2019年の日本は、毎週末のようにどこかでeスポーツの大会が開かれる国になった。

 世界じゅうの大会もリアルタイム配信が定番なので、複数のタイトルを追いかける生活をしていると、土日が両方フリーになることはほとんどないような状況だ。

 そんな日本のeスポーツシーンにおいて、最も重要な大会は何か。

 そう聞かれたら、いろいろな考え方があるのは承知の上で「LJL」と答えることにしている。

 LJLとは、ゲーム『League of Legends』の日本リーグ。9月16日に行われた決勝戦はアリーナ立川立飛で開催され、3000人収容のアリーナが超満員、オンラインでは数万人のファンが熱戦を見つめた。

 では、なぜLJLが重要な大会か。キーワードは「継続性」である。

1年を通じて、そして7年に渡って。

 継続性の意味は2つある。

 1つは、リーグが8つのチームを抱え、春と夏の2つのシーズン、1チームあたり42試合のリーグ戦を開催し、1年を通じてファンのアテンションを集め続けていること。

 そしてもう1つが、LJLが6年目のシーズンを走り終えたことだ。日本のeスポーツにおいてそれだけの期間、右肩上がりで支持を拡大し続けていることは特筆に値する。

 継続の価値を象徴する話がある。

 LJLのリーグ優勝賞金は1000万円である。もちろん大金だが、1億、10億という賞金の話題が飛び交うeスポーツ業界において、5人チームで何カ月ものリーグ戦を戦い抜いての1000万円は、そこまで目を引く額ではない。

 ただ重要なのは、額ではなくその扱いにある。9月16日の決勝戦の2日後、ふっと気づいてTwitterの検索窓に「DFM 1000万」と打ち込んでみた。DFMは優勝したDetonatioN FocusMeの愛称だ。ところが、そんなツイートは1件もヒットしなかった。つまり、この戦いを「1000万円を巡る戦い」だと思っていたファンは、ほとんどいなかったことになる。

 この日の決勝戦はLoLが日本一強いチームを決める戦いであり、10月から始まる世界大会への出場権をかけた戦いだった。ファンはそう認識していた。これこそが、継続の価値であろう。

格闘ゲームで起きた悲しい出来事。

 eスポーツの賞金については、同時期にもう1つ印象的な出来事があった。

 奇しくもLJL決勝と同じ週末に東京ゲームショウ内で開催された『ストリートファイターV』の大会で、日本eスポーツ連合が発行するプロゲーマーライセンスの受け取りを辞退している選手が優勝したことで、500万円が支払われるはずだった賞金が10万円相当に減額されたのだ。

 日本ではLoL以上に一般的な認知度を持つ『ストリートファイター』の大会であり、内容的にも、現時点で世界の4強と目されるプレイヤーが次々と敗れる中で、トップレベルで長く活躍する日本人同士の決勝戦となるアツい展開だった。にもかかわらず、話題は賞金一色になってしまっていた。

『ストリートファイター』のプロシーンはテニスやゴルフのようなツアー形式で、選手たちは世界を転戦しながら賞金とポイントを積み重ねていく。普段であれば、賞金額よりも試合内容や選手のプレーがファン同士の会話のタネになる、歴史ある世界だ。そして今回は、日本国内でツアーポイントが認められている唯一の大会だった。

 その大舞台での試合内容や選手のドラマが霞んでしまったことは、やはり残念としか言いようがない。

賞金額はファンにとっての意味は?

 そもそも大会の賞金がいくらかというのは、自分たちの懐に入るわけではないのだから、ファンにとって実質的に意味のある数字ではない。それを巡って選手たちが真剣勝負をしていると信じられればOKで、逆に言えば選手たちが真剣勝負をしていることが共有されてさえいれば、観戦の価値に賞金の額は影響しない。

 たとえば先日始まったラグビーワールドカップの優勝賞金は0円である。だからと言って、「じゃあワールドカップの優勝に価値はないんだな」と思う人はいないだろう。人が大会に感じる価値は、本質的に賞金の額とは関係ない。それなのに、大会終了後に賞金の多寡やその問題ばかりが報道されるのはあまりに切ない。

バブルではなく、持続性のために。

 大きなスポンサーを集めて、大きな賞金を掲げて、年に1回巨大なトーナメントを開催する。それももちろんeスポーツの形だとは思うのだが、ではその形はどれほど持続可能なのだろう。

 学生をターゲットにしたアマチュア大会ならばともかく、年に数度しか賞金獲得チャンスがない場合、1位の賞金がどれだけ大きいとしても、それがどれほどの人数の生活を保証できるだろうか。

 そんな中で、リーグ全体で50人以上のプロ選手、チームスタッフ、大会運営スタッフを抱えて、継続的に運営を続けるLJLの安定感は際立っている。その継続性が、ファンの持続的な増加にも大きく貢献している。

 eスポーツがブームで終わらずに続いていくために必要なものの多くが、ここには揃っている。

(「eスポーツは黒船となるか」八木葱 = 文)