レスリングの世界選手権が14日にカザフスタンの首都ヌルスルタンで幕を開ける。東京オリンピック(五輪)代表がかかる大一番を前に、総合格闘家として随一の人気を誇り、このたび参議院議員となった須藤元気氏(41)が本紙で評論家デビュー。08年から拓大レスリング部監督を務める眼力で、男子勢に奮闘を期した。表彰台で代表内定、5位以内で出場枠獲得だが、その力はあるか。女子が注目される日本レスリング界で、日本男児の躍進を占う。【構成=阿部健吾】

来年は自国開催の五輪があります。その舞台に立つための調整期間を考えると今大会で表彰台を狙って五輪の出場権を獲得したいですね。メダルを取ることを考えるとギリギリ他の大会で出場権を獲得するのとでは大きな違いになります。

五輪前年の世界選手権は特に厳しい戦いになります。五輪実施階級に、非実施階級の世界王者たちが集結し、レベルが一気に上がるからです。日本の男子代表はリオ五輪前の15年大会では両スタイルとも五輪出場枠を獲得できませんでした。レスリングというと女子に注目が集まる現状を打破して、日本男児の奮闘を待ちたいですね。

<65キロ級 乙黒拓斗>

フリーで内定を勝ち取るべき本命の選手、1番手は65キロ級で世界王者の乙黒選手です。(ロンドン五輪金メダルの)米満が「彼には恐ろしさがある」と言っていたそうです。あまり選手を褒めない男ですが乙黒選手とスパーリングをした時に感じたらしいです。タックル時のストロークが大げさじゃなく他選手の1・5倍くらい伸びがあります。手足も長く、65キロ級の中では背が大きい。K-1ならセーム・シュルトみたいな感じですかね。

1つ心配なのはけがです。身体が発展途上の部分もあってか彼はけがに悩まされてた時もあります。けがをしないためにも彼の良さであるダイナミックさ、読めない部分を少し抑えて堅実な戦いをした方が良いかもしれません。それでも十分勝てる実力があるし、そうすることにより五輪での研究もされにくいです。東京で爆発して金メダルを取ってもらいたいですね。

<86キロ級 高谷惣亮>

階級を上げて3度目の五輪出場に挑む高谷選手からは、精神的余裕が出ているメリットを感じます。86キロ級にして、こう言ってはなんですが勝てなくても「階級を上げたから勝てなかった」という言い訳ができます。よく現役引退すると強くなる人がいます。1、2年は無敵なんです(笑い)それは勝たないといけない重圧から解放されるから。彼もそのゾーンに入っているのかな。74キロ級時代の15年世界選手権で銀、2度の五輪出場で実績は十分です。86キロに上げれば当然相手の力も増しますが、その中でいい感じで力が抜けてますし好結果が出ています。3月の国際大会では世界ランク上位勢とも互角。ここで内定を勝ち取れる力はあると思います。

<60キロ級 文田健一郎、77キロ級 屋比久翔平>

グレコローマンの内定最有力はやはり60キロ級の文田選手。スタンド、グラウンドと申し分ありません。組み合ったときの強さはピカイチです。あえて課題をいえばグラウンドの防御のレベルアップですかね。そこを押さえれば東京での頂点も見えてくると思います。

77キロ級の屋比久選手も期待しています。太ももの太さをみてください(笑い)尋常じゃないです。このたぐいまれな下半身を駆動源に、前へ前へと出ていく。外国勢と渡り合うには、特異な筋力が必須ですが彼にはそれがあります。この数カ月の国際大会では押し負けず、スタミナ勝負で勝つパターンも見いだしていますね。

<130キロ級 園田新>

グレコは重量級は厳しい部分がありますが、教え子でもある130キロ級の園田に頑張ってもらいたいです。シドニー五輪以来、誰も出ていないですから。その実力は持っている。ベテランの域に入ってきていますし、外国人との戦い方も染みついている。今年は3カ月の欧州単身修行も経験し、メンタルも強くなってきたと思います。

どの選手もいつもの大会より緊張感は強くなってきていると思います。しかし、どこの国の選手も同じことが言えるので悔いを残さずベストを尽くしてもらいたいです。この世界選手権で多くの出場枠を取ってきてくれることを期待しています!

◆須藤元気(すどう・げんき)1978年(昭53)3月8日、東京都江東区生まれ。関東第一高時代にレスリングを始め、拓殖短期大へ進学と同時に拓大レスリング部に入部。全日本ジュニア選手権優勝を果たした後、米国にわたりプロ転向。パンクラスやUFC、K-1など総合格闘技から立ち技まで幅広く活躍し、06年12月31日引退。08年に拓大レスリング部監督就任。一方でマルチな才能を発揮し、俳優、作家、書家、ダンスパフォーマーなどさまざまな活動も行う。19年7月の参議院議員選挙に初当選。拓大大学院地方政治行政研究科修了。

◆東京五輪への道 男女ともに14日開幕の世界選手権でメダルを獲得した選手は代表に内定。5位以内で五輪出場枠を獲得したが、メダルを逃した選手は12月の全日本選手権優勝で代表に決まる。