロのプロチームで3カ月間技術を磨いた。

 高校3年になると、才能と努力が花開く。

 インドネシアで開かれたアジア大会に日本代表として出場し、得点王に輝いた。昨年3月、世界の強豪国が集まるワールドリーグ、インターコンチネンタルカップでも6試合で26得点を挙げて得点王となった。

 昨年4月、新潟産業大入学とともにブルボンへ。現在はレンタルの形でルーマニア1部リーグのチームでプレーする。リーグでも得点ランキング1位を争っているという。

 「ここまでの選手はそうそう出てこない」。ブルボン総監督で、元日本代表主将の青柳勧さん(39)はそう話す。選手としての特長は、持久性と瞬発性を兼ね備えた脚力の強さだという。足がつかないプールで巻き足と呼ばれる方法で常に水をかきながら、強く水を蹴ることで速度を上げ、急な減速や横移動も可能にする。シュートの瞬間にも足を使って上半身を水の上に高く浮かせることで、角度のついた強いボールを放つことができる。

 稲場選手にとって初の五輪が近づく。青柳さんは「守備など、まだまだ粗削りなところはある」といいながらも、こう期待する。「若さを生かしてどんどん得点を狙って欲しい。そうすればチームにもいい結果が訪れる」(谷瞳兒)

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 いなば・ゆうすけ 兄航平さんと姉朱里さん(22)、妹晴香さん(17)の4きょうだいで、いずれも世代別の日本代表経験がある水球一家に生まれた。ポジションはサイドから攻撃を組み立てるドライバー。

 東京五輪は開催国として日本水球チームの出場が決まっており、代表選手は日本水泳連盟の水球委員会が選考、5月12日に決める。4月28日~5月3日にアメリカである世界大会での貢献度などが考慮される。