AFC・U23選手権グループB、シリア対日本の試合は、誰もが予想しえなかった結末を迎えた。

 日本のグループリーグ敗退が決まったこの試合を、フィリップ・トルシエはどう見ていたのか。試合終了直後、元日本代表監督フィリップ・トルシエに話を聞いた。

――アロー、フィリップ。

「ムッシュウ・タムラ。私には理解できない。信じられない」

――試合をどう見ていますか?

「まず言いたいのはこれが本当の日本代表ではないということだ。そうだろう。チームに加わっていない選手がまだたくさんいる。しかし同時に本物の日本代表ではないにせよ、少し心配せざるを得ない。五輪本大会まではあと6カ月しかない。このチームには足りないものが多すぎる。

 まず野心が足りない。

 たしかにサウジアラビア戦とは少しだけ異なった試合運びではあった。よりプロフォンダー(速さと深さをもった縦への攻撃)を多用し、クロスも多かった。シュートも放った。森保(一監督)がボールをよりスピーディに前に運びたがっていたのは見て取れた。

 しかし正確性を欠くプレーが多く、ミスも目立ちボールをよく失った。右アウトサイドの22番(橋岡大樹)を別にすれば――彼は本当に素晴らしかった。彼だけが他の選手たちのレベルを大きく超えていた――選手たちはインテンシティも低くリズムも欠いていた。

 このチームは組織を欠いたし、オートマティズムの欠如も明らかだった。チームがひとつになってプレーしていなかった。

 バラバラの印象だ。

 本当に驚いた。こんな日本代表を見たことはほとんどないからだ。だから試合には失望した。日本はボールをキープしてパスによる崩しを図った。だが残念ながら、それは試合開始直後を除き、相手を危険な状態には陥れなかった。あとは試合終了直前の5分間ぐらいだが遅すぎだ。

 日本はグループリーグで敗退したというのが事実であり現実だ。大きなサプライズであるのは間違いない。たとえこのチームが五輪代表チームのBチームであったとしても、もっとましなことができたはずであるからだ。

 監督はこの敗北からいろいろ学ぶだろう。様々な選手を試して、例えば22番は及第点を得た。しかし他の選手たちは……今日はとても凡庸だった」

「選手同士のコミュニケーションを欠いている」

――トップで起用された上田綺世も弱さを露呈しました。

「その通りで、彼には得点機が何度かあり、決めるべきだった。

 だがそれよりも私が気になったのは、このチームはひとつになってプレーしておらず選手同士のコミュニケーションを欠いているように見えたことだ。チームがまだ手探りの状態にあるように感じた。

 まったくオートマティズムが確立されておらず、それぞれが自分のプレーをしている。コレクティブにプレーしようとする意志が感じられなかった。いや、そもそもコレクティブな戦略もなかったように感じた。今日の日本はチームとしてプレーしていなかった。

 奇妙なことに、結論としては……試合の入りはともかく、この試合もサウジ戦と似ていたことになる。最終的に、私には同じ試合に見えた。

 シリア相手にもサウジ相手にも日本のプレーは基本的に変わらなかった。だから同じ欠点を示した。相手が低いブロックを敷いたときに日本は攻めあぐむ。相手の守備に穴を開けることができない。

 この敗北は、日本でも大きな驚きだろう?」

「しかしベストチームではなかった」

――アジアレベルではありますが、五輪本番に向けてのシミュレーションの大会でもありましたから、本番を想定したテストにしくじったと言えます。

「しかしベストチームではなかったのも確かだ。他に誰がこのチームに加わる可能性があるのか。GKを別にして、このチームから誰か五輪のスタメンに入る選手はいるのか。ひとりもいないのではないか?」

――何人かは可能性があります。森保監督はグループはすでに作りあげていますが、まだ絞り込んではいませんから。

足りないのは堂安、久保、板倉、菅原……。

「今日プレーした選手で、本番のレベルに達しているのは22番を除けばひとりもいない。とても五輪ではプレーできない。優れた選手たちはみな国外に出ているのではないか?」

――その通りです。

「誰がいるのか?」

――――堂安律、久保建英、板倉滉、菅原由勢……。

「中山(雄太)もいるだろう。オランダでプレーしている」

――そうです。

「それからオーバーエージも加わるだろう」

――ストライカーでは大迫勇也が入るかも知れません。

「南野拓実はどうなのか。彼はU23なのか?」

――いえ、年齢制限を過ぎているので、入るならオーバーエージになります。

「そうか。繰り返すが結果には本当に驚いた。日本が勝つべき試合だった」

「タレント不足であったのも否めない」

「この試合、上田の決定機を除き、得点機会をさほど作り出さなかったのも事実だ。日本に得点のチャンスが何度もあったわけではない。コーナーキックと幾つかのシュートはあったが、タレント不足であったのも否めない。攻撃能力が十分ではなかった。アグレッシブさを欠いて突破も不十分、セカンドボールも拾えなかった」

――大会に向けての準備期間は短かったですが、このグループとしてはある程度時間をかけて活動しているのでちょっと奇妙な感じです。

「シリア戦はサウジ戦から選手を6人替えた」

――フレッシュな選手を起用して、パフォーマンスを向上させようとしたのでしょうが……。それではサウジ戦では良かった食野亮太郎はどうでしたか?

「ちょっと疲れていたようだった。今日は彼よりも22番の方が良かった。22番があらゆる好機を演出し、ゴールチャンスも作り出していた。上田へのクロスも彼からだった。しっかりと戦ってもいて、とても興味深かった」

日本の選手はもっと優れた選手のはず……。

――左サイドの16番(相馬勇紀)も悪くなかったのではないですか?

「個々の選手の良し悪しはあれこれ言えるが……それよりもコレクティブな面での弱さが際立っていた。

 私は日本の選手たちを知っている。彼らが優れた選手であることもわかっている。しかし彼らはひとつになってプレーしてはおらずコミュニケーションも欠いていた。

 恐らく森保は、最後の5分間に4バックに変えて、前の選手をひとり増やしたことに関しては自信を得たのではないか。戦略面においてプラスアルファをもたらすオプションとなるだろう。

 しかし彼は同じリズムでパスを回すことに満足していた。最後の20分間は、もっとリスクを冒すことができたはずだ。アグレッシブに戦いながら、ボールをさらに深く前に運ぶ戦略を彼はとり得た。最後の5分間がそんな時間で、ずっとアグレッシブだった。あの時間帯の日本は、より前がかりになり、かつアグレッシブに戦っている印象だった」

とにかく……闘志がまったくない。

「このチームにはそうしたアグレッシブさと野心が徹頭徹尾足りなかった。ただただ小さくボールを回すことで満足していた。技術的なミスも多く、どのプレーにも個々の選手の持つはずの野心が感じられなかった。

 選手たちには試合を仕留めるという気概、どうしても点を入れたいという意志も感じられなかった。精神的に彼らはもっとコンペティターになるべきだったがコンペティティビティはまったく感じられなかった。プレーはしていたが、得点するためのプレーではなかった。

 酷い試合だったが、日本はこれから新たな選手を探し出すことができる。これはベストチームではないし、別の選手たちと別のチームでプレーできる。それに監督が情報を得られたという点でポジティブではあった」

――次のカタール戦は日本にとっては消化試合となります。

「だからといって負けるわけにはいかない。負ければチーム内に不安や疑念が生じる。日本には守るべきイメージがある。東京五輪のホスト国という日本のイメージを損なわないためにも、次の試合はよりアグレッシブにプレーをして、この2試合とは異なるイメージを残さねばならない」

「カタールも日本に負けたら終わり」

――カタールに絶対勝たねばならないわけですね。

「カタールに勝つのはカタールのグループリーグ敗退を意味する。(勝利は)日本にとってとても難しい使命だ。カタールも日本に負けたら終わりだからだ。五輪への道が閉ざされる。どちらにとっても次の試合は大一番だ。

 監督会見には出席したか?」

――いえ、このインタビューの後で行きます。

「そうか。しかしみんな驚いただろう」

――ええ、誰もが勝つと思っていましたから、本当に大きな驚きでした。たぶんこれから日本では森保監督解任論議さえ起こる可能性があるでしょう。

「彼が解任されると思うか?」

――それはわかりません。

「第3戦も敗れるようなら大きなプレッシャーがかかるだろう。勝てば大丈夫だろうが。しかし負けたらメディアからのプレッシャーは相当きつくなる。

 すでにカタール戦が大きな重圧だが、それを撥ねのけて日本らしい内容と結果で大会を終えることを心から願っている。選手たちにもそれを実現できるポテンシャルがあるのは間違いないのだから」

――メルシー、フィリップ。

(「ワインとシエスタとフットボールと」田村修一 = 文)