◆2019 パーソル クライマックスシリーズ・パ 最終ステージ第1戦 西武4―8ソフトバンク(9日・メットライフドーム)

 パの最終ステージ(S)は第1Sを勝ち上がったソフトバンクが逆転で西武に勝ち、1勝1敗のタイに持ち込んだ(西武に1勝のアドバンテージ)。1点を追う8回、安打、本塁打、打点でCS通算1位を誇る「CS男」の内川に代打・長谷川勇を送って同点に追いつき、捕逸で勝ち越し。第1Sから3試合連続の逆転勝ちを収めた。西武は8、9回の継投が誤算で昨年の最終Sに続いて初戦を落とした。

 迷いはなかった。1点を追う8回2死一、三塁。工藤監督は腹をくくった。第1S第3戦でも全2打点で殊勲者となった内川に、代打・長谷川勇を送った。「後悔しないように、いかせてもらった。負けられない戦い」。代打の切り札は平良の155キロ直球を左翼前へポトリと落とし、同点。直後にパスボールで決勝点が入り、指揮官の鮮やかなタクトで勝利に導いた。

 内川はCS通算51安打、30打点、10本塁打ですべて歴代トップを誇る“3冠王”で、MVPも最多の3度。指揮官は実績を理解した上で、心を鬼にした。代打を送るのは17年9月30日以来だが、当時の内川は故障明け。万全の状態での代打は“異例”だった。「無心だった」という長谷川勇を、内川はベンチで出迎える。「(内川は)今日はタイミングがあっていない感じがした。長谷川くんが、追い込まれながらよくレフトの前に落としてくれた」と、指揮官の執念が勝った。

 昨年の西武とのCS最終Sでは松田宣を第3戦でスタメンから外し、今年の第1Sでも不振と感じるや再び外した。この日、3試合ぶりにスタメン復帰させた背番号5は2安打4打点。“聖域”を作らないタクトで勝利をつかみ、王会長を「この前から監督の采配が光っている」とうならせた。

 楽天とのCS第1Sの第2戦から、3試合連続で逆転勝ち。昨年に続く下克上日本一へ重要な初戦を制し、1勝1敗のタイに持ち込んだ。名称が「クライマックスシリーズ」になった07年以降、パの最終Sでは初戦を制したチームが12度のうち11度突破。工藤監督は「苦しい決断もあるが、後悔しないように」と繰り返した。短期決戦の鬼と化し、3年連続日本一を勝ち取るまで執念のタクトを振る。(戸田 和彦)