あなたは2018年度のセ・リーグの最優秀防御率と最多安打のタイトルを、誰が獲得したかを答えられるだろうか。

 正解は防御率が巨人の菅野智之で、最多安打は中日のダヤン・ビシエドである。即答できなかったとしても、野球好きならゆっくり考えれば思い当たることだろう。

 ところが「2番目は誰ですか?」となると、難易度がさらに増す。こちらの正解はDeNAの東克樹と同・宮崎敏郎である。

「2番じゃだめなんですか?」だめではない。立派な成績である。

 ただ、残念なことにすぐに忘れられる。1番も忘れられはするが、歴代タイトルホルダーとしてその名が残る。1番と、詳しく調べなければわからない2番では大きな隔たりがあるというのは動かしがたい事実である。

 今シーズンはこの両部門のタイトルを、大野雄大と大島洋平の中日勢が、それぞれ初めて獲得した。ちなみに次点は広島のクリス・ジョンソンと巨人の坂本勇人。その差は防御率が0.01、安打は1本差とどちらもまれにみる激戦であった。

雨天中止となった広島戦。

「チームメートみんながつくってくれたチャンスですから。自分だけの力ではできなかったし、本当に感謝しかないですね」と大野は破顔した。

 タイトルが確定したのは9月30日の阪神戦(甲子園)。4回1死まで無失点ならば、すでに全日程を終えていたジョンソンを抜くという条件だった。それを見事にクリアしてタイトルをつかみ取ったのだが、大野本人にとっても1週間前までは夢にも思わなかったことだった。

 まず第一の幸運は登板予定の9月22日の広島戦が雨天中止となったこと。大野自身は翌23日にスライド先発したのだが、この中止が重要な意味を持つ。

「運」を生かしたのは大野の実力。

 本来なら広島はその23日がシーズン最終戦の予定だったが、22日の振替日が27日になったことで、ジョンソンが登板可能となった。この時点でCS出場に王手をかけていた広島は、当然、ジョンソンを先発マウンドに送る。6回まで1失点だったが、7回2死二塁から暗転する。

 打力に秀でているとは言いがたい木下拓哉に勝ち越し二塁打を打たれたのに続き、代打の堂上直倫に2ランをたたき込まれた。あっという間の失点でノックアウト。2.46だった防御率が2.59まで下がった段階で、初めて大野に逆転タイトルの可能性が出てきた。

 すべてはイフの話になってしまうが、広島はこの試合に勝っていればCSが決まっていたし、そもそも22日に雨天中止となっていなければジョンソンの登板もなく、手中に収めていたはずのタイトルを取りこぼすこともなかった。雨と味方の援護を運とするならば、それを生かしたのは大野の実力だ。

堂上の2ランを防げていたら……。

 付け加えるならば、30日の阪神戦での大野は絶好調だった。またもやイフの話で恐縮だが、ジョンソンがせめて堂上の2ランだけでも防げていたら、大野は10勝をかけて投げられるだけ投げたはずだ。10勝を放棄して4回1死で降板すると予想していた阪神ファンは、CS進出に朗報とばかり大いに喜んでいた。そして大野の後を継いだ投手から奪った点を守り切り、CSへと駆け上がった。

 もしも広島の緒方孝市監督の退陣理由がBクラス転落にあるのだとすれば、痛恨の雨天中止であり、3失点だったということになる。チームのCS、ジョンソンのタイトル、監督の交代……。運命が変わってしまったのかもしれない。

最多安打につながった、あの1本。

 大野が土壇場で一気に降り注いだ運だとすれば、大島は「今にして思えばあれが……」という運である。

 8月1日の阪神戦(甲子園)。2回の2死一、二塁で打席に立った大島は二塁にゴロを打った。ほぼ正面。二塁手の糸原健斗も捕球姿勢を取っていた。ところがその前に一塁走者の木下に打球が当たった。記録上は木下の守備妨害でアウトだが、大島には二塁内野安打がつく。この1本が最後に効いた。

「一番思い出に残っているヒットですね。このタイトルを取るまでに10年かかりました。これまでもからんだことはあったけど、最後に抜かれたり。取れるときってこんなものなんでしょうか。とにかく、試合に出続けるということを目標にしてやってきました。積み重ねで決まるタイトルなので、毎日、グラウンドに立たせてくれるトレーナーさん、投げてくれる打撃投手や捕手の方々に感謝したいです」

 大野の最優秀防御率も大島の最多安打も、幸運を運んできたのが木下だというところに不思議なものを感じるが、それを逃がさなかったのが2人の実力である。

 シーズンオフに開催されるNPBアワードには、晴れがましい顔で出席することだろう。

(「草茂みベースボールの道白し」小西斗真 = 文)