日本相撲協会は26日、都内・両国国技館で理事会を行い、付け人に対し2度の暴行問題を起こした十両貴ノ富士(22)=千賀ノ浦=に自主引退を促す決議をした。事実上の引退勧告で同意しない場合は臨時理事会を開き、最も重い「解雇」を含めた懲戒処分が決まる。

 暴行問題に関してはコンプライアンス委員会が本人、部屋関係者、師匠の千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)を聴取。この日、同委員会がまとめた事案の概要を協会が発表した。

 同発表文によれば、貴ノ富士は今年5月から7月頃、千賀ノ浦部屋や7月場所(名古屋)の宿舎などにおいて、同部屋に新弟子4人(序二段3人、序ノ口1人)が言いつけられた仕事を忘れたりした際に差別的な発言を繰り返した、という。

 7月場所が始まる前頃には、新弟子らのもの覚えが悪いとして1人に「ニワトリ」、1人に「ヒヨコ」、1人に「地鶏」と命名。7月場所が終了するまで、その名前で呼んだ。「おい、ニワトリ」と声をかけた際、新弟子が「はい」と返事すると「はいじゃない。コケ、と言え」と言い「コケ」と返事するように強要した。

 今回の暴行が起きたのは8月31日。横綱審議委員会の稽古総見から部屋へ戻り、風呂に入ろうとした際、付け人が自分より先に風呂に入ったことを知った。あいさつをしないまま関取である自分より先に風呂に入ったことに立腹し、風呂から上がった際、バスタオルを渡そうとした新弟子の額を右手の拳(こぶし)で1回殴打。「先に風呂に入って、『お先にごっつぁんです』もないのか」などと言った。殴られた新弟子は額にコブができ数日間痛みが残った。

 貴ノ富士は昨年3月の春場所中にも出番を伝え忘れた付け人に立腹し付け人の顔面を拳で1回、張り手で2回殴打し負傷させた。この暴行により出場停止1場所の懲戒処分を受けた。この処分の際、反省している旨を述べた。昨年12月、貴乃花部屋から千賀ノ浦部屋へ移籍した際、決して暴力を振るわず、これに違反した場合は引退する旨の誓約書を師匠に提出していた。にもかかわらず、付け人への暴行を繰り返した。

 コンプライアンス委員会の処分意見としては新弟子への言動内容も悪質で、暴行が契機となり新弟子が集団で部屋から逃げるに至り、結果は重大と判断。処分案として引退勧告を答申した。

 答申を受け、協議した理事会では引退やむなしとの意見がまとまった。しかし、貴ノ富士が22歳と若く、今後の人生が長いことを考慮し、懲戒処分の引退勧告でなく、貴ノ富士に自主引退を促すことを決議した。

 併せて、自主引退に同意しない場合は引退勧告処分にも応じない可能性が高いことから、引退勧告に応じない場合、どう対処するのが妥当か、コンプライアンス委員会に追加答申を委嘱すること、追加答申を受けて、臨時理事会を開催し貴ノ富士の処分を決定することを確認した。

 貴ノ富士は代理人弁護士を通じ、24日に協会に処分軽減を求める要望書、25日には行政府であるスポーツ庁に適切な措置を求める上申書を提出した。その内容は付け人への暴行は指導の一環であったこと、協会のガバナンスに問題があったこと、協会や師匠から引退勧告を受けたことなどを主張している。

 理事会に呼ばれ、決議を言い渡された貴ノ富士には謹慎中に上申書、要望書を提出したことに理事から「謹慎中じゃないのか」、「本当に謹慎していたのか」などと追及する声が上がった。コンプライアンス委員会の聞き取りで語った内容と上申書の内容が食い違うため、「内容が違うじゃないか」と質問が飛び、貴ノ富士は「気持ちが変わりました」と返答したという。ある理事は「そんなわけないだろ」と突っ込んでいた。

 またある理事は代理人を務める弁護士に疑問。「本人のための弁護じゃないような気がする。戦術も戦略もない」と話した。

 秋場所中、コンプライアンス委員会の調査報告を貴ノ富士も読み、弁明の機会も与えられた。言い回しの部分などで自身の言い分を主張した。協会の事務担当者は「100パーセントその通りとは言っていない」と貴ノ富士もすべてを認めたわけではないものの、被害力士の聴取とすりあわせ、最終的な報告書はまとめられた。

 貴ノ富士は「考えます」と結論を保留した。処分が出たわけではないため、今後も部屋での謹慎は継続する。そんな中、27日、文科省で会見を予定。謹慎中の身で異議を申し立てれば協会と対立は必至。代理人を務める弁護士は報道各社に対し書面を出し「法的視点から本件処分の不当性を訴えてまいります」と、訴訟を含めた措置に出る可能性を示した。