今年の夏は台風、集中豪雨、酷暑による熱帯夜の連続と、記録的な異常気象に見舞われた。その中で7月初旬から実施されたテストイベントでは、多くの課題や問題が浮き彫りとなった。ただ、それはそれとしてポジティブに受け取らなければならない。組織委もあらゆる想定のもとでシミュレーションを行っていたと思うが、見通しをはるかに超えることが多かったと想像する。

 9月15日のMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)も格好のテストケースだった。給水ポイントにはスペシャルドリンク、ミネラルウォーター、氷などが通常より短い間隔で置かれ、道路には遮熱舗装が施されていた。まぶしさを防ぐため、サングラスを着用している選手も多かった。

 このレースの解説をしていたのが、04年アテネ五輪女子マラソン金メダリストの野口みずきさんだった。アテネ五輪は私自身が見てきた中で、最も気象条件が過酷な大会だった。マラソン当日は予想を上回る酷暑で行われ、優勝候補のラドクリフがリタイア、2位になったヌデレバも30キロ過ぎに嘔吐(おうと)した。結局、出場82人のうち16人が途中棄権した。

 表彰式後に野口さんとスタンドでお会いし、我々ミズノが提供したランニングウェア、パンツに大変満足したとのコメントを頂いた。開発チームは猛暑でのレースを想定し、汗や給水で繊維が重くなったり、太陽熱で膨張したりして不快感を感じないよう、1秒でも貢献をできるように、と最新の技術をウェアに詰め込んだものだった。

 8月上旬にはテストイベントの一環としてボートの世界ジュニア選手権が開催されたが、表彰式では熱中症で座り込む選手が何人か見られた。組織委は救急、災害医療態勢を確立し、万全のサポート態勢で対応している。スタンドに人工雪を降らすテストも行い、雪国から本物の雪だるまも運んで清涼感を演出することも検討している。いずれにしても主役はアスリート。暑さに打ち勝つ準備をするのか、慣れる練習をするのか、優勝した選手に秘話を聞くのは楽しみである。

 来年の本番では選手が来日する7月上旬からパラリンピック閉会式までの約2か月間、好天が続くのを祈りたい。世界各国からも超VIPが多数来日する。晴天も、おもてなしの要素の一つとなればよい。

 ちなみに08年北京五輪開会式の予報は雨。中国の気象部門は、2日前に人工消雨弾を約1000発も雨雲に打ち込んだと発表した。効果がどれほどだったかは分からないが、当日は晴天に恵まれた。東京の組織委のミッションは、世界的な異常気象へのチャレンジである。あの手この手の対応策が、次代にも持続可能なレガシーとなるように期待したい。