ホークスが球団初の3年連続日本一へ、まずは最初の関門を突破した。

 楽天イーグルスとの超短期決戦のCSファーストステージ。初戦を落とし、データ上は圧倒的に不利だった。

 パ・リーグのCSファーストステージの過去12年間で初戦黒星の球団が“逆転突破”を果たしたのはわすか1例しかなかったのだ。つまり突破確率は“8%”しかなかった。その高い壁を今年のホークスは乗り越えたのだ。

 CS開幕前は正直、疑っていた。もう18年間も“番記者”をしておきながら、ホークスの底力を信じきれなかった自分を恥じなければならない。CS開幕前の数日間の練習を取材した雰囲気からは敗退の2文字を覚悟していた。

 大事な戦いに向かって行く緊張感が伝わってこなかったのだ。それでいて、いつも通りともまた違っていた。

リーグ制覇の価値を知っているからこそ。

 虚無感。それに近かったのではなかろうか。レギュラーシーズンの最終盤までリーグ優勝のために全力を注いだ。だが、それは叶わなかった。体も心も疲弊していたのは当然だ。

「いや、せめて日本一にはなるんだ」。その気迫は、昨年はひしひしと伝わってきた。そうやって昨年はCSでライオンズを見事にうっちゃった。そして日本一の大目標を達成してみせた。

 頂点に辿り着いて覚えた違和感が、チームには少なからずあった。「嬉しいんだけど、何か心に引っ掛かるんです」。そんな本音をいくつも聞いた。日本一達成時はともかく、CS突破でのビールかけを遠慮したいという声も上がっていた。

 ホークスの選手たちは何度もリーグ制覇を経験している。だから、その価値や尊さをどのチームよりも知っている。今季もCS突破の際にビールかけを行うか否か、球団内では議論があったそうだ(昨年同様実施の方向)。

 一方でイーグルスの練習を見たら、大きな声がグラウンド内を飛び交っていて非常に活気があったのだ。これはマズイなというのが素直な感想だった。

敗戦の中で感じた手応え。

 CSファーストステージ第1戦。3-5の僅差ではあったが、どこか尻すぼみ感のある試合展開で敗れた。初回に先制された時点で嫌な気がしていた。先制された試合をひっくり返して勝ったのは8月22日のオリックス戦が最後で、以来11連敗をしていた。

 しかし、工藤公康監督はこの敗戦の中に1つの手応えを感じていた。

「点を取られても、取り返した」

 先制されたすぐ裏の攻撃でホークスは同点にしていた。そして第2戦、第3戦も全く同じような試合展開となった。

 第2戦は1回表、第3戦では4回表に1点を失った。それでもホークスは直後の裏の攻撃で追いつき、この2試合はその後試合をひっくり返して連勝してみせたのだった。

「昨日も初回に先制をされたけど、すぐに点を取り返していた。だから、今日も『よし、よし、よし』と思っていたし、ベンチの中も暗くなることはなく声が出ていた。だから行けると思っていました」

 工藤監督は最初の逆転勝ちを収めた試合直後に、明らかに潮目が変わったことを確信したかのように自信の笑みを浮かべていた。

松田と直接話したうえでの苦しい決断。

 また、指揮官のタクトも冴え渡った。

 第1戦で松田宣浩が不振と見るや、第2戦以降は三塁手にグラシアルを起用した。代わってスタメン入りした福田秀平は第2戦で決勝本塁打を放った。松田宣は今季で5年連続シーズン143試合フル出場を果たし、ペナントでは30本塁打を放ったチームの顔ともいえる存在だ。

「苦しい決断をしなければならなかった。本人とも話をした。悔しかったと思うが、ベンチでも大きな声を出してチームを盛り上げてくれた」

 チームとして戦っている、個人の戦いではないとも工藤監督は口にした。

 昨年のCSでも、ファイナルステージで松田宣を思いきってスタメンから外したことがある。ほかにも昨年はシーズン中には先発ローテを担った武田翔太や石川柊太を“第2先発”として起用したり、一昨年はシーズン無安打だった城所龍磨をスタメンに大抜擢したり、勝負手がことごとく的中してホークスを勝利に導いてきた。

 これが現役時代に11度、監督としても3度の日本一を経験している短期決戦巧者の勝負カンなのか、持って生まれたヒキの強さなのか。

 やはりファイナルステージでも工藤監督の一手が、勝敗の行方を左右するに違いない。

短期決戦を得意とする内川の存在。

 また、選手でキーマンになりそうなのが内川聖一だ。ファーストステージ第3戦で同点タイムリーと決勝ホームランを放った。3試合で打率.364、2本塁打、4打点と打線を引っ張っている。

 とにかく短期決戦に強い。CS通算で38試合に出場して51安打、10本塁打、打率.375をマークしている。

「自分では理由が分からない。シーズンで2割5分しか打っていないのにね」

 今季は大きな故障がなく、3年ぶりに規定打席に到達した。しかしシーズン打率は.256と、稀代の安打製造機に似つかわしくない数字に終わっていた。

打つか打たないかなら「5割」。

「打てない理由は分かった方が良いけど、打てる理由は分からないままの方が良い時もある。分かってしまうと、そこに違う余計な意識を持ってしまうから」

 独特の言い回しだ。ただ、短期決戦の強さの極意は、内川の「割り切る心」にあるのかもしれない。

「それはあるかも。自分の中での勝手なプラス思考ですけどね。レギュラーシーズンだとそれまでの成績や前回対戦のイメージが入って来るので、流れがあるんです。目の前の1打席だけの勝負になりづらい。

 でも、短期決戦はその1打席でベストな結果を出せるか出せないかという、シンプルなところで考えられる。10回のうち3回ヒットを打てばすごいと言われるけど、1打席に限定すると打つか打たないか、その2つに1つでしょ。つまり5割なんですよ(笑)。ならば、打てる方の5割を信じてやっちゃった方がいいのかなと、シンプルに考えられるところはあります」

 昨年、ライオンズを破ったCSファイナルステージでも打率.455、1本塁打、3打点をマークした。内川のバットには要注目だ。

 また、昨年同様に悔しい思いをしている松田宣がこのまま終わるはずがないとも思っている。内川とともに強いホークスの象徴として長くチームを支えてきた。熱男の意地を、信じたい。

(「野球のぼせもん」田尻耕太郎 = 文)