10月10日に行われた日本対モンゴル戦は、ブックメーカー泣かせだったに違いない。FIFAランキング183位のアウェイチームの勝利は、他でもないモンゴルの人々でさえ予想できないものだったと言っていい。

 力関係には明らかな開きがある。モンゴルがいかにゴール前を固めてきたところで、日本がゴールを奪うのは時間の問題だ。22分に南野拓実がヘディングシュートを突き刺すと、29分に吉田麻也、33分に長友佑都、40分に永井謙佑が加点する。

 守備的な相手からの得点には「こじ開けた」というフレーズが使われるが、この日の日本はそこまで苦労していない。幸運に後押しされたところもない。

 モンゴルのドイツ人指揮官ミヒャエル・ワイスは「熟れたリンゴが木から落ちるように、どんどん点を取られてしまった」と振り返ったが、個のレベルの違いを2人、3人の連係でさらに際立たせた結果として、前半のうちに4ゴールを奪った。ペナルティエリア内かその周辺からのラストパスが多く、スペースを見つけにくいなかで敵陣深くまで侵入できていた。

23人中21人がミャンマー戦と一緒。

 しかし、後半は2ゴールに終わる。

 前半の14本を上回る18本のシュートを浴びせたのに、2度しかゴールネットを揺らすことができなかった。2-0で勝利した9月のパラグアイ戦とミャンマー戦も、後半は無得点に終わっている。後半の戦いぶりを課題とする意見は多いだろうが、森保一監督の選手選考と選手起用がまさにその答えとなっている。

 日本が勝つか負けるかが論点にならないモンゴルとタジキスタンとの連戦に、森保監督は20人の海外組を招集した。国内組を含めた23人のうち21人までが、9月のミャンマー戦と同じである。就任から1年強が経過し、世代交代を終えた指揮官はメンバーをほぼ固定している。

 ならば、スタメンはどうか。

遠藤航、伊東純也、永井謙佑の意図。

 ミャンマー戦から3人の変更があった。ダブルボランチの一角に、1月末のアジアカップ準決勝以来となる遠藤航が起用された。4-2-3-1の「3の右」に、堂安律ではなく伊東純也が指名された。大迫勇也をケガで欠く1トップは、永井謙佑が務めた。

「選手起用についてはひとつの考え方ではなく、いまの勝利と今後の発展を考えている」と森保監督は言う。

 ボランチには9月の2試合で好パフォーマンスを見せた橋本拳人もいるが、守備に重心を置くモンゴルを攻略するには、遠藤のタテパスと空中戦での強さが生きると判断したのだろう。

 加入1年目のシュツットガルト(ドイツ)で出場機会を得ていない彼に、プレータイムを与える意図もあったかもしれない。「いまの勝利と今後の発展」のいずれも満たす起用だ。

 伊東のスタメンは戦略的な狙いが強いと考えられる。カットインよりタテへの突破を得意とするウイングタイプを使うことで、ピッチの幅を有効活用して相手の守備を広げることができる。

 果たして、背番号14を着けた26歳は前半に3つのアシストを記録した。右サイドバックの酒井宏樹との関係もスムーズで、2列目右サイドの選択肢としての輪郭をくっきりとさせた。「今後の発展」が見えてきた。

 大迫不在の1トップには、永井のほかに浅野拓磨と鎌田大地が招集されている。ただ、9月に続いての招集は永井だけだ。チームのコンセプトに触れている時間を考えると、永井の先発起用は「いまの勝利」を目ざすのにベターだ。

交代も3枚使い切る展開に。

 森保監督は後半に3枚の交代カードを切っている。

 1枚目は57分、古傷の右足首に違和感を覚えた酒井宏樹を下げ、安西幸輝が送り出された。左右どちらのサイドでもプレーできる安西だが、過去3度の出場はすべて左サイドだった。伊東とサイドを形成するのは、この試合が初めてだった。

 2枚目の交代カードは鎌田大地である。南野に代わって出場し、1トップのポジションに入る。永井がトップ下へポジションを下げた。

 鎌田は3月のコロンビア戦とボリビア戦に、1トップで出場している。ただ、2列目には乾貴士、香川真司らが起用されていた。トップ下の永井、2列目右サイドの伊東と、実戦で連携を組むのは初めてだった。

 70分に永井と交代して2列目左サイドに入った原口元気も、一緒にプレーするのは初めてである。

後半のメンバーは連動性がまだ足りない。

 3人の選手交代によって、2列目は後半だけで3パターンの並びが見られた。安西の右サイドバック、鎌田の1トップも含めて、「今後の発展」を意識した采配だっただろう。

 コンビネーションが十分でないとしても、力関係を考えれば後半の2得点は少ない。実際に決定機はあったのだから、7点目、8点目を奪わなければいけない、との指摘は成り立つ。

 同時に、選手を入れ替えても連動性を保つには至っていない現実がある。崩しの局面でのワンタッチプレーが減ったのは、連動性の欠如として分かりやすい。サイドを攻略したのは前半と同じでも、ペナルティエリア内まで入り込んだシーンは減っている。その代わりに、ミドルシュートが増えた。

ベストの布陣には確かな意味がある。

 代表チームとしての活動のほぼすべてが公式戦に充てられる現在は、試合を消化しながら練度を上げていく必要がある。コアメンバーを中心とするチームのベースアップをはかり、並行してバックアップ層の充実を図っていくのだ。2次予選でそこまでクリアしておかなければ、来年9月開幕予定の最終予選に準備万端で臨めない。

 モンゴル戦では冨安健洋が終了間際に負傷し、15日のタジキスタン戦の出場は絶望的となった。戦線離脱が長期化すれば所属するボローニャでの立場が危うくなってしまうが、こればかりは早期回復を祈るしかない。吉田麻也と冨安に次ぐセンターバックに経験を積ませ、緊急事態への対応力を高めていくことに集中するのだ。

 国内組での出場が決定的な12月のE-1選手権を除けば、年内はあと3試合しかない。それだけに、1試合も無駄にはできない。勝って当然の相手でもベストの布陣で臨むことに、間違いなく意味はあるのだ。

(「サッカー日本代表PRESS」戸塚啓 = 文)