<解体新書 西本聖氏>

これが400勝の投球フォームだ! プロ野球唯一の400勝投手で、6日に急性胆管炎による敗血症のため86歳で死去した金田正一(かねだ・まさいち)氏。一夜明けた7日も球界から悼む声が相次いだ。日刊スポーツ評論家の西本聖氏(63)は、連続写真で伝説のフォームをチェック。投手の理想型とし、偉大な先輩をしのんだ。

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私ごときの人間が金田さんの投球フォームを解説するのは、とても恐縮してしまうのですが、お世辞ではなく大変素晴らしいとしか言いようがありません。

全体的な感想として、まるでキャッチボールをしているかのようにリラックスし、それでいながらダイナミックなフォーム。あえていうなら、力みが出ているのは最後の(7)ぐらいで、リリースした後に力感が出るのは、それだけ理想的な流れで投げられている証拠になる。

(1)ではリラックスした状態で振りかぶり、(2)では下半身からホーム方向に勢いをつけているのが分かる。(3)で左腕が背中側に入りすぎているように感じるが、(4)のトップではしっかりと高い位置までボールを持つ手を持ってきている。(2)と(3)の間の写真がないが、肩の関節が柔らかく、おそらく肘から抜くように上げていくのではなく、ボールを持つ手で円を描くように上げているのだろう。長身を生かし、高い位置でトップが作れている。

(5)以降で特徴的なのは、歩幅が狭いところ。スタンスが狭ければ、それだけ(6)のように高い位置でリリースできるメリットがある。(7)でやや背筋が丸くなっているが、これだけ上から投げ下ろしていれば、気にする必要はない。それより(6)と(7)の右足は、しっかりと上半身を受け止めるように使えている。これがスピードを生む要因になっている。

力強さと柔らかさの両方を備えている。こうしてあらためて見ると、400勝するのが理解できる。長身の金田さんは、当時の選手からすれば2メートル近い身長に感じたのではないか。マシンもなく、速い球を打つ練習もできない。それでいて当時でも少ない左で投げているのだから、打者は打てるわけがない。野球は進化しているが、金田さんを超えるような投手は、今後も出てこないと断言していい。天国から野球界を見守ってくれるでしょう。(日刊スポーツ評論家)