1992年夏。同志社大2年だった奥野史子さん(47)がスペイン・バルセロナから帰国すると、「世界」が一変していた。

 バルセロナ五輪でシンクロナイズド・スイミング(現アーティスティックスイミング)のソロとデュエットで銅メダルに輝いた。まだ携帯電話もインターネットも普及していない時代。「バルセロナにいる間は日本でどうなっているか何も分からなくて、帰ってきたらすごいことになっていた。学内で『サイン下さい』って言われたり、ジロジロ見られたりして」

 気がかりだったのは、当時同じ同志社大で交際していた朝原宣治さん(47)のことだった。陸上部に所属していた朝原さんとは「一緒に五輪に行こう」と言い合っていた。「それが自分だけメダルを取って帰ってきたら、つらいし、腹立つじゃないですか」。だが、朝原さんの態度はそれまでと変わらず、厳しいトレーニングを日々重ねていた。