1日にあった第73回福岡国際マラソンを2時間7分10秒で制したエルマハジューブ・ダザ(28)=モロッコ=は「素晴らしい大会で満足の走りができた。日本が好きになった」と笑顔で振り返った。

 沿道からの声援が力になったというが、それ以外にも日本人の親切さを実感する出来事があったという。大会2日前の夜。コーチのエルムサウイ・ムスタファさん(49)は、1人で福岡市内のスポーツバーで酒を飲んでいたが、スマートフォンを店に忘れたままホテルへ帰ってしまった。翌朝になって手元にないことに気づき、「絶望的な気持ちになった」と頭を抱えた。

 そのスマホには、ダザの練習メニューや食事メニュー、福岡のコースの特徴やレース中の注意点など詳細なデータが入っていたのだ。

 あきらめかけていたが、交番へ向かう前にホテルのフロントに確認すると、スマホが届いていた。テーブルの上に置いていたホテルのルームキーを覚えていた店員が届けてくれたようで、「信じられなかった。日本人はなんて親切なんだと、感激したよ」。

 ダザも一安心した様子。この日のレースは、作戦通りに30キロ過ぎにスパートをかけて飛び出し、ぶっちぎりの優勝を果たした。「スマホが見つかっていなかったら違う作戦を立てていたかもしれない。もっとハードな展開になっていた」とムスタファコーチ。優勝を決めた後、2人はぎゅっと抱き合った。

 ダザは、来年の東京五輪にモロッコ代表として内定している。今度の舞台は札幌。「また日本のみなさんの前で走れるんだと思うとワクワクする。いい走りをして表彰台に立ちたい」と目を輝かせた。(山口裕起)