この9月秋場所は、御嶽海が貴景勝との優勝決定戦を制して、2回目の優勝。「どちらか引いた方が負けるな」と思っていたけれど、その通りで貴景勝が引いてしまったね。

 御嶽海は、前日の14日目の豪栄道戦で立ち合いに変化してみんなをがっかりさせたけれど、この優勝決定戦を見たら、なんだ、やればできるんじゃないか! 毎日やってくれよ(笑)。勝ち負けではなく真っ正面から行かないとね。

 これから上に上がる気があるなら、変化したりの潔くない相撲を取っていると苦労するよ? 大関になりたいなら、今のままではダメなんだよな。長持ちしない大関になっちゃうヨ。

 関脇に番付を落とすも、大関復帰を決めた貴景勝。全休明けで、場所前はどうなるかと思ったけれど、調子がよかったな。

 先場所、きちんと休んで膝のケガを治して来たのがよかった。きっと9月で暑かったのもよかったと思うんだよ。冬で寒い場所だったりすると、膝が動かなかったりと、ケガの治りやリハビリには気候の影響もあるものだからね。

 ただ、貴景勝は足が流れてしまう相撲が多いんだ。足が開きすぎていて、それって足に負担が掛かる形でもある。これがケガのひとつの原因にもなってしまうからね。今度は大胸筋をケガしてしまったらしいけれど、膝のケガをこうして乗り越えたんだから、これもきちんと治して戻って来てほしいな。

番付下位でも「もしかしたら優勝?」。

 最後まで優勝争いに絡んだ隠岐の海。

 しょうがないよ、ベテランだけど、めったにない展開で緊張しないわけないもん。まわしを取らなきゃ相撲にならないタイプだけど、一生懸命さが伝わってきた。取組編成を見て、上位陣に当たらないまま優勝か--とも言われていたけど、僕は「それもよかったのでは」と思ってる。

 番付が下位の人でも「もしかしたら優勝できるかも?」とのいい夢が見られる。チャンスが誰にでもあるんだと思えるものね。

ベテランの引退と若手の躍進。

 これまた優勝戦線に絡んでいた朝乃山だけど、途中から疲れていたように見えたな。

 技術的なことを言うと、立ち合い、右でかちあげて行くけれど、あまりうまくないんだよなぁ。体を横にずらし気味で当たる。もっと体をまっすぐにして当たらないと。それと、もうちょっとかちあげる方の肩を落としてね。浮いちゃってるんだヨ。そうやって体でぶつかって行けば、もっと威力が増す。稽古で意識していけばクセは直るはずだよ。

 負けてもいい相撲で、逃げない相撲を取る。これからまだまだ楽しみだな。

 明生もいいね。これからもっと出てくる力士だと思う。まだ幕内の雰囲気に慣れてないんだと思うけど、彼も逃げない相撲だし、これからは明生が来るよっ(笑)。

 ベテランの嘉風が引退したけれど、元気な相撲を取ってかき回してくれる、僕の好きなタイプだった。どういう相手でも逃げないで向かってゆくしね。稽古場以外でのケガでの引退だと聞いたけれど、土俵の上で最後の姿を見たかったな。

 弟弟子の友風にバトンタッチだけれど、その友風は、「アドバイスをもらった」と嘉風の名前をずっと出していた。休場してリハビリしていた兄弟子を元気づけようと思ってもいたのだろうけど、あまりよくないんだ。嘉風本人も引退会見で僕と同じことを言っていたと聞いたけど、やはり相撲は師匠の教えを大事にする世界だから、兄弟子の名前ばかり出してもいけない。

 嘉風も、引退後はきっといい親方になってくれると思う。本当にお疲れさまでした。今まで、元気な相撲で楽しませてくれてありがとうな。

最近では一番の場所だった、と。

 横綱ふたりが休場したけれど、やはり横綱土俵入りがなくてお客様は残念だろう。

 鶴竜の場合、場所中に急逝した師匠の病状も心配で相撲に集中できなかったのでは? と思うファンもいるだろうけれど、そこは違うんだよ。それなら尚更、病床で戦っている師匠のためにも、土俵でいい相撲を見せて、少しでも元気づけようと思わなければ……。辛いけど、それが力士の世界でもあるんだ。

 しかし、今場所は両横綱がいなくとも、2年ぶりの優勝決定戦があったり、最後まで優勝争いが面白かった場所だった。最近では、一番の場所だったとさえ思うんだ。

 11月の九州場所は、横綱ふたりも万全で出て来てほしいし、御嶽海の大関取りや若手の活躍などでいっそう見応えのある場所になるかな。

(「武蔵丸の辛口御免 Oh!相撲」武蔵川光偉 = 文)