54回目を数える今年のスーパーボウルは、新旧ファンの関心を引く興味深い対戦カードとなった。

 アメリカンフットボール・カンファレンス(AFC)を勝ち抜いてきたのは、第2シードのカンザスシティ・チーフス。プレーオフの第1シードだった昨季など、近年のチーフスはスーパーボウルに行くチャンスが度々ありながら、惜しいところで敗退してきた。



チーフスの攻撃を牽引するQBパトリック・マホームズ

 記念すべき第1回大会(当時の名称はAFL-NFLワールドチャンピオンシップ)も含め、チーフスはこれまでスーパーボウルに3度進出しているが、最後に切符を手にしたのはちょうど50年前。1970年に行なわれた第4回大会ではミネソタ・バイキングスを下し、唯一の優勝を遂げている。

 対するナショナルフットボール・カンファレンス(NFC)の代表は、第1シードのサンフランシスコ・49ers。今季はレギュラーシーズン13勝をマークし、前年の4勝から大きく躍進した。

 1980年代から1990年台前半にかけて、QB(クォーターバック)ジョー・モンタナを中心に計5度のスーパーボウル王座戴冠を果たしている名門の49ers。7年前の第47回大会にも出場したがボルチモア・レイブンズに敗れており、1995年の第29回大会以来の頂点を狙う。

 両軍ともに、今季は「らしさ」を発揮してポストシーズンを勝ち進んできた。その「らしさ」とは「武器」とも言い換えることができるだろう。それぞれ擁する絶対的な武器で、彼らは勝利を積み重ねてきた。

 チーフスの武器は、爆発力のあるオフェンスだ。2018年シーズンのシーズンMVPに輝いたQBパトリック・マホームズ、屈指のパスレシービング力を誇るTE(タイトエンド)のトラビス・ケルシー、そしてリーグトップクラスの俊敏さを持つWR(ワイドレシーバー)のタイリーク・ヒル。タレント揃いの攻撃は「NFLで最もダイナミック」と言える。

 なかでも、注目はマホームズだ。父親のパット・マホームズは横浜ベイスターズでも投手としてプレーした元メジャーリーガーで、自身もテキサス工科大2年までアメリカンフットボールと並行して野球もプレーしていた。

 その強肩を生かしたパスは、相手ディフェンスを切り裂く破壊力を持つ。今季、マホームズはリーグ1位となる「20ヤード以上のパスTD(タッチダウン)」を12本記録。プロ入りから3年間の出場35試合(プレーオフ含む)でマークしている87本のパスTDは、現在のNFL記録だ。

 また、走りながらロングパスを決められる能力も秀でている。テネシー・タイタンズとのAFCチャンピオンシップの第4クォーターでは、相手のパスラッシュを避けながら右に走りこみ、最後はWRサミー・ワトキンスに60ヤードのロングパスを通して勝利を決定づけた。

 ロングパスは相手にボールをインターセプトされるリスクも増す。だが今季、マホームズが相手ディフェンダーにパスを取られてしまった回数は、わずかに5度しかない。前出のタイタンズ戦でCBSの解説者を務めた元ダラス・カウボーイズQBのトニー・ロモはこう言っていた。

「通常、QBは味方のパスターゲットを見るものだが、マホームズの目はいつも相手ディフェンダーに向いている」

 マホームズは相手の動きを観察しながら、よりリスクの少ないパスを投げられる。チーフスが勝利すれば、24歳のマホームズはスーパーボウル史上2番目に若いチャンピオンQBとなるが、果たして……最年少記録は第40回大会を制したピッツバーグ・スティーラーズのベン・ロスリスバーガーの23歳)。

 一方、49ersの武器は堅固なディフェンスだ。

 過去15年、NFLはパスオフェンスが主流だった。しかし、49ersはこの潮流から大きく離れ、ディフェンスとラン攻撃を中心とする「オールドスクール」な戦い方をしている稀なチームだ。

 49ersがスーパーボウルで勝利を手にするためには、このディフェンスがいかに機能するかが肝となる。具体的には、超強力なパスラッシュでマホームズのパスを封じなければならない。

 自慢は守備ラインの4人——通称「フロント4」だ。DE(ディフェンシブエンド)のニック・ボーサとディー・フォード、DT(ディフェンシブタックル)のソロモン・トーマスとディフォレスト・バックナーは、チーフスがドラフトの1巡目指名を費やして獲得してきた選手たち。その投資が今年、ついに実った。

 今季49ersが挙げたサック数はリーグ5位の48個だが、そのうち33個をこの4選手がマークしている。とにかく、個の力が強い。

 サードダウン等で相手QBにプレッシャーをかける時、多くのチームは守備ライン以外の選手も費やしてラッシュをかけてくる。それに対し、49ersのラッシュはこの4選手だけ。リスクを負って後方の選手を前に持ってくる必要がないため、相手のレシーバーたちをオープンにしなくても済む。加えてラン守備もいいので、フロント4は完璧に近い。

 49ersのオフェンスに目を移せば、ラン攻撃を効果的に使っているのが特徴だ。

 今季772ヤード・8TDを記録したラヒーム・モスタートを筆頭に、3名のRB(ランニングバック)がラン600ヤード以上をマーク。これは1978年のニューイングランド・ペイトリオッツ以来の記録だ。異なるタイプのランナーを使い分けることによって、リーグ2位の1試合平均44.1ヤードを稼ぎ出している。

 このラン攻撃の強さが、結果的には失点数の減少にもつながっている。一般的にラン攻撃は、パスほどボールを前に進めることができないし、時計も止まらない(パスは失敗した際は止まる)。逆にいうと、ランでファーストダウンを更新していけば、攻撃時間は長くなり、相手オフェンス陣をサイドラインに留めておけることになる。

 つまり、49ersはラン攻撃でじっくり攻めることができれば、マホームズらをフィールドに立たせる時間は減っていき、それだけ得点される可能性も少なくなるということだ。まさに「攻撃は最大の防御」の言葉どおり。

 グリーンベイ・パッカーズとのNFCチャンピオンシップは、49ersらしさがふんだんに出た試合となった。ディフェンスでは相手QBアーロン・ロジャースから3サックを奪うなどプレッシャーをかけ続け、オフェンスではモスタートがラン220ヤード・4TDを挙げる大活躍でパッカーズを圧倒した。

 49ersのQB、ジミー・ガロポロが投じたパスは、試合を通じてわずかに8本。現代NFLでは信じられないほどの衝撃スタッツだったが、「QBがパスを投げなくても勝てる」を象徴した試合だった。

 49ersを率いるカイル・シャナハンHC(ヘッドコーチ)は、攻撃コーディネイターだったアトランタ・ファルコンズ時代の第51回スーパーボウルで、前半28−3と大きくリードしながらペイトリオッツに逆転負けを喫した苦い経験がある。今回はチームの指揮官として、捲土重来を期す。

 一方、チーフスのアンディ・リードHCも、今回にかける想いは強い。フィラデルフィア・イーグルスを率いて出場した第39回スーパーボウルでは、ペイトリオッツに24−21と惜敗。歴代6位のシーズン通算207勝を挙げている名将だが、歴代5位までのHCは全員NFL優勝を果たしている。現在61歳。これが優勝リングを手にする最後のチャンスかもしれない。

 会場はフロリダ州マイアミガーデンズのハードロック・スタジアム。現地2月2日(日本時間2月3日)の試合後、優勝杯「ヴィンス・ロンバルディ・トロフィー」を掲げるのはどちらだろうか。