<担当記者「グッときた」瞬間>

ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会で8強入りを果たした日本代表は世界を驚かせ、多くのファンの胸を揺さぶりました。日刊スポーツでは担当記者による「グッときた瞬間」を連載。取材で見えた、選手の光り輝く瞬間を振り返ります。

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強い漢(おとこ)こそ、優しさがある。プロップ稲垣啓太(29=パナソニック)は、まさにそんな漢だ。日本代表であり、出身地の「新潟代表」として2度目の大舞台へ臨んだことに感銘を受けた。

8強進出の歴史の扉をこじ開けたスコットランド戦。7-7の前半25分。堀江→ムーア→トゥポウとタックルを受けながらボールをつなぎ、稲垣がインゴールに飛び込んだ。代表7年目にして初トライ。トライの経験がないためボールの置き方が分からず、両手で大事に抱えるように置いた。試合後、「初トライ以上に仲間へ感謝」と繰り返した。

このトライと同じぐらい心を打たれたことがある。それは、スパイクに「NIIGATA」の文字を刺しゅうしたことだ。応援する新潟県民への感謝の気持ちと、ともに戦う覚悟と決意を示した。こわもてで「笑わない男」として注目を集めるが、その裏には温かい優しさがある。このギャップがすごい。

小学生の頃から「男」ではなく、強い信念を貫く「漢」を追求してきた。親友と漢らしさについて話し合い、導き出した答えが「強さと優しさ」を兼ね備えること。気づかいもでき、帰省する度に道の駅「新潟ふるさと村」などへ立ち寄る。各店舗にあいさつし、他県のお世話になった方へ日本酒「潟王」や笹(ささ)団子などの新潟名物を大量発送するのがお決まりだ。

重圧と期待を背負ったW杯では勝って泣き、負けて泣いた。手で隠す、その熱い涙に漢らしさを感じた。【峯岸佑樹】