18年平昌五輪フリースタイルスキー男子モーグルの銅メダリスト原大智(22)=日大=は競輪で“落第”寸前だった。モーグルとの両立を夢みて5月に日本競輪選手養成所(静岡・伊豆市)に入所した。9月上旬の「第2回卒業認定考査兼記録会」では規定タイムをクリアできずに、不合格となり、退所の危機に追い込まれた。9月下旬に行われた“追試”で何とか合格し、競輪選手になる夢をつないだ。もがき続ける原に迫った。(平田 裕二)

 華々しいモーグルの世界から一転、4月から日大を休学して競輪界に身を投じた原。12年ぶり史上8人目の特別選抜試験合格者として注目を一身に集めた。養成所の入所式では「競輪は素人なので、まずはプロ選手にならなければ僕の人生は切り開かれない。前例のない(モーグルとの)2競技の両立は難しいと思うが、やるからには覚悟はできている。日本が誇るスポーツ選手になりたい」と力強く語ったが、現実は厳しくそう甘いものではなかった。

 入所直後の「第1回記録会」では風邪による体調不良の影響もあってか、タイムは全く振るわず4種目で候補生72人中、200メートルは12秒13で71位。400メートルは25秒08で最下位。1000メートルは1分14秒44で70位、3000メートルは4分7秒04で48位と屈辱まみれのスタートとなった。

 あれから4か月が経過。先月初めに行われた「第2回記録会」では200メートルが11秒29で58位、400メートルが23秒45で60位、1000メートルは1分13秒20で70位、3000メートルは4分5秒36で53位と、前回より全ての種目で自己ベストを上回った。特に200メートルと400メートルは5段階評価の能力評価が前回の2から4まで底上げできた。「1000メートルはダメだったけど、200と400メートルは大幅に記録更新ができ白帽が取れてビックリ。自分の中では1000メートル以外は満足している。順位に関しては今期生がすごすぎて割り切っている」と充実感いっぱいの表情で振り返った。

 原は広告塔としても期待される存在。1000メートルのタイムが1分13秒台と規定タイムをクリアできずに追試となり、不合格なら退所に追い込まれる危機だったが、25日の追試では1分12秒台のタイムで何とか退所は免れた。「自分の中では結構、成長しているが、これから。モーグルに関しては今は封印。僕しかできない二刀流の夢は変わっていないが、第一目標はプロ選手になること」。後戻りできない現実と葛藤しながらも今の原は輝いている。平昌の冬季五輪では日本人一番乗りのメダルを獲得。勝負強さを見せた持ち主。誰も通ったことのない、道なき道を自ら切り開いていく。

 ◆原 大智(はら・だいち)1997年3月4日、東京都渋谷区生まれ。22歳。日大(スポーツ科学部、競技スポーツ学科)在学中。小学6年から本格的にモーグルを始め、東京・広尾中卒業後にカナダにスキー留学。スピードあるターンを武器に18年平昌五輪フリースタイルスキー男子モーグルで銅メダルを獲得。同種目の男子で初めて表彰台に立った。今年2月のフリースタイルスキーW杯では3位。172センチ、75キロ。