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 セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージは3位の阪神が2位のDeNAを2勝1敗で撃破して、“下克上”への第一歩を踏み出した。

 DeNAにとってみれば、第1戦で7対1から6点差をひっくり返されたアレックス・ラミレス監督の継投ミスがすべてのシリーズだったが、逆にいえば阪神の粘り強さがあの逆転劇を生んだともいえる。

「ウチは現状では強いチームにはなれていないと思う。でも、だからこそチーム全員で闘うとか、気持ちの部分でカバーできるところというのが、ウチの強みだと思う」

 突破を決めた阪神・矢野燿大監督がこうまくし立てたようにベンチ総出の全員野球が、その終盤の逆転劇を生んでいる。

大逆転の口火を切った、代打・高山。

 敗れたとはいえ第2戦も土壇場の9回2死から福留孝介外野手の起死回生の同点弾が飛び出した。第3戦も7回に北條史也内野手の失策で追いつかれた直後の8回に死球から代走・植田海内野手の盗塁、暴投の1死三塁から梅野隆太郎捕手の決勝犠飛で試合を決めた。

 シーズン終盤に6連勝で広島を蹴落としてポストシーズン切符を手にした勢いのままに、ファーストステージの3試合は終盤の勝負所を制しての突破だったわけである。

 こうした終盤の粘りを生み出した全員野球の背景には2つのポイントがあった。
1つはこのシリーズでの矢野監督の驚異的な代打成功率だ。

 初戦の大逆転の口火を切ったのは7回1死から送った代打・高山俊外野手の二塁打で、それを繋げたのも代打の木浪聖也内野手のタイムリーと、シリーズでの代打成績は10打数5安打2四球。出塁できなかったのはわずか4回だけと、矢野監督の代打策がことごとく的中して、それが試合の流れを大きく阪神に引き寄せる結果につながっている。

藤川球児を軸に踏ん張った。

 そしてもう1つはシーズン中から阪神を支えてきたリリーフ陣の働きである。

 CS開幕直前に中継ぎの柱だったピアース・ジョンソン投手が夫人の出産に立ち会うために緊急帰国。手駒が1枚足りない中でのやりくりとなったが、それでもクローザーの藤川球児投手を軸に残った投手陣が踏ん張った。

 この3連戦で繰り出した投手ののべ総数は18人。一試合平均6人の継投で乗り切った計算になる。

 特に初戦は先発の西勇輝投手が5連打を浴びた上に足に打球を受けていきなり退場というアクシデントがありながら、2番手の守屋功輝投手が無死一、二塁のピンチを無失点で切り抜け、そこからさらに6人の投手を繰り出した。逆転した8回からは岩崎優投手から藤川へとつないでの逃げきり。

 この初戦で打ち込まれた島本浩也投手も第3戦では2番手でDeNAの上位打線を無失点で退けて結果を残すと、同点に追いつかれた1死満塁のピンチをラファエル・ドリス投手が無失点で切り抜けて8回の勝ち越しに繋げた。

 2、3戦で失点して唯一、不安を残した岩崎も、いずれの失点も回をまたいだ2イニング目だった点を考えれば、次ではそれを踏まえた起用ができるだろう。

似た者同士の戦いになるかもしれない。

「本当に1人で勝てるような試合じゃないから。この3試合、本当にウチの戦いというのができたと思う」

 指揮官がこう手応えを感じて臨むファイナルステージ。相手は原辰徳監督の下で5年ぶりにリーグの覇権を握った巨人である。

 ある意味、このファイナルステージは似た者同士の戦いになるかもしれない。

 巨人はエース・菅野智之投手が万全ではなく、安定した先発投手は山口俊投手くらい。となると当然、シリーズの勝敗を分けるのは継投策の成否ということになるはずだ。

巨人のポイントとなる選手は?

 中でも終盤の阪神の代打攻勢をどう凌ぐか。そこがポイントとなるはずだ。

 阪神の藤川同様、クローザーのルビー・デラロサ投手に安定感があるだけに、ポイントはそこにどうつないでいくか、である。

 そこで巨人側のポイントとなる選手としてあげられるのは、左腕の中川皓太投手となる。

 デラロサの加入まではクローザーとしてフル回転し、序盤のチームを支えた立役者だが、シーズン終盤には蓄積疲労からフォームが崩れて修正できないままに不本意な内容で今季を終わっている。

 中川は「腕を振り出す時にバックスクリーンから外れて出どころが見にくい」と言われる変則的なフォームとそこから繰り出す曲がりの大きいスライダーが持ち味。そこに真っ直ぐが切れていると、よりこの勝負球が有効になる。

 ところがシーズン終盤にはフォームがバラバラに崩れて、スライダーのキレもなくなり、ボールを見切られてしまって苦しい投球となっていた。

 中川にとって朗報は優勝決定から約2週間とたっぷり調整期間があったこと。ある程度、疲労を取りながら、改めてフォームの修正に時間を費やせ、ボールのキレも戻りつつある。

両軍ベンチ総出の総力戦は必至。

「終盤の7、8回で左打者が厚いところで使うのが理想」

 こう語るように原監督の考えでは、CSでは同じ変則左腕で第2次監督時代のブルペンを支えた山口鉄也投手と同じような起用がイメージだ。

 阪神打線で考えれば1番の近本光司外野手と3番の福留のところか、それとも高山、木浪、鳥谷敬内野手らが残っていればこうした左の代打攻勢をしのぐための起用となる。

 中川が機能すれば同じ左腕の高木京介、田口麗斗両投手に右の澤村拓一、大竹寛両投手という中継ぎ投手陣を早めから投入できるメリットも出てくるわけだ。

 総力戦で勝ち上がってきた阪神ナインの疲れは否めない。

 その点では休養十分で調整してきた巨人にやや分があると見るのが順当だが、DeNAとの激闘を制して勝ち上がってきた虎の勢いは、意外と侮れないものでもある。

 おそらくファイナルステージも両軍ベンチ総出の総力戦は必至である。

(「プロ野球亭日乗」鷲田康 = 文)