今年の凱旋門賞・仏G1(10月6日、パリロンシャン競馬場・芝2400メートル)に出走する12頭の中で最大の注目は、史上初の3連覇がかかるイギリスのエネイブル(牝5歳、ジョン・ゴスデン厩舎)。同馬を管理するジョン・ゴスデン調教師(68)に現況や今後について聞いた。

 ―10月3日早朝のエネイブルは、ウォーレンヒルをキャンターで2本駆け上がりました。

 「とてもいい走りをしていましたね。自分からよく動きに行っていたし、前向きな走りをしてくれた。ハッピーそうだよ」

 ―キャリアは14戦13勝(G1・10勝)。5歳になりました。

 「5歳になって完成形になってきた。特にメンタルの面で成長をしてきたし、落ち着きが見られる。3歳の頃はやんちゃだったけど、5歳で大人になってきた」

 ―今回は凱旋門賞史上初の3連覇がかかります。

 「彼女はとてもいい状態だけど、他に強い馬が多いからね。ジャパン、ソットサス、ヴァルトガイスト。また日本から来ている2頭もね。何より、アーモンドアイがいなくてよかったよ。ドバイ(ターフ)のレースは本当にすごかった」

 ―今年は、日本馬が初めてイギリスのニューマーケットを拠点に凱旋門賞に臨みます。

 「とてもいい考えだと思う。こちらでのレースに出るなら、フランスにしてもイギリスにしても1週間ほどの短い期間で来て、レースに出る方がいいと思っている」

 ―過去に数々の名馬を見てきたゴスデン調教師にとっても、エネイブルは特別な馬のように見えます。

 「そうだね。特別だよ。何より2歳からずっと5歳まで管理することができている。そこが一番。普通なら種牡馬になったり、繁殖になったりするけど、エネイブルは段階的に成長を見ることが出来て、結果も出してきた。5歳まで現役をしてくれているからこそだね」

 ―ゴステン調教師は大学時代に経済学を専攻しています。調教師という職業に影響を及ぼしていることはありますか。

 「その通り。ケンブリッジ大学で経済学を勉強しました。父親の意向もあって、勉強したけど、父が調教師だったので、子供の頃から馬が好きでした。だから卒業して、ニューマーケットで助手になりました。経済学と競馬は全く違う世界に見えて、2つ共通していることがある。1つ目は、分析をすること。経済情勢を理論を使って分析することを学んだ。競馬も同じで、馬やレースなどしっかり分析しないといけない。じゃないと結果が出ないからね。2つ目はいくら予想しても、その通りにならないということ。金融情勢や、経済の予想はいくら考えても、その通りにならない。競馬だって、分析してもその通りにならないことがたくさんある。だから、次はどうするか、って考えなければならない。その意味でも僕は大学時代に経済学を勉強したことが、調教師生活につながっている」

 ―アメリカで調教師としてのキャリアをスタート。1989年からは母国のイギリスでも調教師をしています。2国間の違いを教えてください。

 「同じ競馬なのに、全然違う。アメリカはまずダート。調教コースも基本的にダート。それで、なおかつ常に時計を計って、何秒、何秒って調教の時からやる。スピード競馬だよね。逆にここイングランドは、こういう坂路を使って、馬のリズムを大切に上がって調教をする。一切時計は使わない。自分の目を頼りに、馬をしっかり見て、状態をつかまなければならない。シェイク・モハメド殿下の支援があって、僕はここで厩舎を開いた。日本もスピード競馬になっているね。2つの国で調教師をできたのはいい経験になっている」

 ―枠順や当日の馬場で気になることを教えてください。

 「枠は真ん中あたりがいいでしょう。馬場は今より重くなってしまうのは良くない。土曜日や日曜日当日に、いっぱい雨が降るのはよくないね。彼女もスタミナはあるけど、重馬場だと本当のスタミナ勝負になってしまうからね」

 ―今回の凱旋門賞がエネイブルのラストランになるのでしょうか。

 「いい質問だね。それはオーナーであるアヴドゥラ氏が決めること。5歳の現役を決めたのもオーナー。レースが終わって、彼女の肉体的な面や、精神面を1週間くらい見てから、決めるでしょう。この決断はオーナーにしかできない」

(聞き手・松浦 拓馬)