またも広州にアウェイゴールの差で鹿島は敗れた。

 9月18日カシマスタジアム、ACL準々決勝セカンドレグ。セットプレーが試合の鍵になるという大岩剛監督の言葉通り前半40分にコーナーキックから先制点を許したが、その後は圧倒的に試合を支配して51分に同点に追いつく。しかし追加点が奪えず、1-1で試合は終了。アウェイゴールの差によって鹿島は勝ち上がることができなかった。

 2017年にラウンド16で広州恒大と対決したときも、今回と同じく第2戦をホームで戦った。その時も合計スコアは2-2だったが、アウェイゴールの差で敗退している。

 そして今回、高温多湿の広州での第1戦後、「アウェイゴールを奪えなかったのは残念ですが、第2戦では勝てばいい。シンプルに考えられる。ホームでの試合には絶対的な自信がある」と三竿健斗は語っていた。

鹿島の意識には「4冠」があった。

 その試合から約1カ月間、ルヴァンカップ2試合とリーグ戦2試合を戦って3勝1分と好調を維持し、リーグでは、首位のFC東京との直接対決に勝利して勝ち点差1まで詰め寄った。

 負傷離脱していた選手たちも続々復帰し、夏に3人の主力選手がチームを去ったものの、上田綺世や小泉慶などの新加入選手も即戦力として活躍している。

 リーグ、ルヴァンカップ、天皇杯、そしてACLと、「4冠獲得」を口にする選手も少なくなかった。チームの空気は上向き。「3連覇した時のチームと比べれば、まだまだだけど、それでもいい状態にある」と内田篤人キャプテンも語っていた。

 しかしFC東京戦で、三竿と白崎凌兵が負傷していた。今季から鹿島に復帰し、成長を見せていたDFブエノも、外国人枠に制限のあるACLでは未登録。チームを牽引していた3選手を欠いた状態で広州戦を迎えることになった。

土居が感じたチームへの違和感。

 ブエノに代わりチョン・スンヒョン、三竿に代わり永木亮太、白崎のポジションには名古新太郎が入る。左サイドバックには、CBが主戦場の町田浩樹が起用される。

「お互いが、様子を見るという感じの入りになっていた。自分たちも行くときは行っていましたけど、行ったら(ロングボールを)蹴ってくると思っていたので、崩さずにやろうという感じだったと思います」

 そう犬飼智也が振り返るように、試合立ち上がりは慎重な空気が両チームを覆っていた。

 土居聖真も、チームの状態に違和感を持ってプレーしていた。

「ひとりひとりがボールを持つ時間が長くて、パスが来てから考えてプレーしている選手が多かった。やっていて、いつもと違うなというのをすごく感じた前半だった。ボールを呼び込んでも入ってこないし、本当に何にもうまくいかなかった。

 失点を恐れていたのか、メンバーが代わったことが影響したのか。もう少し落ち着いてやれば後半のようにボールを回せる相手だったのに、経験値の少なさが出たのかもしれない」

攻めに攻めたが、2点目が遠く……。

 この日の広州戦のタスクは、相手よりも1点でも多く奪うことだった。スコアレスでの延長以外、ドローは敗退を意味している。

 スタメンの顔ぶれを見た時に感じたのは、指揮官が90分間のストーリーとして、まずは点を失わないという慎重な選択をしたのではということだ。実際、チャンスらしいチャンスを相手に与えることなく時計は進んでいた。失点は、無事に0-0で前半を終えようとした矢先だった。

 後半はゴールを固める広州を押し込み、ハーフコートゲームの様相を見せたが、攻撃の精度という意味では不器用な印象が残る。

 サイドでボールを持ってもクロスがDFに引っかかる。ペナルティエリア内で跳ね返されたシュートへの反応も鈍かった。惜しいチャンスも何度もあったが、1点が遠かった。おおざっぱに試合を振り返れば、2点目を決められなかったこと以外は、申し分ない展開だった。

「ただのいい試合で終わってしまった」

 土居は、この試合をこんな表現で振り返る。

「今日の試合を総括すれば、『ただのいい試合で終わってしまった』と僕は感じている。FC東京戦もそうでしたが、今日も内容より結果がすべての試合だった。その共通意識みたいなのが、低かったのかもしれない。

 考えすぎたのかなとは思います。アウェイゴールがあるからとか、何があるからとか。でも何点獲られようが、勝てばいい試合だと僕は思っていた。勝ちきらないと次には行けない。そのためにどういうプレーをしなくちゃいけないのかっていうところで、選手の判断力が無かった。そこをまだまだ学ぶべき試合だったかなと思います。

 みんな勝ちたいという気持ちで戦ってはいたけれど、若さがでたと言われてもしかたがない部分はある。僕自身もボールが入らず、イラだつこともあった。そこは反省点。うまくいかないなりに、もっとやれることがあったかなと感じています。

 精神的なところで、リスクを負わないプレーを選択していたのかもしれない。チャンレンジして、失敗しても次、次というのが今日はなかった。ここまでずっとそれができていたのに。

 ただ、負けなかったというのが今日唯一のポジティブなこと。前半悪くても、後半建て直せた部分もある。そういう修正力はチーム力だと感じるけれど、まだまだダメなんだというのを突きけられた」

この結果に、どういう感情を持てるか。

 国内で数多くのタイトルを手にしてきた鹿島にとって、ACLは鬼門だった。何シーズンも苦汁をなめさせられ続けてきた。そして昨季、ついに悲願のACL優勝を果たした。越えられなかった壁を越え、その頂点に立った。

 ディフェンディングチャンピオンとして挑んだ今季は、「より難しさを感じたけれど、同時に自信も強く持っていた」と土居は振り返る。ACLでの苦闘を経験し、自らでそれを乗り越えたからこそ、経験値の乏しい若い選手への助言を求められた土居はきっぱりと言った。

「僕は、誰かに教わったとか、誰かに何かを言われて育ってきたわけじゃない。だからそこは、選手自身がどう感じるか、感じようとするかだと思う。

 この結果を前にどういう感情を持てるかだと思うし、それをどう次へ繋げるかは選手それぞれの問題。それによって、次に同じ状況になったときに、勝てるか勝てないかの違いが出てくるんだと思います」

町田「責任を感じています」

 広州を準決勝進出に導くゴールを決めたアンデルソン・タリスカのマークについていた町田は、落胆というよりも怒りをにじませた表情で試合を振り返った。

「アウェイゴールを奪われたところは、自分がマークを外してしまったから。それに尽きるし、責任を感じています。いいタイミングで相手に入らせないよう工夫が必要だった。結局、次のラウンドへ進めない。今、何をいっても後の祭りでしかない。

 タイトルをひとつ失った重みというのを、僕はすごく感じています。ああいう1本で、次へ進めなくなる。それを再確認した。ただ、幸運にもまだ3つタイトルを獲れるチャンスがあるので。すぐには切り変えられないですけど、次の試合へ向けて準備をしていきたい」

 慢心があったとは思わない。あったとすれば、見えない疲労だろう。首位攻防戦に、ルヴァンカップ。負けられない試合が続いていた。浦和とのカップ戦も、ギリギリでの突破だった。それでも負けなかった。良い流れが生まれていたからこそ、メンバーを代えづらい状況が続いていたのも事実だ。

内田「こういう苦しい時こそ」

 9月25日には横浜との天皇杯も控えている。ここで負ければ、またひとつタイトルを失う。でもだからこそ、フレッシュな陣容で挑む勇気が必要かもしれない。

「グラウンドの選手は本当に闘っていた。『4冠』と言っていたけれど、ここでひとつの道が終わってしまった。それで、ここまでいいリズムで来ていたものを手放してしまうのか、それは違うと思う。

 こういう苦しい時こそ、やっぱり俺とか、今日はベンチに入っていないけれど、ヤス(遠藤康)とか、そういう選手が道筋を示さないといけない。それが俺らの役割だと思う」

 そう語った内田は、ここ1カ月すべての試合でベンチ入りを果たしている。新加入の小泉からポジションを奪うという新たなモチベーションを秘め、闘う準備はできている。ベテランとして、チームで培った勝ちきる極意と、そこに対する覚悟を示すことで、若い選手に鹿島アントラーズの本質を繋げられるに違いない。

(「JリーグPRESS」寺野典子 = 文)