ドラフト会議と言えば、まばゆいスポットライトを浴びる中、各球団のトップが有名選手を指名していくセレモニーという印象がある。確かに冒頭はそうなのだが、指名がだんだん下位になってくると、注目度は下がっていく。時間がくれば地上波のテレビ中継は終わるが、それでも選手指名は続いていく。

 今のドラフトは「二層構造」になっている。正規のドラフトと育成ドラフトだ。育成ドラフト選手の指名もその場で行われるが、その報道は小さく、一般紙では翌日の朝刊に小さく載るだけだ。

 それでもその指名を心待ちにしている選手がいる。独立リーグ球団の事務所では選手と関係者が緊張の面持ちで待機し、名前が呼ばれると地方新聞などのメディアが写真を撮りインタビューをする。その風景は正規ドラフトと変わらない。

ドラフト外廃止と育成枠の設置。

 育成選手制度は、2005年に導入された。

 日本のプロ野球では1965年にドラフト制度が導入されたが、併せて「ドラフト外」での入団も認められていた。しかしこの制度を利用して、意中の選手に他球団からのドラフトを断らせてドラフト外で選手を入団させるような「ドラフト破り」が横行した。そのため1991年に「ドラフト外」は廃止。このときに支配下選手の上限は60人から70人に増員された。

 しかしMLBなどアマ選手の選択肢が増える一方で、社会人野球の「企業チーム」が激減するなど、アマ球界の動向が大きく変化した。またシーズンの試合数も増加する中で、支配下外の選手の保有の必要性を訴える球団が2005年「育成選手枠」の設置を働きかけた。

 育成選手に定員はない。二軍の試合には出場できるが、支配下選手に再登録されない限り、一軍の試合には出場できない。

 育成ドラフトも2005年から始まった。育成ドラフトの対象は原則として正規ドラフトと同じだが、現在は社会人野球の選手は原則として指名しないことになっている(例外はある)。

 育成ドラフト選手は、3桁の背番号をつける。これを2桁の背番号に変更する=支配下登録されるのは至難の業だ。そこからレギュラーになるのはさらに狭き門ではあるが、そういう選手も出てきている。

西武の育成指名はわずか8人。

 そこで今回は各球団の育成ドラフト上がりの選手で、一軍に昇格して実績を残した選手の顔ぶれを見ていこう。なお、正規ドラフトで入団した選手や外国人選手が育成枠に登録されるケースがあるが、これは除外した。

■パ・リーグ■

<西武 育成ドラフト指名8人 うち一軍出場選手3人>

2012年
水口大地 (内野手) 四国IL香川

2014年
戸川大輔(外野手)北海高

2017年
高木渉 (外野手) 真颯館高

 西武は2011年まで育成ドラフトに参加しなかった。指名はわずか8人だ。独立リーグ香川出身の水口は163cmと小柄だが、内外野のユーティリティとして今も活躍中だ。

千賀、甲斐、周東と多士済々。

<ソフトバンク 育成ドラフト指名58人 うち一軍出場選手17人>

2005年
小斉祐輔(外野手)東農大生産学部
西山道隆(投手)四国IL愛媛

2006年
山田大樹(投手)つくば秀英高

2008年
二保旭(投手)九州国際大付高
柳川洋平(投手)BCL福井
猪本健太郎(捕手)鎮西高
堂上隼人(捕手)四国IL香川

2010年
千賀滉大(投手)蒲郡高
牧原大成(内野手)熊本・城北高
甲斐拓也(捕手)楊志館高

2011年
釜元豪(外野手)西陵高
亀澤恭平(内野手)四国IL香川

2012年
飯田優也(投手)東農大北海道

2013年
石川柊太(投手)創価大
曽根海成(内野手)京都国際高

2017年
周東佑京(内野手)東農大北海道
大竹耕太郎 (投手) 早稲田大

 ソフトバンクは育成ドラフト制度を最も活用しているチームだ。

 育成ドラフトで巨人の70人に次ぐ58人を指名しており。2011年から三軍を創設。育成選手の多くは三軍に割り振られ、独立リーグの四国アイランドリーグplusや社会人、KBO(韓国プロ野球)ファームなどとの交流戦で経験を積ませている。

 千賀、牧原、甲斐、石川、周東、大竹らはここから這い上がって一軍で活躍の場を得たのだ。

 余談だが筆者は数年前、四国の地方球場で甲斐拓也のプレーを見たことがある。当時、彼が日本シリーズの晴れの舞台で活躍するとは思いもしなかった。

西野、岡田を主力化したロッテ。

<楽天 育成ドラフト指名23人 うち一軍出場選手5人>

2006年
中村真人(外野手)シダックス

2007年
内村賢介(内野手)BCL石川

2008年
森田丈武(内野手)四国IL香川

2012年
宮川将(投手)大体大

2014年
八百板卓丸(外野手)聖光学院高

 楽天の育成ドラフト上がりでは内村が印象深い。163cmと小柄だが抜群の俊足で2011年には31盗塁。DeNAでも活躍した。

<ロッテ 育成ドラフト指名25人 うち一軍出場選手7人>

2008年
西野勇士(投手)新湊高
岡田幸文(外野手)全足利クラブ

2009年
山室公志郎(投手)青学大

2010年
黒沢翔太(投手)城西国際大

2013年
肘井竜蔵(捕手)北条高

2015年
大木貴将(内野手)四国IL香川
柿沼友哉(捕手)日大国際関係学部

 ロッテは育成選手を指名する年と指名しない年の差が激しい。西野は渋いセットアッパーとして今季も活躍。岡田は驚異的な守備範囲を誇る外野手としてゴールデングラブ賞を2回獲得した。

日本ハムは2017年まで育成枠なし。

<日本ハム 育成ドラフト指名1人 一軍出場選手なし>

 日本ハムは2017年まで育成枠を設けず、70人枠で選手のやりくりをしていた。昨年のドラフトで初めてBCL富山の海老原一佳(外野手)を育成ドラフトで指名。今年の昇格はなかった。

<オリックス 育成ドラフト指名18人 うち一軍出場選手4人>

2007年
梶本達哉(投手) 四国IL愛媛

2012年
西川拓喜(外野手)BCL福井

2016年
張奕(投手)日本経済大
榊原翼(投手)浦和学院高

 オリックスはこれまで育成ドラフトから出世した選手はいなかったが、榊原が今季初勝利、初完投。育成の出世頭になりそうだ。

最も指名人数が多いのは巨人。

■セ・リーグ■

<巨人 育成ドラフト指名70人 うち一軍出場選手17人>

2005年
山口鉄也(投手)元米マイナー

2006年
松本哲也(外野手)専大
隠善智也(外野手)広島国際学院大

2008年
山本和作(内野手)大阪経大
福元淳史(内野手)NOMOベースボールクラブ

2009年
星野真澄(投手)BCL信濃
河野元貴(捕手)九州国際大付高

2010年
丸毛謙一(外野手)大経大

2011年
土田瑞起(投手)四国IL愛媛

2014年
篠原慎平(投手)四国IL香川
田中貴也(捕手)山梨学院大

2015年
増田大輝(内野手)四国IL徳島
長谷川潤(投手)BCL石川

2016年
加藤脩平(外野手)磐田東高
坂本工宜(投手)関学大
堀岡隼人(投手)青森山田高

2018年
山下航汰 (外野手)健大高崎高

 巨人はこれまで12球団最多の70人を指名。2016年にはソフトバンクに続き三軍を創設している。

 2005年、最初に指名した山口鉄也が、リーグ屈指のセットアッパーとなり、一時は通算ホールド数のNPB記録を保持した。山口の成功が、育成ドラフトを存続させたといっても良い。続く松本哲也や隠善智也もわき役としていい働きをしたが、以後、めぼしい選手は出ていなかった。ただ2019年は増田大輝が代走として多く起用された。

 なお、巨人は2009年、育成3位で金光大阪高の陽川尚将を指名したが、陽川は入団を拒否。東京農大を経て今は阪神の外野手になっている。

 また四国IL香川の松澤裕介は一度育成入団を拒否し、翌年再度指名されて入団したが1人にカウントした。

DeNAは“昇格率”が高い。

<DeNA 育成ドラフト指名17人 うち一軍出場選手9人>

2007年
関口雄大(外野手)滋賀大

2009年
国吉佑樹(投手)秀岳館高

2011年
冨田康祐(投手)四国IL香川
西森将司(捕手)四国IL香川

2013年
砂田毅樹(投手)明桜高
萬谷康平(投手)ミキハウス

2015年
田村丈(投手)関学大

2016年
笠井崇正(投手)BCL信濃

2017年
中川虎大(投手)箕島高

 育成枠から支配下に昇格する率が最も高いのがDeNAだ。これは中畑清、ラミレスと2代の監督が育成を含めたファームの選手をどんどん登用するからだ。そんな中から国吉、砂田と一線級の救援投手が生まれている。

阪神にとって初の成功例、島本。

<阪神 育成ドラフト指名12人 うち一軍出場選手3人>

2008年
野原祐也(外野手)BCL富山

2009年
田上健一(外野手)創価大

2010年
島本浩也(投手)福知山成美高

 昨年まで育成枠で活躍した選手はいなかったが、今季、左腕島本が63試合登板で11ホールド、防御率1.67と大活躍。初めての成功例になった。

<広島 育成ドラフト指名20人 うち一軍出場選手2人>

2005年
中谷翼(内野手)四国IL愛媛

2010年
池ノ内亮介(投手)中京学院大

 育成ドラフトを活用しているとは言えないだろう。なお2011年育成4位で市和歌山高から入団した三家和真 (外野手) は、広島を自由契約になったのちにBCリーグを経てロッテに入団し、一軍出場している。

約4人に1人が一軍の試合に出場。

<中日 育成ドラフト指名21人 うち一軍出場選手5人>

2009年
矢地健人(投手)高岡法科大
赤田龍一郎(捕手)愛知大

2014年
近藤弘基(外野手)名城大

2015年
三ツ間卓也(投手)BCL武蔵

2016年
木下雄介(投手)四国IL徳島

 近藤弘基は、レジェンド近藤真市の子。2016年に支配下登録され一軍で3本塁打したが今オフに戦力外となった。三ツ間卓也は中継ぎ投手として活躍。

<ヤクルト 育成ドラフト指名15人 うち一軍出場選手6人>

2006年
伊藤秀範(投手)四国IL香川

2008年
ラファエル・フェルナンデス(投手)白鴎大

2011年
徳山武陽(投手)立命館大
金伏ウーゴ(投手)白鴎大

2014年
中島彰吾(投手)福岡大

2016年
大村孟(捕手)BCL石川

 比較的多くの選手が支配下登録を果たしているが、活躍した選手はそれほどいない。なお白鴎大出身のフェルナンデスと金伏は、ブラジルのヤクルトアカデミーの出身者だ。

 育成ドラフトでは昨年まで288人が指名され、78人が一軍の試合に出た。率にすると26.9%、4人に1人強だ。これを高いとみるか低いとみるか。

 独立リーグの指導者や経営者からは「育成指名ではほとんどチャンスがないから、うちは正規の指名を目指す」という話をよく聞く。確かにそういう面はあるが、この結果でも分かるように、チームによっては「埋もれた才能」をじっくり見出す、優れた「目」を持った指導者もいるのだ。

 今季のドラフト、育成ドラフトの行方にも注目したい。

(「酒の肴に野球の記録」広尾晃 = 文)