「あぶなかった」

 祝福に訪れた長友佑都とゴールゲッター鎌田大地の表情がスタジアムのオーロラビジョンに映し出された。鎌田の唇がそんなふうに動いているように見えた。

 82分、遠藤航が放ったミドルシュートのこぼれ球をヘディングでゴールへ押し込み、日本代表初ゴールを決めた鎌田だが、喜び以上に安堵感を漂わせていた。

「めちゃくちゃ外していたし、ドイツでもゴールが入らない時期が続いていたので、やっとかぁという感じですかね」

 ワールドカップカタール大会アジア2次予選、モンゴル戦。開始からモンゴル陣地に攻め込み続けた日本は、22分に南野拓実がゴールを決めると、前半だけで4得点と一方的に試合を進めていた。前半のシュート数は14本。後半も18本を打っている。

「前半に4点入り、後半はある程度落ち着いた試合になった。ある程度余裕のある状況だったけれど、そこへ途中から入るのは簡単じゃないなと思ってみていました」

 ベンチに座り、戦況を見ていた鎌田が振り返る。

プレーは悪くない、ゴールだけが。

 昨季、レンタル移籍していたベルギーのシント・トロイデンで12得点をマークし、今季はフランクフルトに復帰。出場機会は得ているが、ゴールからは遠ざかっていた。

「1ゴールを決めれば、彼は苦しみから解放される」とフランクフルトの指揮官アドルフ・ヒュッターが語るほど、ゴールだけが足りない状況だった。

「その通りだと思います。壁といえばもちろん壁なんだろうけれど、僕のプロとしてのキャリアを振り返ると、1点獲るまでに時間はかかる。でも、1点獲れればそれ以降も獲れると思っている。

 プレー自体はそれほど悪くないと思うし、点さえついてくれば、もっと上に行ける。その1点を僕自身も待っているし、チームのみんなも待っていると思うので、そういう部分で楽になりたいと考えている」

代表では、FWでの期待が強い。

 鎌田はFWの選手ではなく中盤が主戦場の選手だが、3月以来の代表招集となった今回は、負傷欠場中の大迫勇也の代役といった印象が強い。

「3月に呼ばれたときは、(ベルギーで)点を獲れていた。とはいえ今回も、気持ちの面で変わることはなかった。ただ、FWは人生で代表でしかやったことがないので、新しいチャレンジ。自分が馴れるまでには時間がかかると思っていた。

 今日は特別というか、試合展開を見ても、本当にゴール前での仕事だけをすればいい内容だった。だから今日はそのゴールを決める仕事だけを考えていた。チャンスは多かったけれど、決めきれないシーンも多かった」

FWでのプレーは「発見しかない」。

 61分に南野に代わってピッチへ送り出された鎌田は、ポジショニングを確認するために永井謙佑やベンチ前の森保一監督と会話をしている。2トップなのか、永井との立ち位置をどうするかの確認だった。

 相手との力の差もあり、スペースを見つけるのは容易だっただろう。とはいえ、パスを受けようとしたところで相手にボールを獲られたり、シュートチャンスで決めきれなかったりと、この日もなかなかゴールを決められなかった。

「やりづらさというのはなく、単純に僕自身のミスだから。普段はああいうシュートの打ち方をしない、そんなシーンが多くて。自分のセンスの無さというか、ストライカーとしては全然センスがないかなぁと。

 それでも久しぶりにFWでプレーして、あれだけチャンスを作れていたのは良いポジションには入れていたということなので、そこはプラスに捉えられるところ。クラブではああいうザ・フォワードというシュートの打ち方は少なかったので、次の練習からはシュート練習でもああいう動き方にトライしてみようかなと。練習すればよくなる感覚が得られたのもよかったと思います。FWはやってきていないので、そういう意味では発見しかないから」

2022年は遠いか、近いか。

 守備やポストプレーなど、普段の試合で1トップに求められる仕事も、モンゴル戦に限ってはそれほど必要とされなかった。逆にそういうプレーは中盤で積み重ねたキャリアのなかで磨かれているし、鎌田も自信があるはずだ。

 だからこそ、ゴールを決めたかった。代表での得点は、不発続きのフランクフルトでのプレーにも影響を与えてくるだろうから。

 そして何より、与えられた場所で求められるミッションを果たすことは、日本代表の一員としての居場所を確保するうえで重要なポイントになる。

「W杯カタール大会まではまだ2年以上ありますけど、遠いようで遠くはないと思っています。時間も多いわけじゃない。しっかりと代表に入り続けるうえでも、ポジションをものにしていかないとダメだから」

4本のシュート、1つのゴール。

 鎌田のW杯への挑戦は、主戦場ではないFWとして始まった。

「今はまだ自分の立場を確立していないので、やれることをやっていくしかない。数年後のことはまったくわからないから、今求められることをやるだけです。もちろん、まずはフランクフルトで試合に出続けることが一番大事だと考えています」

 この日鎌田は、記録上で4本のシュートを打っている。1ゴールという結果は悪くはない。しかし、そこで満足しているわけではない。

「今日の相手は特別だから。上へ上がれば、ゴール以外にも自分がやらないといけないことは多くなっていくと思っている。ゴール前の仕事もそうですけど、改善すべきところはまだまだある」

 W杯アジア予選、しかも2次予選は格下相手の戦いが続く。どういう意識でその日々を過ごせばよいのか、4度目の出場となる川島永嗣はいう。

「初戦、そして今日のホーム初戦といい結果を残せている。アウェイの過酷な環境も含めて、最終予選へ向けてどうチームとして形を作っていくか、結果を残すことがもっとも重要だけれど、そのなかでどうチームとして躍動していくのかをもっと追求し、突き詰めてやっていかなくちゃいけない。

 ただ勝った、点が入って大勝したというだけではダメだと思うし、そこで自分たちが満足することなく、これがもっと高いレベルでも通用するのかというのを見据えて、自問自答し、求めていかなくちゃいけない」

鎌田のMF起用も見てみたい。

 日本代表の多くが欧州でプレーしている。彼らは川島の語る「上のレベル」を体感する日々を送り、実感しているはずだ。

「そういう意味では物怖じせずに、落ち着いて戦えている」と川島も話すが、だとしても、完勝という結果は良薬にもなるし、その逆になる可能性もあるだろう。日本の目標であるワールドカップでのベスト16もしくはそれ以上という地点から逆算して、アジアレベルの戦いをどう消化するかは、重要なポイントになるはずだ。

 新しい選手を試し、森保監督の代表チームで戦える選手の層を厚くするには最適な機会だろう。そんな新戦力のひとり、鎌田が初ゴールを決めたことはチームにとっても好材料となる。

 来年6月まで続く2次予選。公式戦の交代選手枠はわずか3。テストできる選手の数は少ないが、先発メンバーも含めた選手起用で、多種多様なオプション作りの機会にしてほしい。そこでは鎌田のMF起用も見てみたい。

(「サッカー日本代表PRESS」寺野典子 = 文)