メジャー4年目となる今季も9勝8敗1セーブと、安定した活躍を見せるドジャース・前田健太投手。ただ、本業の投球だけでなく、今季はバッティングにも注目が集まっている。今季は、47打数12安打の打率2割5分5厘で、本塁打こそないが6打点も記録しており、野手顔負けだ。12安打は、日本人投手としては99年のブルワーズ・野茂英雄に並ぶ最多タイ。また13犠打も記録しており、シルバースラッガー賞の候補に挙げられるほどだ。

 マエケンのプロ2年目から3年間、広島を担当した。とにかく運動神経がすごかった。長距離走などは必ずチームトップで、バント処理などのフィールディングも抜群にうまかった。何より、打撃センスには何度もうならされた。当時指揮を執っていたブラウン監督も「エンドランのサインを出せる、打撃に魅力のある選手。(打順は)9番以外の可能性はある」と、春季キャンプで本気で考えていたこともあった。

 当時、広島の先発投手には、まれにフリー打撃が練習メニューに組まれることがあった。他の投手はせいぜい1本程度のサク越えも、右腕は連発が当たり前。スタンド中段まで運ぶことも珍しくなかった。「PL(学園)の4番ですから」と、ドヤ顔するのがお決まり。右打ち、バントもお手のもので、「野手でも必ず大成する」と当時の球団関係者、報道陣はみんな思っていた。

 そのPL学園の2学年後輩で、昨季限りで現役を引退した阪神・緒方広報も、何度か度肝を抜かれたという。「報徳(学園)との練習試合だったと思うんですけど、マエケンさんがいきなり『ホームラン打ってくるわ』って。本当に打ったんですよ。しかも2本」と懐かしむ。「巨人の坂本(勇)さんにフォームが似てますよね。内角のさばき方とかも本当にすごいですよ」と、今も昔も変わらない打棒に舌を巻く。

 当時話を聞いて驚いたことが、高校通算27発にも関わらず「そんなに打撃練習をしてませんでしたね」と笑っていたこと。自身のベストの投球フォームを常に頭で再現でき、「ストライクならいつでも取れます」と、ブルペンでの球数も少なかった。分業制がより顕著な米球界だけに、マエケンが積極的に打撃練習を行っているとは考えにくい。打撃も同じように、確固たる“感覚”があるのだろう。

 今季もシーズン終盤から中継ぎを任され、そこでも快投を見せている。本人は不服かもしれないが、その適性の高さも抜群の野球センスの一部。昨年の日米野球で久々に取材した際も、相変わらずの気さくな性格で、メジャーでの充実ぶりを語ってくれた。悲願の世界一を、今季こそ期待している。

(阪神担当・嶋田 直人)