日本代表MF中島翔哉が、ポルトガルで苦闘している。現地時間25日のリーグカップ、サンタ・クララ戦では1カ月半ぶりの先発出場で公式戦初アシストをマークし、1-0の勝利に貢献した。ただその一方でクラブでのレギュラー争いで後手に回り、監督から厳しく叱責されたことが話題となった。

 2022年ワールドカップ・アジア2次予選ミャンマー戦で鮮やかなミドルシュートを決めた男に、欧州最西端の国で何が起きているのだろうか。

 2017年8月、FC東京からポルトガルのポルティモネンセへ移籍し、リーグ戦で29試合に出場して10得点12アシストと大ブレイク。今年2月、3500万ユーロ(約42億円)という日本サッカー史上最高の移籍金でアルドゥハイル(カタール)へ移ったが、7月、ポルトガルの名門ポルトが中島の所有権の50%を1200万ユーロ(約14億円)で買い取った。

 今季、クラブが獲得した選手の中で最大の補強。クラブの会長は、「以前から欲しかった選手」と大喜びで、背番号10を与えた。

監督は「あくまでも実力次第」。

 その一方で、セルジオ・コンセイソン監督は、「クラブがいくら払って連れてきた選手かは、私には一切関係ない。選手起用は、あくまでも実力次第」と冷静だった。

 コンセイソン監督が用いる主なフォーメーションは4-4-2で、2トップにはセンターフォワードタイプの選手を並べることが多い。当面、中島の主戦場は2列目左サイドだ。

 プレシーズンの試合で当初はレギュラー扱いされていたが、徐々にコロンビア代表の快速ウイング、ルイス・ディアスに出番を奪われてゆく。今季の公式戦初戦の8月7日の欧州CL予選3回戦クラスノダール(ロシア)戦第1レグ、その3日後のリーグ開幕戦では起用されなかった。

 13日のクラスノダールとの第2レグでやっと先発し、積極的にシュートを放ったが、相手GKの好守に阻まれる。チームは2-3で敗れ、欧州CL本戦進出の望みを絶たれた。

 17日のリーグ第2節(対セトゥバル)では67分から出場し、やはり惜しいシュートを放ったが決まらない。その後、夫人の出産に立ち会うため日本へ一時帰国し、リーグの第3節(宿敵ベンフィカとのダービーマッチ)と第4節(対ビトリア・ギマランエス)を欠場した。

安西との日本人対決で監督が激怒。

 9月上旬の日本代表での活動を終え、15日のリーグ第5節(対ポルティモネンセ)に2-0とリードしている状況で72分から出場した。

 攻撃ではドリブル突破を阻止されてボールを失うことが多く、守備面では対面した右サイドバックの安西幸輝(前鹿島アントラーズ)へのマークが甘い。中島がピッチへ入って5分で、チームは2失点。とりわけ2点目は、ドリブルでマーカーを振り切った安西へのカバーを怠り、見事なミドルシュートを決められた。皮肉にも「日本人対決」が中島の課題を際立たせた。

 ポルトは98分に辛うじて勝ち越して勝利を手にしたが、コンセイソン監督は激怒していた。

 試合が終わるとすぐにピッチへ入り、背後から中島に声をかけた。しかし、中島は声が聞こえなかったのか、あるいは監督の言葉が理解できなかったのか、通り過ぎようとする。これを見て監督は中島の右手を強く引っ張り、額を寄せて激しい口調で叱りつけた。異常を察したチームメイトが間に入ったが、この光景は地元メディアで、さらには日本でも大きく取り上げられた。

現役時代から血の気が多かった監督。

 コンセイソン監督は、ウイングだった現役時代から血の気が多いことで知られる。公衆の面前で選手を叱るのは、指導者として褒められたことではない。

 試合後、中島とのやりとりについて聞かれると、「我々の間の問題」としたうえで、「自分の采配ミスが、試合をややこしくした」と顔をしかめた。これは“ドリブル突破に秀でているが守備に弱点がある中島を、勝っている状況で起用したのが間違いだった”とも受け取れる。

 その後のチーム練習で、監督は自ら中島に握手を求め、地元メディアは「監督が中島と和解」と報じた。しかし、19日のヨーロッパリーグのヤングボーイズ(スイス)戦で中島はベンチを温めた(チームは2-1で勝利)。

 中島の持ち味は、果敢なドリブル突破と精度の高いミドルシュートだ。その一方で、守備面の貢献が少なく、彼のサイドが穴となることが多い。

 これは、相手の攻撃力が低ければ問題とならないが、高いレベルの試合ではチームにとって致命傷となりかねない。今年6月のコパ・アメリカのチリ戦で日本は0-4と大敗したが、相手攻撃陣に中島の背後を突かれてピンチを迎えた場面が多かった。

2列目左サイドの序列にも変化が?

 現時点で、2列目左サイドのレギュラーは公式戦9試合で2得点2アシストのルイス・ディアス。中島は5試合に出場して無得点1アシスト。15日のポルティモネンセ戦はルイス・ディアスの出来が悪く、中島は交代選手の中で最初に起用されて監督にアピールする絶好のチャンスだったのだが……。

 ルイス・ディアスは19日のヤングボーイズ戦でも65分で交代したが、ピッチへ入ったのは中島ではなく、通常は2列目右サイドでプレーする19歳のロマリオ・バロだった。これは中島にとって大きなショックだったはず。2列目左サイドの序列が、2番手から3番手へ下がったかもしれないからだ。

 中島としてはリーグカップのようにゴール、アシストといった明確な結果を出して監督の信頼を勝ち取り、同時に守備でも貢献できることを示す、という二段構えでレギュラーを目指すしかあるまい。

 ポルトは、ポルトガル屈指の歴史と実績を誇るクラブだ。現在、日本人選手が所属し、実際に出場しているクラブの中では最も格が高い。チームでのレギュラー争いは日本代表より激しく、ヨーロッパリーグやポルトガルリーグの上位争いはW杯アジア最終予選かそれ以上のレベル。中島は、かくも厳しい環境で、日々闘っている。

 今後、中島翔哉がポルトでさらに成長できるかどうかは、日本代表にとっても極めて重要な意味を持つ。サムライブルーとポルトの背番号10の奮闘を見守りたい。 

(「熱狂とカオス!魅惑の南米直送便」沢田啓明 = 文)