「阪神2-12ヤクルト」(12日、甲子園球場)

 大敗を喫し、再び自力CS進出の可能性が消えたが、虎の黄金ルーキーが魅せた。阪神・近本光司外野手(24)が三回、01年の赤星憲広以来となる球団新人30盗塁をマークし、リーグトップのヤクルト・山田哲に3個差に迫った。また、今季12度目の猛打賞で通算安打数を146に伸ばし、58年の巨人・長嶋茂雄が持つセ・リーグ新人記録にあと7本とした。

 喜びはない。更新し続ける記録や偉大な先人たちに迫る自らの数字より、喫した大敗の悔しさが表情に色濃くにじむ。「得点につながらなかったので。(塁に出ても本塁へ)かえってこられなかった」。近本が新人のプロ野球記録14度に迫る今季12度目の猛打賞。それだけではない。今季30盗塁目をマークし、球団新人では01年の赤星憲広以来、史上2人目の大台に到達。ただ、それでも完全な充足感はない。

 “それらの瞬間”は、確かに魅了した。終始漂った重い雰囲気を自らのバットと足で歓声に変える。まずは三回1死。ヤクルト先発・山田大の初球の直球を中前打。本領を発揮したのは、この直後だった。

 相手バッテリーの警戒をかいくぐり、すぐさま足で攻める。次打者・福留の初球にちゅうちょなくスタートを切った。「(走るタイミングを)考えすぎると走れなくなってしまうので」。勢いよく聖地の黒土を蹴り、二盗に成功。リーグ単独2位となった今季30盗塁に特別な意味を見いだす。

 「大きい壁は越えられた」。セ・リーグ新人でも赤星以来、18年ぶり6人目となる節目の数字だ。

 勢いはとどまるところを知らない。バットから奏でられる快音が鳴りやまない。五回に中前打、七回には快足を飛ばして遊撃への内野安打。これで自身の球団新人安打記録を146に更新。98年の坪井智哉と並ぶ球団新人記録となる今季40度目のマルチ安打。さらに今季12度目の猛打賞で、プロ野球新人記録である巨人・長嶋茂雄の14度を視界に捉えた。

 下は向かない。わずかでも可能性が残されているのであれば、ファイティングポーズは崩さない。この日の敗戦で3位・広島と4・5差。かすみつつある逆転CSへの道。それでも大敗の中で放った光は、まばゆいほどに力強い。「残り12試合。1つでも多くチームのために走っていけたら」。猛虎の誇るルーキーが勝利のために走り続ける。