「思い残すことはない」。1972年のミュンヘン五輪で金メダルに輝いた柳田英明さん(73)は、表彰式後にこう言い残し、競技生活に終止符を打った。大会前から「『金』を取って引退する」と心に誓っていた。

 あらゆる大会で金メダルにこだわり続けた。「なぜか実家に銀、銅メダルが無い。自分で捨てたんだろうな」。色にこだわらずにメダル獲得だけを目標にしているうちは、メダルを取れないという信念があった。70、71年には世界選手権を連覇。世界王者として五輪の舞台に立った。

 数々の大会を制しても、五輪はなおも特別な目標だった。