長短自在のパスを操り、中盤の底、あるいは最終ラインから攻撃の起点となる。ボールを足元に置き、背筋をピンと伸ばしてピッチを広く見渡す姿は堂に入ったものだ。

 山本理仁、17歳。

 今季、東京ヴェルディユースから飛び級でトップに昇格し、その左足を武器に早くも14試合に出場。シーズンの半ばを過ぎ、永井秀樹監督となってからはすっかりチームの中心に君臨する。

永井監督「ライバルはフォデン」

 2年前、東京Vユースを率いていた永井監督は高1の山本を指して「あいつは中村俊輔を超えるよ」と言った。そして、今春のトップ昇格に当たっては「日本の同世代と比べ、上だとか下だとかを語るべき選手ではない。ライバルはフォデンだからね」。

 フィル・フォデン。マンチェスター・シティとイングランド代表の、次代を担うと言われるレフティだ。年齢は山本のひとつ上になる。

 現時点で、2001年生まれのトップランナーは、日本代表に選出され、リーガ1部のマジョルカに所属する久保建英で異論は出ないだろう。だが、J2にも山本や斉藤光毅(横浜FC)など、豊かな将来性を秘める逸材はいる。

 山本がボールを蹴り始めたのは、学生時代、サッカーに打ち込んだ父の影響だ。

 幼少期、初めて所属したチームは、地元相模原市のつくい中央FC。そこは週末だけの活動で、平日はヴェルディS.S.相模原のスクールにも通い始める。

 もっとも、常日頃からボールを蹴る相手には困らなかった。父はひまさえあれば外に連れ出してくれ、3歳上の姉の男友だちと仲よくなり、近所の公園でおおいに鍛えられた。いまでは山本にとって最も身近な応援団だ。

「建英のことは僕らの間でも話題で」

 小4への進級を翌年に控え、「そろそろ力試し、しとくか」と父は言った。プロへの登竜門である、Jクラブのセレクション。家から通える範囲で、東京Vと川崎フロンターレにターゲットを絞った。

 川崎は2次セレクションであっさりと落選し、山本は合格した東京Vジュニアに加入する。

「もしフロンターレも受かっていたら、どうしたかな。父がいくつか選択肢を提案し、そこから自分の考えで選び取る。そのやり方はサッカーに限らず、ふだんの生活から当たり前にあったと思います。当時、建英のことは僕らの間でも話題で、『バルサキャンプにいきたいか?』と聞いてくれたこともありましたね。僕が興味を示さなかったので、話はそれきりでしたけど」

 息子に、ドイツ語で光を意味するリヒトと名付けた父はそうして水先案内人を務め、ひとまずその役目を終えた。

「ヴェルディに入り、先にプロを見る意識の違いは感じました。学年がひとつ上のチームでやらせてもらい、次はここでもっと自分のプレーを出したいと思わせてくれる環境があった。将来的な大きな目標に向かうというより、毎年そうやってより高いレベルを目指してきた気がします」

各年代代表の常連となった。

 やがて山本はU-15日本代表を皮切りに、各年代のナショナルチームの常連となる。

 2017年10月、インドで開催されたU‐17ワールドカップはメンバーから漏れ、トレーニングパートナーとして帯同。同大会ではイングランドが初優勝を飾り、最優秀選手に輝いたフォデンは別格の存在として山本の脳裏に焼きついている。

「フォデンだけではなく、ボルシア・ドルトムントのジェイドン・サンチョなど、世界には自分と近い年齢で主力級の活躍をしている選手が何人もいます。それを思えば、試合に出た程度では少しも満足できない」

「納得いったゲームはひとつもない」

 ユースに昇格し、永井監督と出会ったことは山本のサッカー観を根底から揺さぶった。

「ボールを止める、蹴るといった基礎技術から立ち位置の重要性まで、とにかく永井さんはディテールの部分を追求する。指導者からそんな細かいことを言われたことがなかったので、驚きつつも新鮮でした。サッカーの見方もだいぶ変わりましたね。何がこのゲームを左右するのか、プレーの奥まで目を届かせる習慣が身についた」

 今年7月、永井監督がトップの指揮官に就任し、2年間教え込んだ山本が重用されるのはごく自然な流れと言える。

「試合に使ってもらってはいますが、納得のいったゲームはひとつもない。結果勝ったゲームも自分のプレーには物足りなさばかり。ユースでは違いをつくり出せるのに、トップで充分に出せていない状況です。このピッチで違いを出せる選手にならなければ、上のステージにはいけない」

 山本の特長はキックの精度や視野の広さのほかに、キープ力の高さ、卓越した状況判断力などいくつも挙げることが可能だが、何より印象的なのはその眼である。

 そのときに何が重要かを見極め、どの程度の確率で実行できるかを判断し、かつ客観性をもって自己と他者を捉える眼。それによって現在地を正確に把握し、自分を見失うこともない。

 新人離れした活躍ぶり以上に、怜悧な思考、世界を射貫く眼差しに衝撃を受ける。

(「JリーグPRESS」海江田哲朗 = 文)