バレーボール女子のワールドカップが、9月14日、横浜アリーナで開幕する。

 オリンピック、世界選手権と並ぶ重要な国際大会である。

 ただ、出場する海外の国の中には、先月のオリンピック予選で出場権を得たチームも複数ある。また、残る出場権がワールドカップで得られるわけでもないため、どこまで本気で勝ちに来るのか、微妙なところもある。

 それでも日本代表にとっては、来年のオリンピックへ向けて試金石となる場である。

 大会を前に注目を集めていたのは、セッターに誰が選ばれるかだった。セッターは、日本代表の中田久美監督が腐心してきたポジションだったからだ。

 セッターの起用について、ことあるごとに関する質問も飛んでいたことも、混沌とした状況を示していた。今年になってからの国際大会でも、新たに若い選手を選ぶなど試行錯誤は続いていた。

 見方を変えれば、選手間の競争が熾烈だったポジションとも言える。そしてその中からワールドカップに選ばれたのは、宮下遥と佐藤美弥だった。

リオで批判を浴びた宮下遥。

 選出理由をこう説明している。

「(宮下は)リオデジャネイロオリンピックを経験していること、177cmの高さとディグ(スパイクレシーブ)力」

 佐藤については、「宮下とのバランスを考えて、夏場に主将の岩坂(名奈)に代わってまとめてくれた統率力」と語っている。

 中田監督の言葉にあるように、宮下はリオ五輪に出場した経験を持つ。ただ、思うようなプレーができず批判も浴びた。

 2017年に「覚悟をもってプレーしていきたいです」と語った決意にも、リオの雪辱を期す気持ちが込められているようだった。

宮下も佐藤も、苦難の道程だった。

 ただ、そこからの歩みも順風満帆ではなかった。なかなか主力に定着できず、昨年の世界選手権では代表に選ばれないなど、一歩後退した感もあった。

 セッターとしては長身ゆえのブロック、ディグ、そしてサーブも秀でている。それらの点では他のセッターを上回る一方で、セットアップが課題とされてきた。つまり、セッターとして最も重要な能力を問われてきたのである。

 それでも宮下は、所属の岡山シーガルズでこつこつと努力を重ねてきた。リーグ戦を経て「成長した」という声も多い。

 佐藤もまた、リオには悔しい思い出がある。リオ五輪出場をかけた世界最終予選エントリーメンバー20名に名を連ね、代表をうかがう位置にいたが最終的には出場がかなわず、オリンピックの舞台に立てなかったことだ。

 しかし中田体制となってからは代表メンバーに安定的に選出され、昨夏のアジア大会では正セッターとして起用された。しかしその後の世界選手権では故障の影響から代表落ちの憂き目にもあっている。

 その世界選手権で主力セッターを務めたのは、宮下とともにリオに出場した田代佳奈美。つまりは、リオの代表争いで敗れた相手だった。

今回の選出が五輪を保証するわけではないが。

 それでも歩みにぶれはなかった。

 もともと佐藤は、決して「バレーエリート」というわけではない。大学卒業後は、日立リヴァーレに入団した。当時は技術の高いセッターとは言えなかったが、時間をかけて成長し、コンビネーションをいかす組み立てに磨きをかけてきた。

 その努力が実り、リオ五輪はのがしたものの、日本代表の一端を担うまでになったのだ。

 とはいえ、今回の選出が東京五輪代表に直結するわけではない。

「メンバーを固めていく時期」と中田監督が言う中での選出は、アドバンテージではあっても保証ではない。今大会でのパフォーマンスも、当然五輪メンバー争いに影響するだろう。

ポスト竹下問題がついに終わるか。

 つまり、代表争いは続いていく。

 その中で、宮下と佐藤はいかにアピールすることができるか。そしてチームの勝利に貢献することができるか。

 リオの悔しさをばねにしてきた2人、そして彼女たち以外のセッターにとっても、勝負が終わったわけではない。

 それぞれにスタイルを持つ選手たちの切磋琢磨が、日本代表のチーム力にもつながっていく。

 竹下佳江の引退以降、はっきりとした輪郭を描けなかった司令塔の座をつかみとるのは誰か。

 ワールドカップは、そういう点でも興味深い大会となる。

 道は、2020年につながっていく。

(「オリンピックへの道」松原孝臣 = 文)