◆2019 セノン クライマックスシリーズ・セ 最終ステージ第3戦 巨人6―7阪神(11日・東京ドーム)

 最高潮に達したスタンドのボルテージを、さらにヒートアップさせた。阿部は自軍ベンチに向かってガッツポーズした。「気持ちがボールに乗り移って、間を抜けてくれました」。1点を追う3回。岡本の2点打で試合をひっくり返し、なおも1死二、三塁。ガルシアの外角146キロを右前に運び、今CS初打点をマーク。5回にも右前打を放ってマルチ安打とした。

 5年ぶりのリーグ制覇を果たした直後、今季限りでの現役引退を表明したが、「日本一になって泣く」とポストシーズンに向けて準備してきた。レギュラーシーズン終了後、阿部はチームの休養日にも東京Dへ足を運び、誰もいない室内練習場で黙々とバットを振り続けた。「一日でも完全に休んじゃうと、元に戻すのにまた何日もかかる。実戦から離れているし、まずは選球眼をしっかり戻しておかないと」。名古屋遠征に出発した9月17日を最後に、40歳は一日も休まず練習に打ち込んできた。

 チームのために何ができるか。最高のお手本は、10年に他界した木村拓也コーチ(享年37)だ。「延長戦で捕手がいなくなった時に(木村さんが)真っ先にブルペンに受けにいったのもそうだけど、いつもチームのことを考えていたから、いざという時にすぐに動けたんだと思う」。優勝争いが佳境を迎えていた8月、今季最後の広島遠征の際には木村さんの墓前で手を合わせ、どうチームに貢献すべきか自問自答した。

 チームは逆転負けを喫し、試合後は「打っても勝たなきゃ意味がない。また切り替えて」と厳しい表情だった。日本一になるために、何ができるか。阿部の頭には、そのことしかない。(尾形 圭亮)