<セ・CSファーストステージ:DeNA6-4阪神>◇第2戦◇6日◇横浜

クライマックスシリーズ(CS)史上初の代打サヨナラ本塁打で、DeNAが逆王手をかけた。

DeNAの「ニコ」こと乙坂智外野手(25)が同点の9回1死一塁、右翼スタンドへ劇的な1発を放った。17年CSファーストステージの阪神戦でも代打本塁打を放っている。当時の記憶がよみがえったラミレス監督の起用に応える活躍。負ければ敗退の土壇場を「ハマのCS男」が救った。

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乙坂はニコっと笑った。「勝ちました」。お立ち台でそう言うと、ファンの悲鳴に近い雄たけびがこだました。「最初から最後までチームのみんなが頑張っていた。自分も力になれるよう、勝利に近づけるようにという思いだった。人生で初めてのサヨナラホームランです」。チーム全員の気持ちが乗り移った白球は、ハマっ子たちが待つ右翼席で跳ねた。

ラミちゃんの記憶を、再び現実のものとした。同点とされた直後の9回、1死から宮崎が左前打で出塁すると、指揮官の頭に2年前の記憶がよみがえった。17年、同じCSファーストステージ、同じ阪神戦、同じ1敗で迎えた第2戦。7回に代打で登場した乙坂は左翼へ1発を放ち、勝利に貢献した。普段はフィーリング20%の指揮官は「今日は120%フィーリング。だから佐野ではなく、乙坂」と送り出した。乙坂は「あの時はレフトスタンドだったし、球場も違うし、あんまり覚えていない」と言うが、ラミちゃんはニコニコだった。

京ちゃんも、ニコニコさせた。横浜スタジアムの関係者食堂で働く佐藤京子さんは「自分の息子みたいなもの。本当に打って良かった」と喜んだ。乙坂は試合後、同食堂で食事をすることが多い。お気に入りは名物の目玉チャーハン…ではなく、豚キムチ。「京~ちゃ~ん、おなか空いた」がお決まりのフレーズで、「僕の妻ですから」と冗談を言う間柄でもある。「いつも感謝しています。チームの監督、コーチ、選手、スタッフだけじゃない。ベイスターズは、そういう裏で支えてくれる人もみんなファミリーですから」。本拠地でのCS初開催。値千金の1発で支えてくれた人たちをニコっとさせた。

前日の大逆転負けを吹き飛ばし、これで逆王手。本名の「乙坂・ルーセロ・智・ニコラス」からニコと呼ばれる男は「とにかく、明日勝つだけ」と力強く言い切った。皆の笑顔の中心にニコがいた。【栗田尚樹】