大相撲初場所で引退した元横綱稀勢の里(33)の荒磯親方の引退相撲が29日、東京・両国国技館で開かれ、超満員御礼1万1000人の観客が最後の土俵入りに沸いた。断髪式では現役時代、熱戦を繰り広げた横綱白鵬(宮城野)、鶴竜(陸奥)、元日馬富士、歌手・細川たかし、元プロ野球DeNA監督の中畑清氏ら、約300人がはさみを入れた。

 国技館土俵での断髪式、感謝の気持ちがこみ上げた。幼少期より格闘技など英才教育を施し、厳しく鍛えてくれた父・萩原貞彦氏がはさみを入れると、涙で潤んだ。師匠の田子ノ浦親方(元幕内隆の鶴)が止めばさみ。

 そして、新横綱として迎えた17年千秋楽、左大胸筋に重傷。その手負いの体で当時大関の照ノ富士(伊勢ケ浜)と本割、優勝決定戦を行い連勝して逆転V2した際の実況が再現された。土俵上で聞きながら、ほおをつたう涙を何度もぬぐった。

 「いろんな方々に来ていただいて幸せ。本当に(現役)17年間、感謝の気持ちだけ。お世話になった方にありがとうという感謝の気持ち。支えられてここまで来られた」と、かみしめた。

 「稀勢の里~」、「かっこいい」など館内からは大声援。「最後だと思うとさみしいけど、声援に最後まで支えられた」と感無量だった。大銀杏(おおいちょう)を落とし、ニューヘアは7・3で分け、自然に流したスタイル。「さっぱりした」とお気に入りだ。

 最後の横綱土俵入りは露払いに幕内松鳳山(二所ノ関)、太刀持ちに弟弟子の大関高安(田子ノ浦)を従えて、披露。「ミスった。左の四股を踏んだ」と苦笑い。「(新横綱で)初めて土俵入りをした時も左足で四股を踏んだ。最初と最後が一緒で初心に戻りました」とまとめた。

 先代師匠の故鳴戸親方(元横綱隆の里)の誕生日と同じ9・29に新たな門出。「何かの偶然」と運命の巡り合わせを思った。部屋付き親方として、若い衆を指導し、高安を横綱に引き上げることを使命としている。

 先代から受け継ぐ横綱道を後進に伝えるのも役目。「横綱というのはこういうものと話した。その経験は生かせる。横綱の気持ちも精神力も教えていくのも務め。僕が育ったように育てたい」と、力を込めた。

 断髪式後は都内で門出を祝うパーティーに約1000人が駆け付けた。タキシード姿で登壇し「皆さんに愛される力士を育て、皆さんに喜んでもらえる大相撲になるようにしていきたい」と所信表明した。