今シーズン、個人的に注目しているのはセビージャだ。

 昨年スペイン代表とレアル・マドリーで2度もミソをつけたジュレン・ロペテギの手腕を再確認したいというのもあるが、なにより2年ぶりに復帰した途端、選手の半数以上を入れ替えたスポーツディレクター、モンチの目利きに衰えはないのか確かめたいのだ。

 そもそも、モンチはなぜセビージャに戻ってきたのか。

 3月上旬にローマとの契約を解除した直後は、アーセナル入りが濃厚と見られていた。実際「セビージャではないクラブに行くことが決まりかけていた」と地元紙で本人が明かしている。ところが、たまたま受けたセビージャからの電話がきっかけとなり、旧知の役員たちと膝を突き合わせて話し合ったところ、提示された新プロジェクトと自分がしばらく前から温めていたアイデアが似通っていることに気付いたという。

セビージャに戻ってきた敏腕。

 キーワードは「独自性」である。

「強いチームは偶然の産物ではなく、他人とは異なることをやってこそ作ることができる。他のクラブより多くのスカウトを抱えたり、より多くの大会に足を運んだり、一風変わったトライアルを行ったり……。あの日我々は『また何か違ったことをする必要がある』という話をした。セビージャ流のタレント探しやチーム作りは他のクラブに真似され始めていたからだ」

 かくしてモンチは帰郷を決意した。

 早速取りかかっている「独自の何か」はもちろん秘密だが、カギは手順の簡略化にあるらしい。

「世界のプロリーグでは毎週末2万人もの選手がプレーしている。我々はできるだけ多くの選手をフォローし、獲得候補とすべき否かをできるだけ早く判断するためのツールを生み出そうと思っている」

 しかし、それが活用されるのは未来の話。今季のセビージャはモンチが大急ぎで設計し、必要なパーツを集めて組み立てた。

「まずはロペテギから当たるべき」

 まずやったのはチームの客観的分析だ。昨季終盤の8、9試合を観て、補強を要するポジションと不要な選手を見極めた。自分がいない間に入団した選手にことごとく「×」を付けたため、メディアに私情の介入を疑われたが、あくまで自分の考えに従った結果とのこと。

 同時に監督選びを進めた。候補を4、5人に絞ってスタッフとともに検討したところ、「まずロペテギから当たるべき」という結論が出た。そこでマドリードにいるロペテギの元へ向かい、彼のサッカーに対する姿勢を問い尋ね、決めたそうだ。

 あとは新戦力獲得と要らない選手の放出である。

 ひとり1人の名前は『欧州蹴球名鑑』(9月17日発売/文藝春秋)で見てもらうとして、今年の夏セビージャが新たに登録したのは32歳のベテランから20歳の新鋭まで揃った多種多様な14人。反対に、名前を消したのはローン終了で元のクラブへ戻った者を除いても15人。それだけの大人数を動かす勇気も、次から次へと交渉をまとめる手腕も流石だが、一方で今年は売買上手のモンチらしからぬ数字を残している。

「今世紀初めて」の赤字だったが……。

 出費がクラブ史上最高の1億5800万ユーロ(約168億円)に達したのは良しとして、収益が1億100万ユーロ(約119億円)しかなかったのだ。セビージャの夏の選手売買が赤字で終わったのは、「おそらく今世紀初めて」と『ディアリオ・デ・セビージャ』紙は書いている。

 モンチは自分の責任を認めている。

「チーム作りの方法はふたつある。先に要らない選手を売り、空いた枠に新しい選手を入れるのがひとつ。その反対がもうひとつだ。今年は新しい監督を迎えるだけでなく、新しい選手をたくさん入れることになったから、先にチームを9割完成させ、その後必要ない選手の買い手探しをすることにした。逆を選んでいればもう少し良い値で売れたかもしれないと思っている」

 だが、そのおかげもあってのことだろう、セビージャは開幕から4試合負け知らずだ。素晴らしいサッカーをしているとはまだ言えないけれど、チームとして順調に成長している。

31歳、チチャリートも合流。

 おまけに、モンチがこの夏最後に選んだ戦力が先日ようやく合流した。

 チチャリートこと、メキシコ代表FWハビエル・エルナンデスである。年齢を気にする声もあるが、「31歳はまだまだ活躍できるし、セビージャ入りで高まっている気持ちが彼を数年若返らせる」とモンチはいう。

 なんとも楽しみではないか。

 こんなチーム、シーズンを通して追いかけてみたくならないだろうか。

 クラブの発表によると、9月上旬の時点で今季のソシオ数は過去最高の4万5034人に達した。3万9955席あるシーズンシートも初めて売り切れている。

(「リーガ・エスパニョーラ最前線」横井伸幸 = 文)